第899話 2人きりで話をした。的なお話
夜は襲われそうだと戦々恐々としながらグラハムさんの所へ。
夜の事を考えると少し怖いけどそれはそれ、これはこれ。
ちゃんと集中しないとな。
そして武器のメンテをキッチリとこなしたわけだけど、この後はどうしよう?
午後はなんか渡したいものがあるってアデラードさんが言っていたけど、それまでまだ時間はある。
というか、お昼までまだ時間がある、だな。
ここで何か作るというのもアリなんだろうけど、俺はどうも集中すると時間も食事も忘れてしまう傾向があり、何か作り始めたら興が乗って気付けば夕食時……なんて事あるかもしれない。
うーむ……まあ、適当に街をぶらついて時間を潰すか。
前もそんな感じで発見というか、変な人からポーションを押し付けられたし、何か発見があるかもしれない。
というわけで普段行かない場所へ行ってみたわけだが……失敗した。
ここ、色街だ。
娼館とかそういう系の店が集中してる場所。
さっさと出よう。
幸いなのは今が午前中で、こういう系の店の営業時間街だという事だろう。
夜に来たら客引きが鬱陶しそうだ。
アニメでそういうバイトをしてる奴を見た事がある。
グラサンのおっさんとか長髪の男とオ◯Q擬きとかがやってるシーンで。
色街から逃げるように立ち去った後、反対側の方に行ってみた。
そこは職人街といった感じ。
結構長い事迷宮都市に居るような気がするけど、知らない所多いな。
まあ、普段訓練やらなんやらでそこまで出歩く事もないからな。
こういう所だと、知る人ぞ知る職人とかが店を構えているイメージだけど、時間もないから店に入るのはやめておこうかな。
というか完全に散歩だな。
そろそろお昼だし帰ろう。
◇
エリュシオン邸でお昼もお世話になっていると仕事があるだろうアデラードさんが帰ってきた。
渡したいものとやらを渡すためだろう。
「レント、それ食べ終わってからでいいから後で私の部屋に来て。」
「分かりました。」
食べ終えた後アデラードさんの部屋へ……部屋へ……アデラードさんの部屋って、どこだ?
アデラードさんが部屋に来ることはあっても、部屋に行くことって無かったな。
ミストさんに案内してもらいアデラードさんの部屋へ。
「いらっしゃい、レント。」
初めて入るアデラードさんの部屋は意外な事にゴチャゴチャしていない。
イメージ的にはそこら辺に酒瓶とか落ちてて、高価そうなお酒が飾ってありそうだったけど、実際は違って綺麗に片付いている。
というか、お酒の匂いじゃなくて普通にいい匂いしてるんだけど。
「昨日レントに渡したいものあるって言ったよね。」
「言ってましたね。」
机の棚から何かを取り出したアデラードさんは1つの指輪を渡して来た。
その指輪には妖精を抽象的にしたような物の周りに花が散りばめられた彫り物がされている。
妖精に花……もしかして、アデラードさんの家紋?
「本当はね、DEFが上がる剛健の指輪っていうのを渡そうと思ってたんだ。でもやめた。」
「やめた? じゃあこれは?」
「リナがさ、絆が、繋がりが欲しいって言っていたよね。それを聞いて私も、いい加減ちゃんとした繋がりにしようって、思ったんだ。口約束じゃなくて、ちゃんとしたものにしたいって。レント……それはね、私の、エリュシオンの印章なんだ。」
「それって……。」
「うん。レントを、エリュシオンの一員として、私の家族として扱うっていう証。受け取って、くれるかな?」
「……受け取る前に、1つお願いを聞いてくれますか?」
「お願い?」
「これからはプライベートな時は愛称で、アデルって、呼んでもいいですか?」
「……そ、そんなの、勿論だよ!」
「じゃあ、これからもよろしく、アデル。」
「こちらこそ、レント。」
照れ臭くて、つい顔が綻んでしまう。
「それでさ、この印章だけど、着けるのはもう少し後でいいかな? 実はさ、セフィア達とは結婚してるけど、式をしたわけじゃないんだ。」
「そうなの? まあ、普通の市民はしない事も多いし別におかしくはないんじゃない? でもそれとなんの関係が?」
「この世界での結婚ってさ、指輪を交換して神の前で愛を誓うものですよね。プロポーズした時、その、アリシアさんが来てまして、結果的に誓約式と同じ事をしたんです。でもやっぱりちゃんとした結婚式はしたいじゃないですか。それで、いつかしたいなって思ってて。だから、印章を着けるのはその結婚式を、アデルも一緒にやってからがいいなって。」
「結婚式……うん、うん! それ、すっごくいいよ! というか、すごく嬉しい! い、いつにする? 式はいつするの!?」
「ま、待ってください。まだ先ですから。カインに一度戻って、その後ユキノの用事でヤマトに行く事になってて、だから少なくともそれらが終わって落ち着いてからですから。」
「そっか……しばらく会えないのか。」
「ごめんなさい。でも、またちゃんと帰って来ますから。」
「うん。待ってる。ちゃんと帰ってくるのを待ってるから。」
その後、仕事をしろとエリーナさんが乗り込んでくるまで、2人きりで話をした。
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