第758話 互いに微笑み合う。的なお話
作るのはブレードランスとでも言うのだろうか?
なんかこう、槍なんだけど剣のように斬る事も出来る奴。
まあ、俺は基本、そういうのの方がいいと思ってるけどさ。
だって、ただ突くだけの槍よりも斬る事も出来る方が戦い方に幅が出てやりやすいと思うんだよ。
それに、そっちの方が薄いから重さも減って扱いやすそうだし。
後は……そっちの方がかっこいいと思うから。
そんな槍をイメージして作っていく。
若干中二っぽい気がしないでもないが、ここは中二ワールドとも言うべきマジもんのファンタジー世界。
それくらい気にしないし、してはいけない。
じゃないと、詠唱とか辛くなるし。
出来上がった槍はおおよそイメージ通りの出来栄え。
しかし、打っている時になんとなく気づいてはいたけど、どうもこの金属は柔らかめなようだ。
大きさを手に入れた代わりに脆くなるとは……ままならないものだな。
グラハムさんが用意してくれた金属はこれ以外の種類もある。
次は別のインゴットを使ってみようか。
ひょっとしたら軽さと硬さを両立させている金属もあるかもしれないし。
「あ……レント! 迎えに来たよ!」
「ん? セフィア!? どうしてここに!?」
「朝言ってたじゃない。アデラードさんの家に泊まるなら連絡してって。」
「あ、そういえばそうだった……。ってことは何か? 今日も泊めてもらうの?」
「うん。あ、でも流石にお世話になりすぎだし宿の事もあるから明日からはまたレイランに泊まろうって事になったから。」
「そうか。まあ、あんまり長居すると普通の宿に戻れなくなりそうだしな。」
あれはやばい。
頼めばなんでもしてくれるから、堕落してしまいそうになる。
あ、エッチなのは頼まないよ。
事足りてるし。
メイドさんに頼りきりにならないように自制しないといけない。
そういう意味でも宿に戻るというのは賛成だ。
「そんなわけで、また時間を忘れて作業しているだろうレントを僕が迎えに来たわけだよ、レント君。」
「それはまたお手数おかけします。」
「「ぷっ……あははは!」」
「はは……ふぅ。じゃあ俺は片付けをするから少し待っててくれ。」
「はーい。」
セフィアの芝居掛かったセリフにノって答えた後、顔を見合わせて笑ってしまった。
教師と教え子みたいなおふざけが割と楽しかったというか、セフィアとおふざけが出来たのが嬉しかったというか……。
鍛治道具一式をストレージにしまい、グラハムさんに挨拶をしてから店を出る。
もちろん隣にはセフィア。
「調子はどう? 上手く出来そう?」
「全然だよ。まだ素材の選択の段階だし、束の方も技術的な面で悩んでる。ま、気長にやるよ。別に仕事の依頼されたわけじゃないしね。」
「そっか。」
エリュシオン邸に向かう道中、セフィアと2人きりで歩く。
こうしてセフィアと2人きりってのは随分と久しぶりな気がする。
他のみんなにもそれぞれ違った良さがあるけど、セフィアはなんというか、一緒にいると癒されるというか落ち着く。
何も話をしなくてもただ一緒にいるだけで心地いい気分になる。
それがなんとも幸せなのだ。
「あ、もう着いちゃう……。」
何の気なしに言ったのだろうセフィアの、そんなつぶやきが耳に届いた。
「あ……ごめんね。なんか、こうして2人きりってのが久しぶりだったから、それが終わるのがちょっと残念だなって思っちゃったの。」
「セフィア……俺もだよ。」
2人きりの時間が良いと思っていたのは俺だけじゃなかったようだ。
それが嬉しくて、気付けば俺はセフィアの頬に手を当てていた。
「セフィア……。」
「レント……。」
そっと目を閉じるセフィア。
俺はそんなセフィアに顔を近づけていき軽く唇を合わせる。
何度となくしてきたキス。
しかし、何度繰り返しても嬉しさで心が弾む。
そして、その度にセフィアに対する愛おしさが増していくのだ。
ほんの数秒……いや、2秒かそこら。
そんな短い時間は終わり、互いに微笑み合う。
「じゃあ、行こうか。」
「うん!」
心を通じあわせた。
だからもう残念だという気持ちはない。
手を繋いでエリュシオン邸へ向かおう……
ーーベシッ!
そう思った矢先、小さい何かが頭にぶつかって来た。
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