番外編 ホワイトデー2019
〜レント小学生時代〜
「あら蓮斗、どこか出かけるの?」
「ちょっとスーパーに買い物。」
バレンタインに唯と蒼井からチョコを貰ったからな。
向こうも手作りだったしこっちも手作りで返すのが筋ってもんだよな。
焼◯たて!!ジャぱんの影響とも言う。
漫画読んでハマっちゃったんだよ。
あれ見てちょっと楽しそうって思っちゃった。
というわけで作ってみたくなった。
ま、流石にパンは作らないけど。
とりあえず漫画に載ってたしカステラでも作ろうかなっと思ってる。
妹がキャンディーって言うけど飴を使ったのはカメパンと花のやつだっけ?
難しそうだし諦めて普通にお菓子を作るよ。
材料は卵に砂糖、小麦粉、ザラメ、ハチミツ……って、ハチミツ結構高いな!
後はアレンジ用に抹茶に黒糖、個人的に食べてみたい紅茶!
うげっ!
全部で千円超えるよ……仕方ない。
いくつかは家にある物を使わせて貰って千円超えないように調整して……うん。
これでオッケー。
後は帰って作るだけだな。
〜現代(異世界)〜
流し雛が終わったと思えばすぐに街はホワイトデー一色に染まる。
日本だと申し訳程度にホワイトデーコーナーが設置されるだけっていうのも珍しくないのに、ここ異世界ではホワイトデー色に染まる。
さすが異世界と言うべきなのか、それとももっと頑張れよ日本男児と言うべきか……。
あ、俺は毎年用意していたぞ。
……妹がうるさかったから。
それはそれとして、そんなわけでホワイトデーに関する事はそれなりに取り上げられたり売られたりしている。
だから、嫁達に贈る物を用意するのに役に立つ。
「うーむ、どうしたものか……やはり手作りか、それとも安定性重視で市販品か……悩む。」
手作りにした場合はそれなりのものが仕上がるだろう。
レシピはあるしそこまで失敗するとは思えない。
普段料理が出来ないのだって、何も知らないからこそ出来ないのであって、料理に対するスキルがまるで足りていないわけではない。
普通に使うぶんにはまあ、素人なりにそこそこ使える。
学校の調理実習とか野外活動とかで使ったりしてたしね。
対して市販品は素人では到底無理な品質で味も保証できる。
偶にダメなのも混ざってたりするだろうけど、それだって偶にだし、ただ単に口に合わないだけで、一部の好事家には好評という品もあるだろう。
元の世界でも、納豆が好きという人もいれば苦手という人もいる。
外人にはあまり受けないとも聞くし、そういうのは仕方がない。
だが、基本的には市販品の方が味品質共に上だ。
しかし、手作りには手作りだという付加価値がある。
自分の為に一生懸命頑張ってくれたというのは間違いなく嬉しいもの。
俺だって、セフィア達が俺の為に頑張ってくれるのは嬉しいし、この前のバレンタインも手作りしてくれたのがすごく嬉しかった。
市販品を買って、はいバレンタインというのではないというのはどこか寂しい気がする。
そう考えると、やはり手作り一択な気がして来た。
市販品が悪いわけじゃない。
でも、心を伝えるにはやはり手作りの方がいい。
俺もセフィア達に心を伝える為に、手作りにしよう!
手作りにすると決まったら次は何を作るかだな。
セフィア達にはマカロンで……といきたいところだけど、そうすると蒼井とユキノの2人だけ違うという状態になってなんかこう……イジメみたいになる。
それは良くないと思う。
もしくはその2人だけ特別に見える?
それも良くないな。
心を伝えるわけだし、ここは全員同じで。
となると、アレかな。
昔自作したカステラ。
子供の頃は小学生ということもあり小遣いに余裕が無かったけど、今なら高級食材でも買えると思う。
まあ、限度はあるけど。
基本的な材料は小麦粉、砂糖、卵だけ。
焼きたて!!ジ⚪︎ぱんでは若手パン職人の大会で大量の卵しか手に入らなかったからと甘い小麦粉を使って作ってたっけ。
小麦粉はいくつか試してみる。
砂糖はまだシュガートレントの砂糖があるからそれで。
ハチミツは以前のダンジョンの時の深桜樹の蜂蜜があればよかったんだが、残念ながらもう無い。
新しく手に入れるにしても、なんか王族ですら滅多に手に入らないとかいう代物なので、絶対無理。
自力で探そうにも神樹の側に生えてるとか言ってたしまず近づけないだろう。
というか神樹って何?
