第761話 だけの話なんだけどな。的なお話
すぐに向かうと言っていたアデラードさんが全然戻ってこないんだけど……。
一体何をしていることやら。
「ごめんね〜。フランがお土産を今から作るとか言い出すからちょっと時間が掛かっちゃってさ。」
「なら自分だけ先に行けば良かったじゃない。」
わずか30分足らずの間に何があったのだろうか?
なんか、随分と仲良くなっている気がするんだけど。
「一応アリシア様の眷属だから1人にしておけなかっただけだよ。」
「一応って何よ! れっきとした、アリシア様の眷属よ!」
本当に、何があったんだろう……?
フランも、いつの間にか大きく育ってしまっているし……。
いや、よくよく考えれば、あのちっこい姿のまま買い物とかできるはずないんだしこういう姿になれるとしても不思議ではないんだけどさ。
……って、あれ?
「フラン。なんか、髪の感じ変わってない? 毛先が少し色変わってるんだけど。」
「え? あ、本当だ? なんでだろ?」
「自分で分からないのか?」
「そんなの分かるわけないじゃない。神の眷属はこんな事をすると髪の色が変わりますよ〜なんて話知るわけないじゃない。」
「まあ、そもそもそうホイホイ神の眷属と遭遇するわけないしそういう話が出る事もないだろうしな。でも、他の眷属から話とか聞いた事ないのか?」
「生まれてからすぐに眠りについたのに、そんなのあると思う?」
「それもそうだな。」
フランはお役目についてすぐに500年も眠ってた可哀想な子。
その事を忘れてはならない。
名前もセフィアがつけたくらいだし。
「と、それでそのお土産だけど、フランが作ったってそれ本当?」
「本当に決まってるじゃない。」
「普通お土産って、完成品だよな?」
例外もあるけど。
ご当地ラーメンみたいなある程度調理が進んでいて後は購入者なりお土産をもらった人なりが作ったりするし。
「その、実は色々見て回っていたらお金がなくなっちゃって……それで適当に仕事をしたんだけど、そこが丁度これを作ってる所で……仕事してる間に覚えちゃったの。丁度いいから材料買って作ろうかなって思ったの。」
「そうだったのか。こんなに長くなると思わなかったからな……もう少し多く渡しておけば良かったな。」
「いやいや、そんな事ないよ! 実際に働いてみてお金の価値を知って、あれがそんなに安いものじゃないって知ったから!」
「気にしなくていいぞ。というか、俺達が普段からアリシアさんから色々してもらってるからな……ここでその分を返しているだけだから。」
本当に、色々してもらってるし、この剣とか値段つけられないだろ。
こんな恩にどう報いればいいのか分からない。
その分をフランに返すくらい、別にいいだろ?
「それに、俺の故郷にはこんな言葉があるしな。『情けは人の為ならず』これは人にいいことするとそれが巡り巡って自分に返ってくるって意味だ。だからそんな気にしなくていいぞ。」
ま、それでいい事をしてもらった人が誰かにいい事をして、それが巡って……みたいな感じで色んなところを徳が巡って周りが幸せになればいいなとは思ってるけどな。
「そ、そう?」
「そうだ。それに、そろそろ食おうぜ。もう腹ペコだよ。」
「そ、それもそうね。今持ってくから。」
そうして出された謎の料理。
ぱっと見はメンチカツかコロッケのような見た目だな。
衣は荒削りのやつを使っているのかサクサク感が凄そうだ。
では早速……。
「いただきます。」
ザクリと。
噛んだ時の音がいい。
そして味も、一噛みしただけでプリッとした肉質にジューシーな肉汁が溢れる。
そして甘辛い味がまた一口、もう一口と誘ってくる。
端的に言って……
「美味い!」
「良かった……。」
「これすげー美味いよ! サンキューなフラン!」
「どういたしまして。」
フランが作ってくれたなんとかって料理とアデラードさん家の夕食。
どちらも美味しくエリュシオン邸最後の夕食は最高のものとなった。
ま、またその内泊まるだろうけど、ひとまずは最後ってだけの話なんだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます