第791話 抵抗は無意味だった的なお話
部屋へと案内される。
その部屋はいつもと同じ場所。
完全に俺の部屋だ。
えーと、前来た時との変更点は……あ、この椅子のクッション、座り心地が俺好みのになっている。
何故そこまで分かるのだろうか?
そして少し経つとリゼットさんが呼びに来た。
夕食の準備ができたらしい。
早っ!
夕食を頂く人数が増えたというのに、そんな事はみじんも感じさせずに当たり前のように全員の前に料理が並んでいる。
この家の料理人には驚かされる。
一体どうすればこれだけの量をあの短い時間で用意することができたのだろうか?
不思議だ。
「訓練に関してなんだけど、明日から数日はまだ事後処理とかがあるからそれが終わったら再開する予定だからそのつもりでね。」
「あ、その事なんですけど、実際にダンジョンに行って天装のランさんとか斥候職で罠解除のノウハウのある人に教わるのってどうですかね?」
「うーん。それは私も考えたけど……いや、過保護にするだけじゃ育たないか。うん。いいよ。じゃあ次は実際にダンジョンに行ってみて。」
「良いんですか!? ありがとうございます!」
「それはそれとして、考えたけどの後はなんて言うつもりだったの?」
「別に大した事じゃないよ。罠のある状況での戦闘がまだ完全じゃないし、罠を解除している仲間を庇いながらの戦闘とかも教えようかと思ったんだけど、実際にダンジョンで体感するのも大事だからね。」
シアが言葉の続きを聞く。
それは俺も少し気になってたから助かる。
ちょうど良いので罠について少し聞いてみるか。
「ところで、罠のある所でも本当に魔物が出るんですか?」
「出るよ。通路に仕掛けられててそこで遭遇。小部屋の中に罠と魔物がセットになってるなんてのもあるし、モンスターハウスを発生させる罠なんてのもあるよ。」
「うわぁ……そりゃ大変そうだ。」
「ああ、それから罠は当然落とし穴だけじゃないから。壁から矢が飛んで来たり、上から天井が落ちて来たり、大岩が転がって来たり、人が近付くと左右から振り子状の斧が襲ってくるとかもあったっけ。」
「致死率高っ! 何それ恐ろしい!?」
「まあ、最後のは隠し通路の奥に設置してあって、その先には何も無いっていう期待外れの場所だったからそこにいかなきゃ大丈夫。」
危険な罠を超えた先には宝が無かった……なんて、そりゃ期待外れだ。
というか、そんなのに遭遇したらショックで膝をつきそうだ。
「あそうそう。アイリス、素材のオークション……いや、今回は普通に販売かな。Dランクの魔物だからそこまで値段は釣り上がらないだろうし、数も多いからオークションには不向きだし。」
「? えと、それで結局なんっすか?」
「ああ、ごめん。今回の狩猟大会で得た素材の販売は3日後からって話。もしも欲しいならその日にね。」
「分かりましたっす。」
ちゃっかり商売してるよ。
そして夕食も食べ終わり、お風呂となる。
なるのだが……。
「なんでアデラードさんも一緒に入って来るんですか!?」
「私家主だし。いつ入ろうと私の勝手でしょ。」
「いやそうですけど……。」
「それにまあ、ここ最近はあんまり触れ合えなかったからね。だから少しでもレントと一緒に居たいんだよ。ダメかな?」
「ダメじゃないです。」
ダンジョンに潜ればまたしばらく離れ離れになる。
だからこそアデラードさんはこんな暴挙に出たのだろう。
ならば今はこうして、少しでも長く一緒にいるべきだ。
「あ、ずるーい! 僕も一緒に入る!」
「私もです!」
「ん。」
途中でどこで嗅ぎつけたのか、どうやって知ったのかは分からないが、セフィア達が乱入して来た。
よく分かったね、3人とも。
聞けば俺の部屋に来たら居なくてそして風呂に行っているとリゼットさんが普通に教えてくれたそうだ。
いや、男の入ってる時間に乱入する普通?
執事のハラルドさんも一緒だったらどうするつもりだったんだよ!
いや、居ないけどね。
でも、居たかもしれないじゃないか。
そしていつの間にかそういう雰囲気へと移行していき、そのままの流れでベッドへと連れ込まれてしまったが、これは余談か。
4人を前にしては抵抗は無意味だったとだけ言っておこう。
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