第672話 ちゃんと答えを見つけるんだ。的なお話

「それじゃ、最後にいつも通り魔力障壁の訓練をするよ。朝の模擬戦で使っていたる人もいたけど、発動に時間がかかっててとてもじゃないけど実戦では使えたものじゃないからね。」


これ俺のことですね。

分かります。

自分でも即座に障壁を貼れたらなと思ってるし。

こう、敵の不意打ちでの攻撃を手のひらに展開した極小の障壁でバシッ! と受け止めて、素手で防いだと勘違いして驚愕している敵に、シュパッと即座に反撃とかかっこいいよね。

俺もそういうのやりたい。

でも、そこまでいくには淀みない魔力流動、極小レベルで展開できるだけの精密な魔力操作が必要なわけで……。

とどのつまり、鍛錬あるのみって話だよね。


「みんなそれなりに展開できるようになっているけど、規模も発動速度もまだまだ。即座に展開できなければ意味がないからね、基本。盾を持つのが単純な克服法だけど、みんなは持ちたくないんだよね? もちろん、盾には盾の扱い方や戦い方ってのがある。受け止めるのか、弾くのか、逸らすのか、それとも避けるのか、それらを即座に判断しなければいけないからね。でも、みんなは盾を選ばなかった。だったら、これくらいの習得は必須条件だよ。ここから先は格が違ってくるから。」


格……俺は結構レベルが上がってかなり強くなったと思うが、それでもアデラードさんの実力が全然わからない。

それくらいに離れている。

もちろん、エリーナさんも同じ。

それ程までに、Sランク以上というのは実力に差がある。

恐ろしいくらいに。


「各ランクの平均ステータスって言葉どっかで聞いたことない?」

「あります。前にリィナさんっていう、リリンの師匠で俺とセフィアも教わってたことがある人がいて、その人が言ってました。」

「うん。その平均ステータスっていうのはね、Cランクまでしか意味のない言葉なんだ。B以上になってくると簡単に昇格出来なくなるからなりたてと上位ではかなり差が出てくるんだ。それは上に行くほど大きくなる。つまり、それだけ上に行けば危険も増えてくるってこと。だから身を守るためには絶対に必要なんだ。みんな……死んでほしくないからね。」


死んでほしくないときましたか。

そんなこと言われたら不貞腐れることなんかできないじゃないか。

元から死にたくないし、それ以前に、俺だってアデラードさんを悲しませたくないからな。


というわけで、元から真面目にやる予定だったけど、より真面目に頑張る。

一応発動できるようになったからという事で練習内容が少し変わり、展開速度を上げる為にひたすらに障壁を張っては剥がし、張っては剥がしを繰り返す。

反復練習だな。

それを日が暮れるまで行って本日の訓練は終了した。


「みんなお疲れ〜。今夜ウチに来て。」

「え? 分かりました。」


何かあるのかな?

分からないけど、断る理由もないしまあ、いいか。


お仕事が少しあるという事で、アデラードさんが来るのを待ってから一緒にエリュシオン邸へ。

お風呂に入らせてもらってから夕食をいただく。

やっぱり豪華だ。


「さて、今日みんなに来てもらったわけだけど、明日のことについて話しておこうと思ってね。」


明日?

またエリーナさんが教えてくれるのだろうか?

お仕事が忙しいとかで。


「レントとアカネには明日デートをしてもらって、他のみんなはエリーナが教えるから。その間私はユースティア子爵を抑えておくからね。」

「「はいーーー!?」」


なんでそうなるの!?


「折角ユースティア子爵達が来ているわけだからね、この機会に決着をつけた方がいいと思うんだ。というか、面倒だからさっさと終わらせて。」


おい後半。

後半絶対本音だろ。

周りから見れば面倒なのはわからなくもないけど、それでもこっちはいろいろ考えているんだよ。


「私が抑えておくことができるのも1日が限度だから。それに、レントはちゃんとこの機会にアカネと向き合ってあげなよ。分かってる? レントは分からないことにして自分の心をごまかしているんだよ?」


ごまかしているだって?

俺が何をごまかしているんだっていうんだよ。

でも、さっさと答えを出すべきなのは確かだ。

アカネだって待ち続けるのは辛いだろうし。

覚悟を決めろ、俺。

そして、明日のデートが終わるまでに、ちゃんと答えを見つけるんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る