番外編 七夕if 未来ver


「さ〜さのはさ〜らさら〜♪ の〜きばにゆ〜れ〜る〜♪」


一体どこで知ったのだろうか……って言っても、俺かアカネ、蒼井あたりが口ずさんでいたのを聞いて覚えたんだろうな。


「おーい、レンフィア! あんまり遠くに行くな。リントも!」

「はーい。」


レンフィアにリント。

俺の娘と息子。

まさか、以前セフィアが夢想の彼方を幻視していた時に出てきた子供の通りの性別、名前になるとは……。


「まあまあ。いいじゃない。折角の七夕なんだし、偶には自由にさせてもさ。」

「だが、まだ8歳と6歳なんだぞ? 心配するのは当然じゃないか。」


俺に話しかけてくるのはセフィア。

結婚したての頃に比べてだいぶ大人っぽく……は、全くなってはいないが、少しだけ落ち着いた雰囲気になっている。

以前アリシアが言っていたが、魔力量が増えると寿命が伸びるという奴の影響だ。

理屈としては、人は身の内に魔力を持っており、ほんの僅かだが魔力が漏れ出ている。

これが膨大な魔力を持っていた場合になると、割合は同じなのだが総量の差からその僅かの量ですらそれなりの量になってしまう。

そして、漏れ出たその魔力が肉体に纏わりつき、一定量を超えた段階で身体強化に似た効果を齎すのだ。

各細胞の強度が上がり、劣化しづらくなる。

更に代謝の効果が上がる為に若い姿を保つことができる。

更に更に、人の細胞は細胞分裂できる回数が決まっているとされるがその回数すらも、身体強化によって上限が上がり若く居続けられる。

とまあ、これらの理由から寿命が伸びるという事。


そして、俺達は加護……いや、今は寵愛か。

その影響でレベルアップにおけるステータス上昇量が普通よりもかなり高くなっていて、当然魔力もめっちゃ多い。

だからまあ……みんななかなか老いない身体になっている。


心配している俺にリリンが話しかけてくる。

ルリエやアカネといった、嫁さん達の中でも少しばかり若い子達もすでに大人になっているが、それよりも驚く変化をしたのがこのリリン。

戦闘時はポニーテールに纏めるが今はオフな為に腰あたりまで届くロングヘアに、不断の努力のお陰でセフィアに匹敵するナイスバディになっている。

それだけでも十分過ぎるほどの変化なのだが、なんと、身長が160cmにまで伸びており、誰もが振り返るような超絶美人になっているのだ。

セフィアは165cm程までなっているが、もうそこまで差がない。

昔はあんなにロリってたのに……感慨深いような寂しいような、そんな気分になる時がある。


「レント、大丈夫。みんな強いから。」

「いや、強さの問題じゃないから。」


うちの子達は生まれた時から加護持ちで、俺達が冒険者ということもあって、すでに一般人を軽々と倒せるくらい強くなっているが、だからと言って心配しないという事にはならない。


「あそこ。」

「ん? ああ、ピュリオスが見てるのか。なら安心か。」


リリンが指差した先にはピュリオスがいる。

イグナイトホークへと進化していたピュリオスは更に進化した。

アデルが言うには不死鳥に進化するらしかったが、うちのピュリオスはそうはならず、変異進化したのか新種の存在、太陽神鳥ソレイユガルーダとかいうものになってる。

人化も覚え先端が赤くなっている金髪のイケメンになれるが、今は普通(?)の大陽神鳥だ。

うちの子達みんなおかしい。


「子供達はピュリオスに任せて私達も楽しみましょうよ。4人だけなんて久しぶりなんですから。」


こちらも随分と大人っぽく……は、なっていないが、それなりに成長して見た目17、8になっているルリエが言う通り、4人だけというのは久しぶり。

嫁さん達が多いし、かなり稼いでいくつかの街に家を買ったりと、まあ、生活が安定して来たという事で避妊をやめた結果子供も結構な数になってしまい、4人だけでというのはかなり珍しい。

