第891話 大事な人が居るのだから。的なお話
「それで、3人はこの後どうするの?」
「お昼……というか朝もまだ食べてないし、みんなもいるから屋敷の方に戻りますよ。あ、でもその前にダンジョンで得たものを売っておきたいです。」
「じゃあ、一緒にお昼は食べられないのか……残念。」
「まあ、夜は一緒にって事で。」
「そうだね。」
「ナタリアとイリスは?」
「私も帰りますわ。昨日の今日ですから。」
「ま、そりゃそうだよね。」
「私は、みんなを連れて帰りますね。あんまり長居するのも申し訳ないですし……。」
「気にしなくていいんだけど、あんまり無理強いするのも良くないか。でもとりあえず今日くらいは泊まっていきなよ。」
「えっと、じゃあ、お世話になります。」
そしてギルドマスター室を後にしたわけだが……。
「あの、もしかしてなのですが、ひょっとしてアデラード様の屋敷に泊まっているのですか?」
「ああ、まあ、基本宿住まいだから。でも深夜遅くにってのは受付は無理そうだったから。」
「ああ、そういう事ですか。てっきり、屋敷に住まわせてもらっているのかと。」
「そそそ、そんな事あるわけないじゃないか。」
「そうですよね。」
「ただ……」
「ただ?」
「ただ、これまでにも何回か泊まった事あるんだけど、その度に部屋がどんどん俺好みに変化していってるんです……。その有能っぷりに凄いとは思うけど、少しだけ怖いです。」
「それはなんとも……。もしかして、本格的に住んで欲しいのでは? 以前泊まらせてもらった時の様子では使用人は居ても身内の人はいないようでしたし。」
「前に誘われたことはあるけどね。でも流石にそれはちょっと、師匠に負んぶに抱っこって感じがして……。」
「なるほど。」
そして買取カウンターに行って買い取ってもらったんだけど、やはり1週間しか潜っていなかったからあんまり儲からなかった。
まあ、その代わり情報料で1000万も貰ったから稼ぎとしては十分すぎるんだけどね。
「206万ですか。あんな事がありましたし、これだけになるのも仕方ないですわね。」
「だな。せめて20階層のボスを周回出来ていればまた少し違ったとは思うけど。」
「いやいやいやいや! たった1週間で200万ですよ!? どう考えても十分過ぎますよ!?」
「いやでも、これくらい普通じゃない?」
「そうですわね……それに、予定通り分ければ1パーティで70万超えないですし、むしろ少ない方では?」
「だよなぁ。」
「やっぱり高ランク冒険者はおかしいです……。」
やっぱりとはどういう意味かな?
それに全然おかしくないし。
むしろ赤字だし少ないだろ。
4週間分の食料やらなんやらにポーション類、その他必要物資に武器防具の整備依頼。
それらを合わせればマイナスになるだろう。
まあ、ウチは武器の整備は俺がやれるからその分安くはなるけど、それでも赤字だからなぁ。
ちなみに、買取金は3等分して68万で残りの端数は自分達はあんまり役に立っていなかったからとイリスさんが辞退したのでウチと天装で分けた。
「それじゃあナタリアさん。またそのうち。」
「ええ。」
ナタリアさんと別れて俺もエリュシオン邸に……と、その前に。
「イリスさん。ちょっと寄るところがあるんで、先に帰っててくれる?」
「分かりました。」
何処に? とか聞いてこないのはありがたいな。
誰にも言えないとかそういうわけじゃないけど、ちょっと恥ずかしいからね。
イリスさんとも別れた後向かったのはリスティーン。
かなり早くなってしまったが、帰って来た以上はその事を伝えておくべきだろうからね。
本当はリナさんにも言っておきたかったけどギルドには居なかったし多分休みなのだろう。
「アイリスさん居る?」
「いらっしゃ……レント……さん?」
「ただいま。ちょっと色々あって、早めに……」
「レントさーん!!」
「うわっ! あ、アイリスさん!?」
「良かった……本当に良かった……アデラード様に聞いた時は、きっと大丈夫だと思ってたけど、でも、やっぱり不安で……だから、無事に帰って来てくれて……本当に良かったっす……。」
「ただいま。心配かけてごめんね。でもほら、俺は大丈夫だから。だから安心して。」
「はいっす……。」
突然抱きつかれた時は驚いたが、心配してくれていたようだ。
だからこそ、ちゃんと帰ってこれて良かったって思える。
俺にはこうして、無事を祈っててくれる大事な人が居るのだから。
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