第863話 ゆっくりと寝させてもらうとしますか。的なお話
今回の野営場所は残念ながら18階層のセーフティーエリア。
ここから階段前まではどのくらいかかるのだろう?
1時間か?
1時間半か?
まあ、どのくらいかは分からないが多分8時前には着けるとは思う。
だから階段前まで行くという選択肢もない事もなかった。
19階層への階段前まで行って、明日の午前中に20階層前まで行ってそこでお昼を食べてゆっくりと体を休めてからボス戦へ……ってのが理想だったけど、その為に今日頑張って疲れる事をしていたら何の意味もない。
アデラードさんがGOサインを出したからまず負けることはないとは思うけど、その慢心が命取りになる。
どんな相手なのか分からない以上、万全を期しておきたい。
だから疲れを残さない方を選択する。
冒険者は冒険をするとかしないとか言う話がある。
この冒険は危ない橋とか危険な事を指していて、冒険者は時には危険に飛び込む必要があるとか、危険なことは避けるべきとかそういう話。
俺は断然後者派だ。
命あっての物種だからね。
そういうわけで、疲れて動きが鈍ってやられるなんていう危険のある事は避ける。
それに何より、まだ1週間なのだ。
まだ2週間近く探索を続けるというのにここで無理をしてどうするって話だ。
何をするにしても体が資本。
無茶はいかんよ。
野営の準備を終えて、後はのんびりと……と、その前に。
「あ、ナタリアさん。夕飯の件なんですけど、ユーリ達の分はどうしましょう? 乾燥野菜や干し肉とかそんなのだったから見てて居たたまれなくなってこっちで用意してたんだけど……。」
「見てたので知ってますわ。ですが安心して下さい。ちゃんと彼女達の分も用意しますから。」
「それなら良かった。」
どうやらユーリ達の分も用意していた事には気付いていたようで、その分もちゃんと用意してくれているようだ。
なので安心して任せ、出来上がるまでのんびりとしていよう。
夕飯が出来たとフランベルさんが呼びに来てくれたので遠慮なくご相伴に預ろう。
遠慮はしないけどちゃんと感謝する。
変に遠慮すると向こうも気を使うだろうから遠慮せず、でも感謝の心は忘れずに。
それを忘れると傲慢な人間になってしまうからね。
「どれも美味しそうですね。では、いただきます。」
フランベルさんの腕が確かなのは知っている。
美味しそうな見た目なら、味も美味しいに決まっている。
だからすぐに食べ始めたのだが……。
「全く躊躇しませんでしたわね……。」
「はい?」
「いえ、パーティメンバー以外からの施しを何の躊躇もしていないのに少し驚いただけですわ。」
「あー、そういう……でもナタリアさん達も警戒してませんでしたよね?」
「私達も一応警戒して少し調べていたんですよ? 気づきませんでした? ま、全部杞憂に終わりましたけど。」
「え、そうなのか? でも、確かに知らない人から貰ったりしたら警戒するけど、ナタリアさん達だからなぁ。一緒に冒険する仲間だし、そんなことするはずないって知っているから全く警戒してなかった。」
「そ、そうですか……。」
まあ、そもそもナタリアさん達が俺達を殺す理由が無いし。
メリットゼロに対してデメリットが大きすぎるし。
これでも一応はここの冒険者ギルドギルドマスターのアデラードさんの弟子だ。
そんな俺達に害をなして得られるのがアデラードさんからの憎しみとか怨みなのだから狙うわけがない。
油断はいけないけどね。
「そ、それならいっそ、今後は食事を一緒にとるというのはどうでしょう? 元々食糧は別に用意するというのも逸れた時のためであって、別々に食事をするという事ではありませんし。」
「それは構わないけど、準備とかはどうすんの?」
「材料を互いに提供し一緒に調理をすればよいでしょう。いいですわよね、フランベル。」
「はい。私もセフィアちゃん達と一緒に料理するのは楽しいし。」
「そういう事らしい。頼めるか?」
「うん。大丈夫だよ。」
というわけで明日から一緒に食事という事になった。
そして食後、見張りのローテを決めるが、俺はお休みだった。
ならば今夜もゆっくりと寝させてもらうとしますか。
そんじゃ、おやすみなさい。
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