他の子達が「たまには遊びに行ったらどう? 他の子供達は私たちが見ておくから。丁度七夕だしさ。」との事で、ちょっと街をぶらり。


「ほら、レリアも行ってきなよ。」

「いいの?」

「ああ。と言っても、あんまり遠くまで行っちゃダメだぞ? 後、知らない人にはついて行かないように。」

「うん! お姉ちゃん、お兄ちゃん! 私も一緒に行くー!」


3人が産んだ下の子達はまだ幼いので家に残ってる嫁達が面倒を見てくれてる。

だから安心して遊びに来れたわけだ。


「レント、七夕アイスだって。一緒に食べよ?」

「私も。」

「私も一緒ですよ?」

「もちろんいいよ。ね? レント。」

「ああ。」


でも流石に4人で1つのアイスというのは物足りないので2つ購入して食べる。

グレープとブルーベリーの2種類のフレーバーにチョコで作った星型のチップが天の川のように縦断し、織姫と彦星であろう、大きめの星型のホワイトチョコのチップがグレープとブルーベリーに1つ乗っている。

七夕の史実に合わせているのか。

グレープとブルーベリーの酸味と甘みが丁度いいが、天の川部分のチョコがちょっと主張しすぎかな。


「あー! パパ達ずるーい!」

「お、もういいのか?」

「ううん。これに参加したいからお願いに来たの。」

「何々? 親子で参加、七夕スタンプラリー? これをやりたいのか?」

「「「うん!」」」

「だってさ。3人はどうする?」

「やろうよ。3人もやりたがってるんだしさ。」

「ん。一緒にやろっか。」

「レリアもパパと一緒にやりたいよね?」

「うん!」

「子供を味方につけるなよ……。みんな、一緒にやろうか。」

「「「うん!」」」


子供達が持って来たチラシに書いてあった場所で受付を済ませるとスタンプカードを受け取る。

チェックポイントは全部で7つ。

そこには7人の番人がおり、その番人からスタンプを貰い、そしてスタンプを7つ集めて受付にまで持って行くと景品がもらえるというもの。

普通のスタンプラリーと違うのはゲームをして番人に勝つ必要があるということだ。

……というか、あれです。

織姫彦星争奪戦とほぼ同じです。

子供向けになってるけど。



1つ目。


「えーと、よく来たな。ここでは親子の絆を試させて貰う。」

「「「…………何やってるの……リナママ。」」」

「……お仕事です。」


リナが1人目の番人のようです。

というか、ギルドから駆り出されたようだ。

ちなみに、このリナもあの戦い以降レベルを上げており、既に寿命が伸びる段階にまで到達している。

みんなは変わらないのに自分は老いさらばえるというのが嫌だとの事で、頑張ってパワーレベリングした結果だ。


「こほん。それで、ゲームの内容だが、親にはこちらが指示を出し、その指示に従って貰う。その姿を見て子供達には親が何のモノマネをしているのか当てて貰う。よいな?」

「「「リナママ、喋り方変だよ?」」」

「くふぅ……。」

「みんな、リナママはお仕事であんな変な喋り方をしてるだけなんだよ。」

「そうなんだ。」

「あ、邪魔しちゃってごめんなさい、リナママ。」

「う、ううん。いいのよ。」


子供達に指摘されるのは辛いよなぁ……。

俺もたまに、な……。


「それでは始める。まずは父親の貴方。これをやってもらおうか。」



指示されたのは……猫の真似?

ちなみに、言葉は発してはダメだそうだ。

ま、当然だよね。

答えを言えるし、猫なら鳴き声ですぐに分かるからな。

というわけでいくぞ?

渾身の、猫のモノマネ!


手をなめる仕草、からの顔を洗う仕草!

そして伸びをする。

後脚で耳をかくような仕草はさすがに股関節が保たないから出来ないが、それ以外は全部やるぞ?

