第762話 再び模擬戦開始だ。的なお話

「3日間お世話になりました。」

「またいつでもいらして下さい。」

「もっといてくれてもいいのに……。」

「流石に何日もお世話になるのは申し訳ないんで……後、これ以上いたら元の生活に戻れない気がしますし。」

「そっか……それなら、しょうがないよね……。でも、いつでも泊まりに来ていいからね!」

「まあ、その内。」


いつでもと言われても困る。

あんまり入り浸ったら、元の生活に戻れないと思って帰る意味がなくなってしまうからな。


「それじゃ、お邪魔しました。」

「また来てね。」


朝食をいただいた後、エリュシオン邸を後にしたんだけど、見送りでアデラードさんが、ね。

そう言ってくれるのは信頼というか愛されているというのが伝わってくるので嬉しいんだけど、少しは加減してほしいものだ。


「俺、ちょっとギルドで訓練をしようと思ってるんだけどさ、誰か模擬戦の相手してくれない?」

「僕で良ければ相手をするけど、急にどうしたの? それに、槍の方はいいの?」

「いや、体が鈍ったまま狩猟大会の護衛をするのはどうかと思って。それに、槍の方も根を詰めてもいい結果は出ないと思うしね。」


行き詰まってるとも言うけど。

ぶっちゃけ、柄をどうすればいいのか皆目検討もつかないし。

何か別の事をしていればふといい案が浮かぶ可能性もあるからな。


「私も行く。」

「そうね。依頼を受けている以上は、不甲斐ない真似出来ないし、私も行こうかな。」

「そう、だね。ちゃんと、仕事しないと、だし、その為の、準備が必要、だよね。」

「是非しましょう。私は先に行って準備をしておきます。」


とまあ、何人かが直ぐに同意してくれ、1名は即座に動き出した。

誰かは丸分かりだろうけど。

1人また1人と同意した事でじゃあ自分もとなり、8人が同意してくれた。

残りの1人はじゃあ私はのんびりしてるね、と言って休もうとしてたけど、みんながやるのに1人だけ何言ってるのだ? って感じになってユキノに連行されてた。

ユキノ、結構真面目だしね。



「最初は誰からだ?」


訓練場に到着した俺は早速木刀を持って歩み出た。


「僕からやるよ。」


最初の相手はセフィアか。


互いに武器を構える。

合図はない。

どちらからともなく、駆け出す。

袈裟斬りに一刀、それをセフィアも一太刀によって迎撃、そしてもう片方で胴を狙って来るのをバックステップで躱す。

追撃してくるセフィアの頭上を飛び越しながら一撃。

セフィアはそれを双剣を交差させて防ぐ。

着地した俺は反転して即座に唐竹を打ち込む。


俺はこうして攻撃をしている間も少しずつ魔力を練り、圧縮して魔力障壁を構築しようとしている。

しかし、それはセフィアも同じだったようだ。

俺の一撃を魔力障壁で防ぎきったセフィアは両手の双剣を交差させるようにして攻撃してくる。

攻撃は見えていた。

でも、魔力障壁で防がれたという事実にわずかに動揺していた俺はほんの少しだけ反応が遅れ、防御が間に合わなかった。


「うぐっ!」

「僕の勝ちだね。」

「そうだな。……つつ。」

「あ、大丈夫!? ごめん、レント。ひょっとして強く打ち過ぎちゃった!?」

「大丈夫大丈夫。これくらいなんて事ないよ。それよりも、俺も魔力障壁を準備していたんだけど、まだまだ実戦で使うまでの域には到達してないんだよなぁ。間に合わなかったし。」

「こればっかりは練習するしかないからね。」

「そうなんだけど、戦いながらだと尚のこと意識の集中がむずいんだよな。この上で身体強化も併用するとなると……先は長いな。」

「そうだね。一緒にがんばろう。」

「ああ。んじゃ、第2戦も行きますか。みんなもそれぞれの相手とまだ戦ってるし、さっきのもそこまで時間かかってないしな。」

「オッケー。次も僕が勝たせてもらうからね。」

「いいや、次は俺が勝つさ。」


一旦距離を取った後、再び模擬戦開始だ。

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