第900話 早く寝る事が出来なかった。的なお話

エリーナさんにアデルが連れて行かれたのを見送った後、みんなの元に戻る 。

家主が居ないのに部屋に長居するのもどうかと思うしな。


「ただいま。」

「おかえり。遅かったね。」

「ちょっと話しててな。」

「何もらった?」

「ちょっと待って……これだよ。」


ここに居るのはウチのメンバーのみなので見せても問題ないだろう。

いや、むしろ見せるべきだろう。


「これは……何?」

「印章だって。エリュシオンの。」

「それってつまり……。」

「うん。まあ、そういうこと。エリュシオンの一員として認めるって証。口約束だけじゃなくて、ちゃんとした証が欲しいって言われた。」

「そっか……。そういえば僕達もこういうの持ってないよね?」

「そうだな。でもまあ、必要ないんじゃない? だって庶民だし。」

「それもそうだね。そもそも僕達が貴族や商人になるなんて考えられないもんね。」

「商人はまあ、冒険者引退したらするかもだけど、大分先だしな。」


でもちょっと憧れもあったりして。

手紙とか出すときに封蝋をするのって、凄いファンタジー感を感じるんだよ。

昔の地球ならばあったかもだけど、今だと印鑑ばっかりだし、封をするにしてもシールに糊が主流だ。

だからちょっと憧れる。


「ってあれ? そういえばユーリ達は? お昼の時には居たよね?」

「3人なら帰ったよ? あんまり長居するのも申し訳ないって。」

「ユーリが遠慮……? 多分、貴族の家にいるのが恐れ多いって感じたんじゃない?」

「かもね。」


とはいえ、3人が居ないというのは都合がいい。

3人がいる間はいつやって来るとも分からず、アニメを見ることが出来なかった。

しかし、帰ったというのなら話は別だ。

ここんところ忙しくてあまり見れてないんだし、今日の残り時間はたっぷりと楽しませてもらおう。



アニメをたっぷりと楽しませてもらった。

あのタイミングであの子が復活するとは……というか終始泣かせる演出ばかりで堪えるのが大変だったよ。

惜しむらくは、CMが見れなかったことか。

あの作品、直後の円盤のCMは割と本編と絡ませてたりするから面白いんだよね。

それが見れないのが少し残念。


「ただいま。」

「おかえりなさい。」


アデルがお仕事から帰って来た。

リナさんとアイリスさんも一緒だ。

3人を加えて一緒に夕食を食べているとアデルが質問して来た。


「そういえば、出発は明日の予定なの?」

「俺はそのつもりだけど、みんなはどうかな?」

「僕もそれでいいよ。あんまり時間もないしね。」

「すまないな。本来ならばもう少し早く言うべきだったんだが、忙しさもあって忘れてしまっていた。」

「まあ、しょうがないよ。」

「それってヤマトの話? レントが軽く教えてくれたけど、何かあるの?」

「はい。我が祖国ヤマトにて行われる封竜祭という祭りがあるのですが、私はその祭りにおける目玉である演舞の主役候補を見つけ、ヤマトへと連れて行くという使命を賜っておりました。その主役候補としてレントを選んだ次第です。」

「封竜祭か。見た事は無いけど話は聞いたことあるよ。私も行きたいんだけど、仕事がね……。」

「まあ仕方ないでしょ。アデル義姉さんはギルドマスターなんだから、そうほいほい街を離れられても困るわよ。それよりも、私、結構一緒にやって来たつもりなんだけど、昨日聞かされるまで知らなかったんだけど、どうして教えてくれなかったの? 教えてくれたら手伝えたかもしれないのに。」

「すまんな。だがこれも決まりなのでな。誰かに言ってそれが原因で俺も俺もと言い寄られては意味がない。相応しいと思える人物を選定者自らの意思で選べるように決めるまでは誰にも言ってはいけないという決まりがあるのだ。」

「そう……それなら仕方ないわね。」


一緒に居たのに内緒にされていたってのはちょっと悲しいよな。

でも理由が理由だけにしょうがない。

周囲に知られて使命の妨げになっては意味がないからな。


そして夕食を終え、明日は早いからと早めに準備を済ませて後は寝るだけって所でみんながやって来た。

明日が早いなら早くから始めればいいじゃない。

って考えらしい。

みんなの中には昨日仲間入りを果たしたリナさんもいる。

ちょっ、まさか全員!?


「アッーーーー!」


早めに寝るつもりだったのに、早く寝る事が出来なかった。

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