第756話 ……一旦休憩して頭冷やそう。的なお話
朝起きて朝食を戴いた俺は挨拶もそこそこにすぐにグラハム武具店に向かおうと思う。
「あ、そうだ。もしもまたここに泊まる事になったら連絡お願い。」
「あ、そうだね。うん、分かった。もしもそうなったら言いに行くね。」
「頼んだ。」
エリュシオン邸を出る俺を見送ってくれるセフィア達。
俺はセフィアに連絡してくれるようにお願いしてからグラハム武具店に行く。
「軽い金属ってありませんか?」
「いきなりどうした?」
「昨日のあれが重過ぎましたから。だから軽いので何か無いかなって思いまして。」
グラハム武具店に着いたら早速聞いてみた。
「そうだなぁ……いっその事魔物素材を使ってみるのはどうだ? 物によってはその辺の金属よりも軽くて丈夫なのがあるぞ?」
「魔物素材ですか……俺使った事ないんですよね。正直に言ってちゃんと出来る自信無いです。」
「あー、そうなのか。んじゃどうすっかなぁ……教えようにも今は忙しいし。」
「一応聞きますけど、魔物素材って普通に形を削り出したりするだけじゃダメですかね?」
「それでなんとかなるやつもあるが、基本は魔物毎に加工方法が違う。ヘビィメタルビートルは金属と同じように加工出来るが虫系魔物のリーパースタグって魔物は特殊な溶液に浸すとハサミや甲殻が柔らかくなり別の溶液に浸す事で元の硬さになったりする。」
スタグって、なんだ?
スタ具?
スタミナのつく具?
「他には熱を加えると別の素材にくっつくようになったり、砕いて水に溶かし、形を作ってから冷やすと固まるものがあったりするな。」
魔物って、不思議だなぁ〜と思いました。
マル。
…………というか何!?
冷やすと固まるって凍ってるの!?
それ以前に他の素材にくっつくって接着剤!?
全然意味がわかんない!
まださっきのスタグとかいうのの方がマシだったよ!
「とりあえず今は金属だけで頑張ってみます。」
「そうか。ま、何か分かんないことがあれば聞いてくれ。ひとまず適当に見繕ってみるわ。」
魔物素材はよく分からん。
だから魔物素材は使わない。
気を取り直して作業を始めよう。
軽い金属で真っ先に浮かぶのはアルミかな、やっぱ。
でもアルミってよく分かんないんだよな。
鉄とか銅、金銀なんかは鉱山から採れるってのは漫画やゲームなんかであったけどさ、アルミの鉱山なんてのは聞いたことない。
なんかでボーキサイトがどうのって見たことあるけど、あれってなんなの?
そもそもボーキサイトって何さ?
そんなわけでアルミは無理!
魔法世界の魔法的な金属を期待したけど、そっちはグラハムさん任せだな。
となると、俺に出来るのは形状の加工くらいだな。
ベタなのだと薄くしたり幅を狭める、かな。
まずはこの2つを試してみるか。
◇
ガンガンと鉄を打ち形を作っていく。
昨日のよりも薄く、そして細く。
そうして出来たのを研ぎ柄と合わせる。
噴出口はまた後で考えるとして、今は普通に石突きにして完成させる。
それだけで結構な時間が掛かってしまった。
出来上がった槍を試しに振ってみる。
俺に槍スキルは無いが、試し振りする分には関係ないだろう。
突き、突き、払い、回っての振り下ろし。
ステータスの関係もあり軽々と振ることが出来た。
出来たんだが……。
「これ、どっからどう見ても普通の槍だよな。」
軽量化を図りに図った結果、ちょっとばかり穂先が大きいけど、普通の槍になってしまった。
当初の予定からかなり遠ざかってしまったよ。
……一旦休憩して頭冷やそう。
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