台から降り、ステータスをフルに使って適当な台から台を使って屋根まで登る。

そしてそのまま気の向くままにどこかへ……って、行ってどうするんだよ……。


「レントー、帰って来てー! もうとっくに正解してるよー!」


おっと。

早く戻らないとな。


「パパやりすぎ〜。似てたけどさ。」

「そうか、似てたか。」

「似てたけどさ、どこ行ってたの?」

「気の向くまま、風の向くまま。猫は自由な生き物だからね。」

「何それ〜。」

「えーと、次はセフィアかリリンのどっちかですね。」

「リナ、口調。」

「あっ!」

「じゃあ、次は僕がいくね。」


そしてセフィアのお題がネズミ。

むずくね?

その予想通り、やはり難しいようでレンフィアは何度も間違え軽く涙目。

セフィアもどうしたらと困惑した顔をしていた。

そうして答えを出し続ける事17回目。

最早やけっぱちで適当に答えていたのだろうが、運良くネズミと言いなんとか正解出来た。

というか、このゲーム、いろんな情報が溢れかえっていた地球ならまだしも、こっちの世界だと厳しいよな。

鶏とか言われてもどういう生き物か知る機会がないんだからさ。

こっちの鶏は飛んだりするし。


そんでリリン。

こっちは犬。

犬はまあ、猫と同様比較的簡単な部類だろう。

セフィアがやれば自前の尻尾があるからなお簡単だったんだろうな。

順番逆だったら良かったのに。

そしてリリンが演じる犬だが、めっちゃ似てる。

なのでリントはあっさりと正解。

それはいいのだが……ナイスバディの超絶美人に育っちゃったものだから、こう……グッとくるね。

思わず宿に連れ込みたくなってしまったよ。


そんな感じで次々とゲームをクリアしていく。

ゲームの中にはそれぞれ棒を2本ずつ持ち、その棒を使ってボールを持ち上げてそのままゴールまで運ぶというのや、一本橋の上でじゃんけんをし、勝てば進み、負ければ陣地に戻って再び橋を進む。

そうして最終的に相手の陣地までたどり着いたら勝ちというゲームなんかあった。

棒の奴は身長差が1番のネックで、向かい合う形で持ち上げるのだが俺に合わせると高過ぎるので中腰をキープして移動しなきゃいけないのにはそれなりに気を使った。

一本橋の奴はこちら側が勝てるようにという配慮なのか2対1なので結構簡単に勝てた。

子供だけが迷路に入ってスタンプを押して戻ってくるというのもあったな。

多分迷路はアデルが作った。


そんなこんなでついにラスト。

ラストは超簡単なクイズ。


「問題。七夕といえば笹の葉。その笹の葉に願いを書いて飾るものといえば?」

「「「短冊!」」」

「正解!」


とまあ、超簡単で誰でもクリアできる。

というか、チラシに短冊書かれてるし。


「スタンプラリークリアおめでとうございます! 景品の花火セットです。」

「「「ありがとうございます!」」」

「後これも。願い事を書いてあそこの笹に飾ってね。」

「「「はい!」」」


締めに短冊か。

まあ、それがないと七夕っぽくないしな。


「みんなはなんて書くの?」

「僕はパパみたいになりたいって書く!」

「お、嬉しいこと言ってくれるな。」

「私はママみたいになりたいって書くの。」

「ほんと? 僕も嬉しいよ。」

「私は……秘密。」

「えー、教えてよー。」

「これはママにも教えられないから……。」

「パパは?」

「パパは……うん。パパならいいよ。」

「本当か?」

「うん。えっとね……ごにょごにょごにょ。」

「そうか。ありがとな。」

「えへへ。」


レリアの願い事、それはパパのお嫁さんになりたいだった。

うちの子、可愛過ぎ!


「さて、そろそろ帰ろうか。みんなも待ってるだろうしさ。」

「うん。」

「ん。」

「はい。」

「「「はーい!」」」


そうして俺達は、みんなの待つ我が家へと帰るのだった。

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