第693話 この人俺の婚約者だと言いたくなるな。的なお話
「よく来たね。早速で悪いんだけど、衣装を用意したからすぐに着替えてくれるかな? 最終調整しないといけないしさ。」
「「分かりました。」」
玄関をくぐって早々にアデラードさんがそんなことを言って来た。
休む暇なしか。
まあ、時間もあまり無いし仕方ないけど。
そんなわけで普段泊めてもらう時に使う部屋で着替えさせてもらうのだが……。
「あの、ミストさん……でしたっけ? 何故ここにいるのでしょうか?」
「お着替えのお手伝いをするようアデラード様より仰せつかっております。それと、私の名前はミストレーニアと言います。以後、お見知り置きを。」
「はぁ……。じゃなくて、なんで着替えに手伝いがあるんですか?」
「パーティー衣装には不慣れであろうというアデラード様の心遣いです。」
「それは確かに……でも、さすがに恥ずかしいですよ。」
「大丈夫です。私は恥ずかしくありませんから。」
「全然大丈夫じゃない!」
戸惑う俺をよそにミストレーニアさんは俺に近づくと目にも留まらぬ速さで俺の服を脱がしてしまう。
いつの間に!?
「リーンヴァーリン式メイド術、霞剥ぎです。」
リーンヴァーリン式メイド術!?
異世界にはそんな流派が!?
「次は服を着せていきますので、あまり動かないでくださいね。動かれますと、死にますよ?」
「死!? どんな着せ方!? 怖いですけど!? なんかよく分かんないけど、スッゲー怖いんですけど!?」
「いざ、リーンヴァーリン式メイド術、
これまたあっという間に俺は服を着せられる。
その間俺は微動だにすることができなかった。
というか、死ぬと言われて動こうとする奴なんているのか?
「ちなみにこの技は、リーンヴァーリン式メイド暗殺術、朧葬儀が原型となっております。服を着せる際に襟を用いて対象の首を絞めて殺すというものです。」
「怖っ! リーンヴァーリン式怖っ!」
異世界メイドは半端ない。
「如何でしょうか? どこか不備などがあれば正直におっしゃってください。すぐに直しますので。」
「あ……いえ、特にはないと、思いますよ?」
姿見で自分の服装を確認してみると、タキシードをベースとして各部に金色の装飾に禁止による刺繍などが施されており、また、服自体の形状も所々変更され華やかな物になっている。
「では次にアクセサリーを選びましょうか。何かご希望などはございますか?」
「あ、それなんですけど、これを使いたいんですけど。」
「かしこまりました。では付けさせていただきますので動かないでくださいね。」
俺が買ったアクセサリーはブローチだ。
それを1番見栄えのよくなる位置へと付けてもらって着替えが終了する。
時間は……5分!?
会話なんかもあったのに、たったの5分とか、恐るべし、リーンヴァーリン式メイド術。
部屋を出てミストレーニアさんの案内の元アデラードさんのいるところへ向かうと、そこにはこの前の奴隷市の時とはまた違ったドレスを着ているアデラードさんがいた。
今回のアデラードさんは髪の毛をサイドアップにし、髪留めには細かな細工のある髪留めを使っている。
ドレスの留め具も宝石を用いており、煌びやかさをプラスしていて、これまたよく似合っている。
「かわいいです、アデラードさん。」
「ありがと。レントもよく似合ってるよ。頑張って作った甲斐あったよ。」
「作った? 今作ったって言いましたか?」
「うん。言ったよ。レントの体格に近い人がいなくてね。仕方ないから私が全部作ったの。お陰でギリギリになっちゃってね。なんとか時間内に完成してよかったよ。」
前々から思ってたけど、本当にとんでもない人だ。
多才の域を超えてもはやチートレベルだと思う。
400年の研鑽は只人である俺には到底理解の及ばない領域にあるのかもしれない。
それはもちろん戦闘面でも。
だけど、諦めずに追いかけ続けようと思う。
それが俺に出来るアデラードさんへの愛情表現なのだから。
それはそれとして、改めてアデラードさんを見る。
うん。
やっぱりかわいいな。
言わないけど、この人俺の婚約者だと言いたくなるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます