第898話 非常に気まずい朝食となりました。的なお話
あ〜……なんでこうなったんだろう?
昨日みんなにそういうのは無しって言ったのに蓋を開けてみればご覧の通りの有様……これじゃあみんなに文句を言われてしまうよ。
「ん……おはよう、レント。」
アデラードさんが起きた。
なので、どうしてこうなったのか、聞かせてもらおう。
アデラードさんがやって来た事は、まあ……家主だし、そういう間柄だからそれはいい。
でも、リナさんに関してはそうじゃない。
恋人だけど、そうじゃないんだよ。
リナさんはそういうのじゃないんだよ。
「アデラードさん、全部吐いてください。」
「ふぇ……何? 服? あー、後で……。」
穿いてではなく、吐いてなんだけど……。
「そうじゃなくて、リナさんの事ですよ。どうせアデラードさんなんでしょ、連れて来たの。」
「ぅ〜ん……? 違うよ。ふぁ……昨日レントの部屋に来た時には既にリナがレントの部屋の前に居たんだよ。」
「え、リナさんが? でも、それって普通に話がしたいだけじゃ……。」
「レントだって見たでしょ。あのリナの様子。話だけじゃああはならないよ。」
「そりゃ突然上司がケダモノになりゃああなりますよ。」
「レント……それ、本気で言ってるの?」
「っ!」
……はぁ。
分かってますよ。
たとえ唆されようとも簡単に身を許すような人じゃない事くらい。
ちゃんと自分で考えて、そうしたんだって事くらい、分かってるよ。
「どうしてそうしたかは、自分で教えてくれるんじゃない? ね、リナ。」
「き、気付いてたんですか……?」
「当然。」
「うぅ……恥ずかしいからやり過ごそうと思ったのに……。」
「私を騙せると思わない事ね。で?」
「えと、レントさんが居なくなったって聞いて、すごく心配して、でも無事に帰って来てくれて、それがすごく嬉しくて。でも、まだ不安があって、ちゃんとここにいるんだって実感したくて、もっと、触れ合っていたくて、目の前から消えないような、そんな、絆のような、証のようなものが欲しかったんです。だから……ごめんなさい。もしもこんなふしだらな人が嫌なら、私、目の前から消えますから……。」
「リナさん…………それはこの人を見ても言えますか?」
アデラードさんを指差す。
リナさんも見てただろうけど、最初に押し倒して来たのはアデラードさんだ。
それに……基本的にウチの嫁さんは肉食系です。
俺から誘う暇がないほどだ。
「それに、俺は居なくなりませんし、手放すつもりはありませんよ。俺、そういう相手が複数いるから、誠実に、なんて言えませんけど、でも、だからこそ、これだけは言っておきます。俺、受け入れる相手は絶対に手放さないですから。だから、消えるなんて言わないでください。ちゃんと好きですから。ちゃんと、大事にしますから。」
「レントさん……。」
「それに、いざとなったらアリシアさんに頼りますよ、俺。俺には神様がついてます。だから、絶対に大丈夫ですよ。」
「ぷっ! 結局神頼みですか?」
「ただの神頼みじゃありません。祝福持ちの神頼みです。」
「あははは……それなら、安心です。レントさん。今後とも、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくね。」
今までよりももっと、リナさんとの距離が近くなった、そんな気がする。
いや、きっと気のせいじゃなく、距離が近くなったんだ。
服を着て、朝食を食べるために食堂へと向かったのだけれど、すごく居心地が悪い。
すれ違ったメイドさんはみんなニヤニヤとしてるし、食堂で席に着こうものなら、セフィア達からギラギラとした視線を向けられるし。
やっぱバレた?
そういえば昨日はアデラードさんに襲いかかられたから、魔道具を設置出来ていなかったな。
……そりゃバレるわ。
そんなわけで、非常に気まずい朝食となりました。
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