第749話 理解できる気がしない。的なお話
一応の目的も果たした事だし、そろそろ帰ろうかな。
俺のアクセサリーの話はできていないけど、複数の案件を同時に持ち込んでもカンナさんが困るだけだろうし。
アクセサリーの件はまた今度でいいよね。
シルヴィアさんにはもう少し待ってもらう事になりそうだけど。
「さて、それじゃ俺達はそろそ…「皆様、本日はこのまま当家に宿泊してはどうでしょう?」…はい?」
そろそろ帰ろうかなと言おうとしたところで何故かリゼットさんがそんな事を言ってきた。
「いや、そんな事勝手に決めていいんですか? アデラードさんとかミストレーニアさんとかに聞かないと……。」
「構いません。レント様達ならばいつでも泊めて良いとアデラード様から言付かっておりますので。」
「そ、そうですか……。」
それでいいのか男爵?
いや、信頼されているのだと思おう。
少々不用心な気もするが、まあ、本人があれだけ強いんだもんね。
俺が心配する事じゃないか。
……………………今は、ね。
いつか、心配できるだけの強さを手に入れて見せるさ。
「みんなはどうする?」
「最近はアデラードさんも忙しそうだけど、泊まれば一緒に居られるし、いいと思うよ。」
セフィアがすごく優しいこと言ってる!
やっぱり俺の嫁はんは最高や!
なんか、関西弁になっちゃった。
みんなも特に反対意見はないようで、リゼットさんの申し出を受けてこのまま泊まらせてもらう事にしよう。
蒼井の奴はまあ、理由がちょいあれだったけど。
貴族の美味しいご飯が食べたいだからな。
「では、私供は宿泊の準備をさせていただきます。レント様達はカンナに魔道具作製に関して教わってみてはどうでしょう? どうやらご興味があるご様子でしたので。」
「あ、いいですね。カンナさん、いいかな?」
「えっと、皆様が希望されるのでしたら、僭越ながらもご教授させていただきますが。」
「では是非お願いします。」
◇
「基本的に魔道具とは素体となる道具と効果を発揮する術式、術式を構築する術液、そして動力源となる魔石から構成されます。」
カンナさんに案内されたのはエリュシオン邸にある工房部。
ここは元々アデラードさんが魔道具を作成したりする時に使用する専用の工房で、カンナさんはそこを使わせてもらっているそうだ。
ちなみに、アデラードさんは他にもポーション、錬金術、工作等の専用の工房があるそうだ。
家人がアデラードさんと使用人しかいないからこそ出来る建築様式だとさ。
それは同情したほうがいいのだろうか?
「術液とは極小の魔石を砕き粉末状にした物、金属の粉末を溶かした術式を描くための溶液の事です。他にも材料はありますが、基本はこれで作ることができます。魔石と金属はどちらも魔力を流す為に必要です。ただ、魔石は極小のものでなければなりません。ある程度の大きさの物を使うと、砕く際に爆発をする危険性がありますから。」
魔石怖い。
「そして肝心の術式ですが、こちらはかなり難解でして、大抵の人はここで躓きます。術式には効果を発揮させる術式文字を用いるのですが、これが酷く曖昧なもので……例えば明かりを表す言葉としてチカチカ、ピカピカ、キラキラ、ギラギラ、といった物がありますが、術式文字はそれに近く、範囲も曖昧な専用の単語が段階毎にあり、また、それを少し、ちょっと、かなり、たくさん、といった曖昧な単語で調整します。あくまでもこれは例えですが。感覚的にはこれが1番近いです。」
え?
何それ?
えーと、例えば、キラキラが15の光量で、そこにちょっとが3でそれをプラスすることで18に調節する……みたいな?
難しすぎるだろ……。
「これらの単語を術液で繋ぎ効果を発揮させていきます。後は魔石と術液で繋ぐことで完成となります。これが基本的な魔道具の構成です。では、今から実演しますね。」
実演してくれるそうだけど……理解できる気がしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます