第663話 何か気持ちに変化が起こるはずだ。的なお話

アカネからの告白。

全くの想定外だ。

きっとアカネにはその内誰か好きな人ができて、その人と付き合うようになるんだと、そう思っていた。

それが実は俺のことが好きで、親にも応援されていた。

一体いつからだ?

いつからアカネは俺のことを……って、そんなの、いつだっていいか。

重要なのは、いつからじゃない。

これからどうするかだ。


そう……どうするか、なんだよなぁ〜。

俺は既婚者だ。

だからこそ、中途半端な気持ちで答えてはいけない。

この世界では一夫多妻だから既婚者というのは言い訳としては弱い。

もちろん、嫁を愛してるからというのは断る理由にはなるけど、それは嫁が1人だけの話だ。

俺は最初の時からすでに2人だった。

どちらか1人を選べなかったからだ。

だから、断るならちゃんとした理由を。

無いのなら、受け入れるべき……なのかなぁ……?

本当に……


「どうすっかなぁ〜。」


好きか嫌いかなら好きだ。

それは間違いない。

だが、付き合うとなると……


「う〜ん。」

「どうしたんだ、そんな唸って。」

「ん? なんだ、馬鹿か。」

「誰が馬鹿だ! 誰が!」

「お前以外にいないだろ。むしろ馬鹿という言葉はお前のためにあるようなもんだろ。」

「何!? そ、そうだったのか……って、んなわけあるか!」

「ナイスノリツッコミ。」

「うっさい! で、なんでそんな唸ってんだよ。」

「あー……まあ、お前しかいないか。」

「? なんの話だ?」

「ま、いいからそこ座れよ。」


男の知り合いはアベルさん、ダインさん、カイルさん、馬鹿、カルロ、ルーデスさん辺りだ。

そんな中で相談できそうなのがアベルさん、ダインさん、カイルさんなのだが、ここにはいないから消去法で馬鹿になる。

カルロとルードスさんは恋人いないから論外だし。

というわけで相談しやすいように座ってもらうように促す。


「……地面なんだが?」

「冗談だ。というわけで、ホイ。相談料だ。」

「安い相談料だな。」

「いらんなら返せ。」

「誰が返すか。」


渡したのは果実水。

お酒だと相談どころじゃなくなるかもしれないからな。


「えーと、相談する前にちょっと聞きたいんだが、お前は、マリナから告白された時どう思った?」

「どういう意味だ?」

「ほら、マリナは最初男のフリをしていただろ? だから、それまで普通の男の仲間として見てた奴が実は女で自分のことを好きだって知った時にどう思ったのかなって……。」

「そうだな……やっぱり最初はめっちゃ驚いたな。確かに女の子っぽい奴だと思ってはいたけど、本当に女だとは思わなかったからな。だから戸惑った。マリナもそうなると思ってたんだろうな。だからそのあとこう言ってきたんだ。自分と一度デートして欲しい。それで、本当の自分を知って、少しでも異性として意識するなら、付き合って欲しいってな。で、まあ、実際にデートしてみて、可愛いと思ったんだよ。そこからはまあ、徐々に仲を深めて……って感じだな。」

「そうか……。」

「そんなこと聞くってことは……女関係か?」

「まあ、な。」

「女関係で、悩む相手って事は、そういう関係として意識してなかった相手……という事は仕事でしか接することのなかったリナさんと見た!」

「あ、リナさんはとっくに恋人だぞ。」

「なにぃーーーー!?」

「俺が悩んでるのはアカネだよ。そんな素振りなかったのに、告白されて悩んでたんだよ。」

「いやおま……いつの間に、ていうか、早すぎだろ。隠れアイドルのリナさんのすぐ後に告白とか、お前どうなってんだよ。」

「知らん。でもまあ、参考になった。ありがとな。」

「え、お、おう。全然相談に乗れてない気がするが、力になれたなら良かったわ。」

「じゃあ、俺は行くわ。またな。」

「おう。」


うん。

いい話を聞けた。

分からないのなら、一旦デートして見て自分の気持ちを確かめるのはアリだな。

何か気持ちに変化が起こるはずだ。

きっと。

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