第862話 出てこないことを祈っておこう。的なお話

おやつタイムを終えて探索を再開したわけだが……ヤバイ。

のんびりし過ぎた。

結局あそこに1時間も居てしまった。

これでは今日中に19階層へたどり着くのは無理そうだな。

残念。


そういうわけで次のセーフティーエリアを目指していくわけだが、セーフティーエリアへの最短ルートは入り口から階段までの最短ルートではない。

なので魔物との遭遇率が少し高くなっている……多分。


「あ、その先罠があるって。」


魔物の前に罠に遭遇したよ。

罠の詳細を教えてくれなかったので危険性は低いやつ。

ここはリリダスの出番です。


「そこ。」

「あー、これはあれだね。毒矢の罠だね。」


毒矢だと?

いや、それでどうして危険性が低いの?

アデラードさん、自分が状態異常無効だからって危険性を軽く見てたりしてません?


「こういう時の対処法はどうするか分かる?」


なんか久しぶりだな。

ランによる罠の対処法レクチャー。

解除するとかそういう感じの罠じゃなかったからそれも仕方ない事なんだけどさ。

というか、人形ゾーンとかどうやって解除するというのだろうか……あれ多分無理だよね?


「起点を避ける。発射口を塞ぐ。」

「正解。まあ、起点の方を解除する方法もなくはないけど、時間がかかるからね。それなら避ける方がいいよ。場所さえ分かれば避けるのも簡単だからね。」


起点となる場所は通路の中央部の床のブロックの1つ。

それが加圧式で踏まれると発動するらしい。

よくある奴。

解除するならまずはブロックを外すことから始めるらしい。

外すのから時間がかかりそうだし解除はしなくていいな。


起点のブロックをひょいと飛び越えて先を行く。

するとわずか数分進んだところで魔物と遭遇する。


「「「ぎゃあああああああああああああああ!!!!」」」


無駄に大きなGだ。

悲鳴をあげたとしても仕方ない。

そう仕方がないんだ。

だから今から俺が奴を屠る事も仕方がないことなんだ。

何せあいつはこの世界、いや、すべての世界において害悪でしかない。

いや、害悪そのもの。

だから俺が奴を滅するのは正しき行い、それ即ち正義だ。


「あ! みんな! レントとユウキちゃんとアカネちゃんを止めて!」


スカーレット・ペネトレイターを撃とうとしたが残念ながら、本当に残念ながらリリンに止められてしまった。

アカネと蒼井も口を塞がれ魔法の詠唱を止められてしまっていた。

奴を殲滅しないといけないのに……。


「き、急にどうしたんですの!?」

「それは後で話すから、まずはあれを倒して!」

「え、ええ……。ラン!」

「え、あ、分かった!」


ランの手によって悪は処刑された。

そうしてようやく俺、アカネ、蒼井が解放された。


「それで、一体何なんですの?」

「実はレントとユウキちゃんとアカネちゃんはさっきの魔物が大っ嫌いで、本当に嫌みたいで、見ると全力で攻撃しようとするの……前もそれで大変なことに……。」

「そ、そうなんですの……蜘蛛以外にも我を忘れる存在がいたんですね。」

「蜘蛛?」

「いえ、何でもありませんわ。」


Gはこの世の害悪なんだから消すのは当たり前だろうに何を言っているんだろう?

後29匹。

警戒は怠らないようにしよう。


しかし、その決意は無意味に終わってしまう。

Gが出てからセーフティーエリアまでの道のりで罠に1回、魔物と6回遭遇したが、Gは1度も出てこなかった。

いや、遭遇したいわけじゃないけど、居るかもと思うと落ち着かない。


見張りの時に出てこないことを祈っておこう。

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