第746話 ちょっと憧れるだけに残念だ。的なお話

セフィアがしたいと言っていた食材の補充をするために街の中を歩く。

最初の目的地は八百屋さん。

まだまだストレージ内に溜まっているけどいざという時に無いなんてことがないように小まめに補充している。

基本的には使ったら使った分だけ補充って感じだな。

嫁さんが真面目で助かります。

俺だと多分無くなってまた後で補充しようと考えてそのまま忘れて、結局使えず、また忘れてを数回繰り返しそうだし。

……流石に忘れすぎか?

いやいや、多分他の事を色々している内に忘れてしまうのだ。

短期記憶と長期記憶がどうのこうのって昔テレビで見た。

その関係なんだろう。

詳しくは覚えてないけど。


「こんにちはー。」

「おやいらっしゃい。今日は何が欲しいんだい?」

「えっとですね……」


セフィアが色々と注文し、俺達がそれを受け取る。

今回使ったのは5人分だからこれまでよりかは少ない。


「今回は少ないけど、どうかしたんかい? 何か悩み事があるなら相談に乗るよ?」

「いえいえ、今回は仕事をしたのが5人だけだったのでその分少ないだけです。なので心配ありません。」

「そうかい。それなら良かったよ。」


随分と仲がいいんだな。

だがそれもセフィアなら分かる気がする。

リリンだとこうはいかないだろう。

リリンが悪いわけじゃない。

むしろそこがかわいいと思うけど、やっぱり言葉数が少ないから慣れが必要。

口数は少なくないけど。


「そういえば、レントの悪い噂を流そうとした冒険者がいたらしいんですけど、どんな噂か聞いていますか?」

「そんな輩が居たんかい? 悪いがそんな噂は聞かないね〜。」

「そうなんですか。」


おや?

なんかそんな話をしてたって言ってたんだけど……別の店かな?


「今度そんな奴見かけたらとっちめておくよ。」

「あははは、無茶はしないでくださいよ。」

「無理そうなら旦那に任せるさ。」


いや、旦那さんでも駄目だろう……。

とはいえ、その気持ちだけはありがたい。


八百屋を後にして肉屋に向かっていると。


「さっきのだけど、八百屋のおばちゃんに言ってたんじゃなくて、冒険者に言ってたのよ。その冒険者はそう言っているのを聞いたことがあるって言って話を聞かなかったのよ。」

「あー、そういう事か。」


冒険者が相手にしなかったから八百屋のおばちゃんにまで話がいかなかったということか。

その冒険者もおばちゃんの話を事前に聞いていたと。

俺達、噂されるレベルなのか?


気になってた事も解決した事だし、後はセフィア達についていくだけだな。

そう考えていたら、ふと気づく。

なんか、周りに冒険者多くね?

それも、ベテランというほどではなく、かといって新人というわけでもない中途半端な雰囲気の連中ばかり。

何故だろうか?

うーむ。

分からん。


「あ、レントさん! お久しぶりです!」

「ん? えーと……あ、レミナさん、だよね?」

「はい。」

「お久しぶりです。私の名前は覚えていますか?」

「えーと……ごめん。思い出せない。」

「そんなに会っていたわけではないですし、仕方ないですよ。私の名前はシンシアです。で、これがラックスです。」

「おい。流石にこれは酷くないか?」

「これの事は置いといて、レントさん達は今日はどうしたんですか?」


ラックス君が抗議しているけど、いいのか?


「えっと、森の方で依頼を受けてたからその時に使った食材の補充してる。あ、そういえば、3人はこれの理由分かる? さっきから冒険者が多くてちょっと気になったんだよね。」

「ああ、それなら、狩猟大会で儲けたお金でどこの武器を買おうか今から選んでいるんですよ。儲けてからだと他の冒険者も押し掛けるだろうから今の内に目星をつけようとしているんです。」

「成る程。今回はDランク相当。Dランクっていうと一人前として認められる頃だし、贔屓の店を持ち始めてもおかしくないのか。」

「ですです。私達もそう思って探しているんですけど、何処かオススメの店とかありませんか?」

「ごめん。その期待には答えられそうにない。俺達が利用してるのはギルド公認店のグラハム武具店で、しかもだいたい作業場を貸してもらうくらいだから、オススメの店とかはないんだ。でも、グラハム武具店の店主はドワーフだから技術は間違い無いと思う。」

「そうですか。分かりました。今から行ってみます。」

「店はギルドの近くだから。気をつけていけよ。」

「はい! ほら、行くよラックス。」


そう行って歩いて行くレミナさん達。

それを見送った後、残りの買い物も済ませてから宿に帰った。


しかし、やはりある程度の冒険者になると贔屓にする武器屋とか持つようになるんだな。

全員アリシアさん謹製品の俺達にはそれは無理そうだな。

ちょっと憧れるだけに残念だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る