第748話 魔道具な槍とかワクワクするね。的なお話

リゼットさんが持って来たお茶とお菓子をのんびりと楽しむ。

やっぱり貴族が飲む紅茶は美味しいな。

これ俺も手にいれることってできないかな?


「リゼットさん。このお茶だけど、どこの?」


このくらいの口調なら、多分大丈夫。

命令口調にはなっていないけど、敬語ではないしね。


「これはグリンゼル伯爵領の特産品のルビーレッドのロイヤルリーフです。ロイヤルリーフは上質な木の中でも特に高品質の物のみを厳選しており、普通の物よりも薫り高く、雑味がなくスッキリとした味わいが特徴です。」

「これって、俺でも手に入れられる?」

「それは厳しいですね。グリンゼル伯爵領はこのグラキアリス王国の北方に位置し、そこからここまで商いをしようとする商人はあまりおりません。ここは冒険者が多いですから、紅茶を嗜む者が少ないですしね。」


言われてみれば納得できる話。

どうせ売るなら貴族が多くいるであろう王都の方がいいに決まっている。

ここにも貴族はそれなりにいるけど、王都には劣るだろう。

どっちが儲かりそうかと言えば、誰が考えったって王都を選ぶはずだ。

こっちを選んだらそいつは商才がない。


「ですが、当家にあるものを譲ることなら可能です。少ないですが。」

「本当ですか!?」

「言葉使い、戻ってますよ?」

「あ……。」

「ふふっ……今お包みしますね。」

「おね……頼む。」


癖でお願いしますって言いそうになった。

言葉使いに気を使うのって疲れる……。


「では、こちらをどうぞ。」

「ありがとう。」


紅茶を受け取り、気不味さというか、気恥ずかしさから何かを言うということもなく、お茶とお菓子を静かに頂いていると、待っていたカンナさんがやっと来てくれた。

助かった……。

さっきの一件以降、何故かリゼットさんが優しい目で見てくるから、落ち着かなかったんだよ。


「私に用という事ですが、何かありましたか?」

「魔道具に関してちょっと話があってね。レイダさん。」

「はい。槍に推進機構を取り付けたいと思ったのですが、それは可能なのでしょうか?」

「え? 推進機構? どういう……? というか、それって何の意味が……?」

「吶喊……いえ、突撃の際に推進機構があればより高速での攻撃が出来るのではと思ったので。」

「あ、なるほど。でもそれって危なくないかな?」

「かもしれませんが、まずは出来るかどうか、試してはみませんか? 無理でも構いませんから。荒唐無稽な事だとは理解していますし。」

「そう……ですね。となると、推進力にはやっぱり火がいいかな? でも、風の方が安全かな? あ、レイダさんって魔法は?」

「火がメインですね。」

「となると、火の方がいいのか。場所はやっぱり石突きの部分がいいかな。」


そういえば、今話しているのって、両方奴隷なんだよな。

身分的には。

なんだか、新鮮だな。

周りに奴隷を連れている人なんていなかったし。


「ちょっと、構想を練ってみようと思いますね。詳しい事はまた後日になるけど。」

「分かりました。」


どうやら話はまとまったみたいだ。

でもその話、俺を混ぜてくれても良かったんだよ?

レイダさんの意見だからレイダさんから言うように促したんだけど、失敗だったかな?

いやいや、お互い奴隷という立場だからこそ対等に話ができていたんだ。

そこで俺が混ざるとめんどくさい事になるしこれで良かったんだ。

そういう事にしておこう。

それに、実際に作るとなると、槍が必要になる。

それも、その機構を作るのに適した形状の槍が。

鍛治師に直接発注する必要があるけど、物が変わっている為に引き受けてくれるか分からない。

しかーし!

ここに鍛治が出来て事情を知っている人間がいる。

普通に考えて俺も協力する事になるだろう。

ならば協力要請が来るまで待っていよう。

魔道具な槍とかワクワクするね。

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