【第七章】封竜祭に参加します
第816話 こっからが本当のダンジョン探索だ。的なお話
天装さん達と合流してダンジョンへ。
フランが持って来た記録結晶は周囲の目もあるので人気のない所で説明をしないと。
いくら近い内にダンジョン内で見つかるようになるとはいえ、今の段階で見られようものならかなり面倒なことになるのは間違いないだろう。
帰って来たらすんごい面倒なことになるだろうし、帰ってくるまでの間はアデラードさんに迷惑がかかるだろう。
だから、そういったことを避けるために人目のない所で説明する必要があるのだ。
というわけで……
「リリン、周りに人の気配はないよな?」
「ん。」
「魔道具の設置終わったよー。」
「分かった。」
「あの……「さて!」……っ!?」
「あ、驚かせてすみません。」
「いえ……それで、このような脇道で一体何を?」
「えーと、とりあえず今から言うことは他言無用……とまでは言いませんがあまり言いふらさないようお願いします。」
「ええ、分かりましたわ。だそうですわよ、アンジェラ。」
「ちょっ、なんでアタシだけ名指しなんだよ!?」
「ポロリとこぼしそうですから。お酒を飲んだ時とか。」
「いや、それは……分かった。気をつける。」
「あはは……。」
苦笑い1つ。
さもありなんと思ってしまったのも理由の1つだが、しゅんとなってるアンジェラさんがなんかおかしかった。
「えと、それで話というのですが、これについてです。」
「宝石……ですか?」
「いえ、これは記録結晶という魔道具で、この迷宮での到達階層を記録し、使用することで到達階層に転移することが出来るそうです。アデラードさんに調べてもらいました。」
「それ本当ですの!?」
「そうらしいです。まだ使った事は無いですけど。なので今日試してみようと思ってます。」
「……危険はないんですの?」
「アデラードさん曰く、大丈夫だそうです。まあ、心配だというのであればまずは俺が試してみますよ。」
実際はアデラードさんは軽く見ただけなんだけど。
でもアリシアさんの眷属のフランが用意したんだし心配する事なんかない。
「そうですわね……ではみんなで到達階層の前の階まで行き、そこで使用してみてはどうでしょう? そこでならすぐに確認も出来ますし、危険な事があっても即座に助けに行けますから。」
「いや、でも……そうですね。ではそうしましょうか。」
正論だった……。
付け入る隙がない程の正論だ。
普通はそうだよね!
いくら調べたからって初めて使うならそりゃ慎重にもなるわ!
俺だってナタリアさんの立場ならそうする!
俺に好意を抱いていると思われるフランが用意してくれたから信用してるが、ナタリアさんはそれを知らないんだもの、そう考えるのもしょうがないよ。
時短は叶わなかったが、まあ、そもそもそんなに時間のかかる道程じゃない。
それに、考え方を変えれば、連携の訓練をしたがあくまでも訓練。
1階層から10階層までの間に実際に試しながら最適化する事もできると考えれば、無駄という事は無いだろう。
「それじゃ、行きますか。10階層まで最速で最短でまっすぐに一直線に!」
「いえ、さすがにまっすぐ一直線というのは無理ですわよ。」
「わ、分かってますよ! 今のはただそういう気持ちでって意味ですよ!」
ナタリアさんにツッコまれてしまったが、俺が求めてたのはその反応じゃ無い。
知らないんだからそうなるのも仕方ないんだけどさ……。
そんなわけで最短ルートを寄り道せずに進んで行きます。
隊列としてはランさんとリリンが斥候として前を行き、その後ろに盾持ちであるアンジェラさんとビスカさん、その後ろに俺とナタリアさんで、その後ろにナタリアさんとルキノさん、フランベルさんとセフィア、ルリエとレイダ、シアとルナ、アカネと蒼井、ユキノといったもの。
ユキノと蒼井は後ろの警戒をしてもらってる。
何も無いとは思うけど、念の為にね。
「ん。」
「分かった。」
道のりは順調、何かあるわけではなくいつも通りリリンがシュパッと行ってサクッと狩ってくる。
今回はラージラットか。
……うん。
こうじゃない。
「いやいや、速すぎでしょ! なんなのその反応速度に処理速度は!?」
「いや、リリンはいつもこんな感じで……。」
そのあまりの速さにランさんが驚いてしまったが、そうなるのもしょうがない。
「リリン。連携の確認とかしたいからほどほどにな。」
「ん。」
「そういう事じゃないんだけど……。」
ランさんが何を言いたいのかよく分からないが、リリンもこっちに魔物を回してくれるだろうし、こっからが本当のダンジョン探索だ。
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