第732話 今は野営場所を探そう。的なお話

俺達が相対したのはローグパンサーと思われる魔物。

初見の魔物ながら、その名前から隠密性と俊敏性に優れた魔物だと思われる。

ローグとはならず者を表す言葉だが、こういう世界においては盗賊系統を意味する言葉でもある。

そしてブラックパンサーのような見た目。

この2つの事からこの魔物は深き森の中、木の中に潜み、無警戒な獲物へと襲い掛かり瞬時に首をへし折る生粋のハンターだと思われる。


何故思われるなのか。

まともに戦闘してないから。

シアが牽制のために放った一矢をジャンプで躱し、そのまま襲いかかろうとしてきたけれどそこをセフィアがジャンプをしながらシュパッと首を斬り飛ばしちゃったからだ。

弱いね。

まともな戦闘になってないよ。

いや、暗殺のような戦い方が基本だからきっとまともな戦闘は不得手なのだろう。

専門が違う感じでさ。


さて、一番の懸念材料だった初見の魔物であるローグパンサーをあっさりと屠ったわけだし、後はブラックローラー探して倒すだけだな。

そういえば、なんでブラックローラーなんか依頼にあるんだろうか?

ヘビィコングやブラックパンサーは毛皮とか剥製とかそう言ったものに使われるだろうし、皮や爪、牙なんかも使われるんだろう。

しかしブラックローラーはなぁ……虫だし、何に使うんだろう?

やっぱ、防具かな?


どうでもいいことを考えていてもちゃんと探索は続けている。

次は何が出てくるのかな。

ブラックローラーだとありがたいんだけど、そうはならないよな。

と、その時視界の端に半円状のシルエットを見る。

それと同時にリリンからの魔物宣言。

まさか本当にブラックローラー!?


「あれは……アシッドキャタピラーね。ランクは確かDだったはずよ。」


違う虫だった。

シア曰く、酸を吐き出す芋虫で十字蛾の上位種である酸殻蛾の幼虫との事。

酸殻蛾になるとランクはBへと至るらしい。

硬い甲殻にその身を鎧い、翅も非常に鋭く刃の様になっていて強酸の弾丸を放つ。

もちろん鱗粉も強酸性だそうで不用意に近づいた獲物をグズグズに溶かしてそれを貪るそうだ。

何それグロ恐い。


「燃えとけ!」


酸液が偶に依頼で求められたりするらしいが今回はその依頼を受けてないし、何より近づきたくないので離れた位置から燃やします。


「ギィィィィィィ!」


うわっ!

酸が蒸発して刺激臭がめっちゃしてくる。

これはキツイ。

というわけでさっさと立ち去ろう。

火事にならないように水をかけて消火したらすぐに立ち去る。

素材になるところはない魔物だし。


次に遭遇したのはリザードマンの群れ。

その数は20とそこそこ多い。

数は力だ。

こっちは普段の半分の人数しかおらず敵は4倍の数となっている。

普通なら絶体絶命のはずなのだが、相手との力量差があり過ぎるせいで余裕綽々、鎧袖一触であっという間に殲滅完了してしまった。

これならハードジャイアントも勝てるんじゃないか?

いや、楽観視はあまり良くない。

ちゃんと作戦を立てて行動しないと痛い目見る。

痛い目見るだけならまだいいが、死んだりしたら取り返しがつかない。

だから、たとえ余裕がある戦闘だったとしても油断はしてはいけない。


その後も探索を続けたが、残念なことに今日はブラックローラーを見つけることができなかった。

そろそろ深部だし、何か考えないといけないかも。

このまま深部へと進んでハードジャイアントと運よく遭遇するも戦闘による疲労で撤退し依頼達成できなかったとなるのは困る。

かといってブラックローラーを探し歩いたがなかなか見つからず、見つかった時には数日が経ち依頼達成の報告をしないといけなくなりハードジャイアントとは戦えませんでしたというのは、本来の目的から離れてしまう。

それはそれで嫌だ。

二兎を追う者は一兎をも得ずという言葉があるが、それでも俺は二兎を得たい。

その為にはブラックローラーに関する情報が欲しいところ。

しかし、こんな所では何か知ることなど出来るはずもなく、為すがままに、自然の流れに身をまかせるしかないわけで。

ま、その辺はみんなと相談してから考えよう。

今は野営場所を探そう。

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