第821話 本当に残念だ。的なお話

「…………。」


ん?

あれ?

なんか急に会話が止まったな……。

俺何か変な事言ったかな?

よく分かんないけどこの話題は変えたほうがいいかも。

いやまあ、会話が無いなら無いで見張りをしやすいからそれは別にいいとは思うんだけど……こんな浅い階層から気を張っててもどうかと思うし。


うーん…………あっ!

そうだ。

アレについて聞こう。

流石に個人に関する事を聞くのは気がひける。

というか、次はナタリアさんを狙ってるとか思われかねない。

そんなのは絶対に嫌だ。

だが、この質問ならばそういう風には捉えられないだろうし、これを聞こう。


「ナタリアさん。」

「は、はい! なんでしょう?」


驚かせちゃったかな?


「えっと、以前ナタリアさんの槍は実家にある魔槍の模造品だって言ってましたよね?」

「ええ、言いましたわね。」

「それで、その魔槍について教えてもらえませんか? やっぱりそういう魔剣とか魔槍ってカッコいいじゃないですか。だからどんなものか気になっちゃいまして。」

「構いませんわよ。知ってる人はそれなりの数がいますし。まず、こちらが今私が使っている槍です。」


そう言いながらナタリアさんは自身が使っている槍を取り出す。

柄も穂先も何もかもが白く、金と思われるもので装飾が施されているとても綺麗な槍だ。


「この槍の名は『ブランシュエクレール・レプリカ』といい、元の魔槍の名は『ブランシュエクレール』といいます。」


エクレールって事は雷属性か。

レア属性だし、その価値はかなりの物になりそうだ。


「刃に白き雷を纏わせる事が出来、また、『轟け』の文言を発しながら魔力を込める事で雷を放つ事が出来ます。」

「魔槍ってだけでも凄いのに、雷属性って、凄いですね。」

「ええ、ランベルスの魔槍として貴族の間ではそれなりに知られておりますし、実際、以前この迷宮から魔物が溢れた際も当時の当主が魔槍を持って迎撃に当たったという話もあります。まあ、それが本当かどうかはわかりませんがね。」

「そうなんですか?」

「ええ。もしかしたら、部下の騎士に槍を貸し出して手柄だけをもらった可能性もありますから。」

「なるほど。」


まあ、貴族だしね。

手柄を立てて貴族家を興したって話はあるんだろうけど、代を経てもずっと武芸に秀でているなんてそうそう無いだろうし、むしろ政務能力が高い方が領地に住む領民とか国民は助かるしね。

もちろん今も武系の貴族家を維持している所もある。

アカネのユースティアもそうだったはず。

その辺はどっちがいいとかは無いだろう。


「……一度でいいから本物を見てみたいな。」

「すみません。流石にそれは難しいかと。家宝ですから。」

「あ、聞こえちゃいました?」

「ええ。」


つい溢れてしまった本音が聞こえてしまったようだ。

なんか恥ずかしいな。

恥ずかしいしここは話題をそらそう。


「そ、そういえば魔剣とかって人工のものってないんですかね?」

「人工ですか……少なくともこの国での成功例はありませんわね。国の研究機関が度々研究しているそうですが結果は芳しくないそうです。」

「あ、やっぱりそうなんですか。」

「ええ。大昔には人工魔剣があったとか……。ですが今ではその技術も失伝しており、現状では無理としか言えませんね。」

「自分で作れたら面白いと思ってたんですけど……残念です。」


それに魔剣を作れたら聖剣も作れるかもしれないとか思ってたんだけど……本当に残念だ。

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