第629話 ストレージにしまっとこう。的なお話

ボスの弱さにすごく納得がいかない。

納得いかないが、だからといってここにい続けるわけにもいかないし、撤収する以外に選択肢はないか。


「ねー、これ開けてもいいよね?」

「いいぞ。流石にボス部屋の奴に罠はないだろうからな。」


5階層のボス部屋ではなかった宝箱がこの10階層では出現したのだ。

いやー、こうして見ると、不思議な光景だな。

初心者ダンジョンの方でも出てたけどさ、ゲームでもないのにボスを倒すと宝箱が出現しているんだもの。

魔法って、ファンタジーって、すげーな。

………アリシアさん、ゲームでもやってたのかな?


「オープン! おおーー……おぉ?」

「どうした?」


楽しそうに開けていたはずの蒼井が妙な声を出している。

何が出たのかね?


「これ……。」

「はぁ!? なんで、女性用下着が……?」

「そんなの、私だって分かんないわよ!」


蒼井が取り出しているのは、白とピンクのシマシマのブラとパンツのセット。

白いふわふわの尻尾付き。

サイズは誰のだろうね?

と、そんなことよりもまずは鑑定を。

名前と簡単な説明しか分からないけど、しないよりはいい。

今はこの謎の下着について少しでも情報が欲しいところだ。


「えーと、『軽身の下着』『着装者に身軽さと可愛らしさをプラス』だって。」

「いや、可愛らしさとか知らないし。そもそもこれ、サイズはどうなって……っ!?」

「どうした? えーと、Bの……」


ーーバッ!


「な、何でもないよ!」


いや、そのリアクションでモロバレだし。

そっか。

Bなのか。

まあ、だからなんだって話なんだけどな。

そもそも、蒼井のそれを知ったところで何かが変わるわけじゃないし、そういう関係になるとも思えない。

とはいえ、そういうのは恥ずかしいんだろう。

ここは無反応で行こう。

関心を持つとセフィアとかが反応するだろうし。


「そうか。それじゃ、宝箱の中身も手に入れたし、そろそろ撤収するか。」

「それはそれでなんかムカつく!」

「げふっ!?」


一本道の方を向いた途端、背中に衝撃が。

こ、こいつ、飛び蹴りしてきやがった。

そんなんどうせいっちゅうねん!


蒼井はわがままだ。



ボス部屋を後にし、9階層に戻るが、あいも変わらず行列ができている。

それを横目に俺達は軽く休憩を取る。

そこまでどころか全然疲れていないけど、少しお腹に何か入れておこうと思う。

ここでお昼というにはまだ早いし、何よりもここで調理しては飯テロになって睨まれる。

それだけなら問題ないが、カルロみたいに集られるのは面倒でしかない。

というわけで、ここで軽く何か食べて、お昼は8階層からの階段前でする予定。


果物とお茶で一息ついたら早速移動開始。

可能なら8階層のセーフティーエリアか7階層への階段前まで行けるといいな。


8階層への最短ルートを突き進んでいくが、魔物が出ない。

いや、最短ルートは人が多く通るから魔物が少ないけど…………まさか、階段前へと着くまで一度たりとも魔物と遭遇しないなんて。

楽ではあるんだけどね。


階段前まで来れたので早速お昼。

流石にカルロ達も現れないか。


「あ、多く作りすぎちゃった。」


現れないことでこんなところで問題が。

来たら来たで面倒だけど、来なくても問題を起こすとか……。

とりあえず、多すぎる料理はストレージにしまっとこう。

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