世界樹的な奴なのか!?
とりあえずこれは売ってる蜂蜜は高い奴を選ぼう。
高ければ多分美味しいだろう。
他のアレンジのは店を見て考えるとして、まずは店を探そう。
「ハチミツ高っ!! …………あ、すみません。」
「まあ、初めて見た人は大体そんな反応するし、仕方ないよ。」
店に行きハチミツの値段を見たが……なんでこんなに高いんだよ!
「でもこれでもまだ安いほうなんだよね。他の街とかだとハチミツを採りに行く冒険者が少ないから。その点ここは冒険者の数は国内でもトップクラスだからね。まあ、大半がダンジョン目当てだけど、ハチミツは女性人気も高いから割とすぐに受けてくれるんだ。だからまだ安いんだよ。」
「なるほど。」
あー、そっか。
ここ異世界だしね。
日本……というよりも地球みたいに養蜂が難しいんだろうな。
街の中だと人を襲う可能性があるから養蜂が認められるとは思わないし、街の外だと蜂は帰ってくるのか? という問題もあるだろう。
殺されて帰ってこないとか普通にありそうだ。
魔物に養蜂家がおそわれるなんてこともありそう。
となれば、自然に出来た巣から取ってくるしかないわけで、危険だから価値が高まると。
危険度は地球以上だから更に高くなると。
まさか砂糖よりも高いとは思わなかったよ……。
そんなこんながありつつ、材料を全て集め、エリュシオン邸にて試作を繰り返す。
何故エリュシオン邸か。
それは宿だと長時間使うのは難しいから。
営業時間とか精神的なのとか。
自分へのお返しもあるという事でアデラードさんは快く貸してくれた。
というわけで、頑張ってる。
◇
ホワイトデー当日。
それまでに作りに作ったカステラを大皿に盛り、チョコをくれたみんなへと振る舞う。
「ホワイトデーのお返しだよ。たくさん作ったから好きなだけ食べてよ。」
大皿には何も入っていないプレーンを筆頭に、ハチミツ入り、メープルシロップ、紅茶入り、干し葡萄入り、緑茶入りとバリエーションは多い。
緑茶はお店にお茶っ葉をあまり発酵させないようにとお願いしたら用意してくれた。
今日に間に合ってよかったよ。
他にはちょっと大人な味を演出したくてブランデー入りのもある。
そっちはアデラードさん向けでもあるな。
後は、生地に各種果汁を混ぜたものもある。
本当はチョコレート入りも作ったんだけど、なんか、チョコを貰ったお返しにチョコ味ってのは、お前のチョコはいらないと突っ返しているように思えたのでストレージに入れっぱなし。
その内何かの機会に出すこともあるだろうし、無駄にはならないはず。
まあ、腐らないし痛まないから問題はないさ。
「これ全部レントが作ったの?」
「ああ。地球のお菓子カステラだ。 色々と種類があるから楽しんでくれ。」
「じゃあ、僕はこの薄い黄色いので。」
「ピンク。」
「じゃあ私はまずはこのオレンジ色ので。」
「あ、アデラードさんにはこれとかオススメですよ。ブランデー入りです。」
「そうなんだ。じゃあまずはそれから貰おうかな。」
「あ、しっとりとしてて自然な甘さで美味しい。」
「私のはいちご?」
「私のはオレンジ味ですね。」
「抹茶なんて良くあったわね。」
緑茶なんだけどね。
何はともあれ、美味しそうに食べてくれてるし、作って良かったな。
〜レント小学生時代〜
「ほら唯、ホワイトデーのお返しだ。」
「あ、カステラだ。美味しそう。」
プレーンにハチミツ、黒糖抹茶と作ったカステラの詰め合わせ。
紅茶はちょっと失敗したから除外した。
後で蒼井ん家にも持って行かないとな。
「でも、キャンディーでも良かったんだよ?」
キャンディーって、確か好きって意味じゃなかったっけ?
兄妹だし好きか嫌いかで言ったらそりゃ好きだけど、でもだからって妹にキャンディーはちょっと違うよな。
懐かれてるのは嬉しいけど、将来は兄離れしちゃうのか……なんか、嬉しいような寂しいような……。
これが世に言う親心という奴かな。
俺兄だけど。
「それは来年憶えていたらな。」
「絶対だからね!」
来年はどうなることやら。
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