第674話 なんだってやってやるんだから! 的なお話
〜アカネ視点〜
朝になった。
昨日アデラードさんが強引に決めたけど、レントとデートをする日だ。
正直急なことで服とか全然考えてなくて昨日慌てて決めた。
せめて準備時間をくれていればもう少しマシな服とか、かわいいアクセサリーとかも用意できたのに。
少なくとも、こんな動きやすそうな服は選ばなかった。
でも、私こんなのしか持ってないししょうがないじゃない。
お父さん達急に来るから告白も突発的なものになっちゃって、服とか全然考えてなかったのよ!
本当はもう少し友達気分を味わって、それから念入りに準備して告白するつもりだったんだもの!
全部お父さんが悪い!
ーーコンコン
「アカネちゃん。僕だけど、レントはさっき出かけたよ。」
「教えてくれてありがとう。私も今から行くわね。」
セフィアがレントが宿を出たことを教えてくれる。
それに対して、部屋のドアを開けながらお礼を言いながら待ち合わせ場所へと向かう。
この話は昨日セフィア達にお願いしたことだ。
前世の時にこんなデートがしたいと考えたことがあった。
きっかけはなんてことない。
漫画を読んでふと自分がデートすることになったらどうするかと思っただけの話。
その時はブランド品を買ってもらったり、夜景の見える高級レストランでディナーなんて、背伸びしたものは考えなくて、もっと身の丈に合っていて、素の自分を見せられるデートがしたいと考えていた。
当時はまだ中学生なりたてだったからお小遣いなんて3000円でお金をかける事は避けていた。
だから、ちょっと奮発して映画を見て、近くのファストフードで食事をして、ゲームセンターや古本屋でお金をあまりかけずに話しながら楽しんで、最後にお気に入りの場所で夕陽を見る。
その時に、ファーストキスを……なんて考えていたけど、そのどれもが実践出来そうにない。
もちろん、いくつか代用できそうな所はあるけど、それは好きな人とのデートではなく、恋人とのデートって考えていたから、次の時まで取っておこう。
でも、これだけはやってもいいよね?
いかにもなデートのど定番。
だからこそ、やりたかった。
「遅れてごめーん! 待った?」
それを聞いたレントが振り返って、こう返してくれた。
「いや、俺も今来たところだよ。」
さて、デートを始めよう。
〜レント視点〜
デートをするならば、まず最初に相手を褒めるべきだろう。
義務とか定石だからと言う理由もあるのだろうが、今回はそんな事関係なしに、普通に似合っている。
だからこう言う。
「その格好、似合ってるな。」
「え、そ、そうかな? ありがと。本当は、もっとかわいい格好が良かったんだけど、準備する時間がなくて……。」
「急な話だし仕方ないだろ。でも似合ってるんだしなんの問題もないだろ? アカネは元々かわいいんだからさ。」
「い、いきなり何言ってんのよ!」
「いや、主観的にも客観的にもかわいいから言ってるんだが……。」
「馬鹿……普段からそれくらい言いなさいよ。……それよりも、早く行きましょ。」
そう言ったアカネは俺の腕に抱きつきながら早く行こうと促す。
早く行くというのは構わない。
だが、問題なのは腕に抱きついているということ。
そうなると必然的に胸が腕で潰れてその感触を余すところなく伝えて来てしまうということだ。
ヤバイヤバイ!
普段慣れている嫁さん達ですら、未だに嬉しいのに、それが別の相手となるとまた違った嬉しさがーーじゃない!
喜ぶのは違うだろ!
でも喜んでしまうのは男の性なわけでこの大き過ぎず小さ過ぎない適度な柔らかさがなんとも心地よくて。
というかアカネの胸ってこんなに大きかったっけ?
じゃない!
仲間の胸の成長度合いを考えてどうするんだよ!
でもデートしてるわけだしそれくらいは……じゃなくて、えーと!?
〜アカネ視点〜
レントが混乱しているのは顔を見ていれば分かる。
正直腕に抱きつくのは大胆過ぎたかもとは思う。
多分今私の顔真っ赤になっていると思うし!
でも、このデートはレントが私を受け入れてくれるかどうか決める為の大事なもの。
その為ならこれくらい安いものよ。
今日1日で、私が魅力的だと、自分はアカネを愛しているんだと思わせるようにしないといけないんだもの。
だから、なんだってやってやるんだから!
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