第757話 さーて、やるぞー。的なお話

頭を冷やしがてらお昼にしよう。

こういう時愛妻弁当があればよかったんだけど、残念ながら今日は無し。

だから寂しく出来合いの物でも……


「って、リゼットさん!? いつからそこに!?」

「1時間ほど前からです。」

「そんな前から!?」

「一度声をおかけしたのですが、集中していたようでしたので、工房主に一声掛け、食堂で待たせてもらいました。」

「そうだったんだ……というか気付けよ俺。と、ところで、何か用ですか?」

「ああ、これをどうぞ。お弁当を持ってきました。」

「あ、これはどうも。これ誰が?」

「僭越ながら私が作らさせてもらいました。皆様には魔道具作りを楽しんでもらうため、私が作らさせてもらいました。」

「ああ、そうなんだ。」

「はい。なので、レント様のことを忘れていたわけでは無いので安心してください。」


別にそれは気にしてないし!

ただちょっと、愛妻弁当じゃないのが残念だっただけだし!


リゼットさんの弁当は美味しかった。

メシマズ系では無いようで普通に美味しかった。

材料が高級なのだろう気がするけど、それを聞くのはどうかと思うし、気にしてはいけない。

というか、もしも聞いて本当に高額な食材とか使ってたら申し訳なさが出てきそうだ。


食べ終わった弁当箱をリゼットさんに返して俺は再び鍛治作業へと戻る。

お昼を食べたからなのか、ちょっとだけいい考えが浮かんだ。

……いい考えだよね?

ま、とりあえず試してみればいいか。


ひたすらに槌を振り、鉄を打っていると後ろの方でゴトンという音が聞こえた気がする。

だが、ここで他のことに意識を向けてしまうと作業がおろそかになるし、鉄が冷えてしまう。

だから、ちょっと気になるけど今はこっちに集中。


そうして出来上がった槍は軽く炎をイメージした形状をしている。

そして重要なのが、ちょっと思いついたということ。

それは穴。

某無双ゲームの武器とかだと穴というか、隙間があったりする。

それをふと思い出して、真似をしてみた。

少なくとも空けたスペース分の重量は省くことができるからな。


まあ、これだとほんの少しばかし強度に不安があるんだけど、あくまでも実験用で実戦用ではないからな。

これで問題ないはずだ。

後は柄の加工。

この仕事、意外と早く終わるかな?



そう思ってた時期がありました。

柄の加工、結構難航してます。

術液を入れる加工だけど、棒状に加工するのならば問題ないんだよ。

でも、中の一部だけを空洞にするとなると話は変わる。

そもそも槌でどうやって中に空洞作るんだよ……分からない。

それに魔石を嵌める枠を用意するというのも、どのサイズが魔道具として必要なのか分からないと作りようが無い。

現状では積んだ。


仕方ない。

柄作りは一旦置いといて、ゴトンという音の正体でも確認しておこうか。

そう思って振り返ると何かのインゴットが積まれていた。

えーと、何があったの?

パッと見では普通の鉄では無いように見えるけど……あ、もしかして適当に見繕ってみるって言っていたやつかな?


とりあえず、1つを手に取ってみる。

そうして持ってみたインゴットは見た目から想像していた重さよりも軽いものだった。

どうやら、ここにあるのは鉄よりも軽い金属らしいな。

グラハムさんに感謝だ。

後でインゴットの代金を払わないとな。


でも今は、これらを使って槍の穂先を作ろうか。

これなら、もう少し大きくてもいいと思う。

さーて、やるぞー。

さっきまで作業していてたからあまり時間が残っていないけど。

それでもそれなりには形になるんじゃないかな。

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