第817話 心なしか贅沢な気がした。的なお話
「せいっ!」
「きゅ〜。」
突進して来たチャージラビットをアンジェラさんがタイミングを合わせて大盾弾き飛ばすと情けない声を出しながら消えていき、残ったのはチャージラビットの角だけだった。
「やっぱこの程度じゃすぐに終わっちまうな。」
連携もくそも無かった。
初撃を返討ちにしただけで終わってしまった。
「これじゃなんの意味もないな。」
「低階層なんてこんなもんですわよ。」
「いや、それは分かってたんですけど、少しくらい連携の訓練になるかなって思ってたんですよ。訓練と実際のダンジョンでやるのはやっぱり違うと思うので。」
「もう少し先の階層まで行けば多少はマシになるでしょう。」
「そうだといいんですけどね。とりあえず、この辺は適当に流しちゃいますか。」
「それでいいと思いますわ。」
「と、いうわけだ。リリンさん、やぁ〜っておしま〜い!」
「ん。」
ま、そうだよな。
「レント、分かっててそれやってる?」
「いや、つい出ちゃっただけで……。」
アカネに言われてしまったが、別に狙ってやってるわけじゃない。
本当に、つい口から出ちゃっただけなのだ。
そもそも狙ってたらアカネか蒼井に言ってた。
そんな感じで気楽に進んでいく。
斥候がものすごく優秀でいつの間にか処理しててくれるから楽なんだけど……あれは何してるんだろ?
なんか、時々ランさんがあっ! あっ! って言ってたり地団駄踏んだりしてるんだけど。
アレは何かのお呪いか何かなんだろうか?
気になったんで聞いてみた。
「それって何かのお呪いですか?」
「え、ああ……違う違う。ちょっとリリンに勝負を持ちかけたんだよ。……一度も勝ててないけど。」
「ああ、悔しかったから地団駄踏んでたんだ。でも、あっ! あっ! ってのはなんですか?」
「えっと、どっちが先に魔物を見つけて倒せるかの勝負なんだけど、いつもリリンの方が早く見つけるから……。」
「なるほど、それで……。」
それならリリンが勝つのも頷け…………頷けるのか?
多分リリンが気配察知覚えたのはランさんよりも後だよな。
それなのにリリンが勝つとか……。
恩恵の効果もあるんだろうけど、相変わらずリリンは凄いな。
そうしてダンジョンを進むこと4時間。
2階層への階段前までたどり着く。
これまでなら3時間ほどでたどり着けていた気がするが、最初の方で結構グダッてたし少し遅れるのも仕方ない。
「さて、少し遅いですけどお昼にしましょうか。」
セーフティーエリアという事もあり、俺達はいつものように食器と食材を出し、セフィア達に預けて外からボケーっと眺める。
一方でナタリアさん達は出来合いの肉串なんかと一緒に鍋を取り出し、その鍋に野菜やらなんやらを放り込んでスープを作り出した。
まあ、大体同じかな。
「あら、いつも1から作ってるのですか?」
「大体いつもそうですね。」
そして、戦力外通告されているのだろうナタリアさんがこちらにやって来た。
というか、天装で作ってるのはフランベルさんだけだ。
まあ、だから調理師という役割の人がいるんだろうし。
「所で、最後の方はどんな食事になりますか? いくらアイテムボックスがあるとはいえ、流石に数十日ともなると食材が保たないでしょうし……。」
「え……えーと、さあ、どうなんでしょう……いままでそこまでの時間食材の補充なしで行動した事ないので……。それに俺は料理が出来ないのでどうなるのかも、ちょっと分からないですね。」
「そうですか……。難しいのは分かっているのですが、やはり干し肉や薫製肉、それに乾燥野菜を使ったスープばかりになるのがどうにも……。日持ちの問題もあるので、仕方ないというのは分かってはいるんですけども。」
やっべー!
それ、全ッッッッッッ然! 考えてなかったよ。
普通はそうだよ。
なんで気付かなかったんだ!?
ストレージは時間経過無しの超絶便利スキルだが、普通のアイテムボックスは内部時間が引き伸ばされてはいるけど、それでも時間経過がある。
確か、LV分の1だったかな?
と、とりあえず、LVを聞かれたら最大と答えておこう。
LV10なら10分の1になって40日でも4日にしかならないからな。
あ、でも……後でこっそりと蒼井に食材を凍らせておいてもらおう。
冷凍させて長持ちさせてると思わせられるし。
出来上がったお昼ご飯は、心なしか贅沢な気がした。
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