第628話 無事に帰ってきてよ。的なお話

〜アデラード視点〜


レント達がダンジョンに行ってから1週間。

そろそろ10階層のボスと戦ったかな?

あそこのボス、殺戮ウサギはそこまで強くないんだけど、持ってるスキルが厄介なんだよね。

スキル、会心の一撃クリティカルヒット

一定確率で防御力を無視した攻撃を与えるスキル。

ウサギといえばチャージラビットを想像する冒険者が多く、多少見た目が凶悪でも所詮はウサギって油断する冒険者が多いんだよね。

で、スキルの効果で大ダメージを受けてそのまま死んじゃう冒険者が時々出てくる。

一応、発破をかける言葉を書いておいたから多分大丈夫だろうけど……大丈夫だよね?

いや、大丈夫なはずだ。

魔力障壁を教えたし、レントは慎重な方だからウサギだからって油断はしないはず。

うん。

大丈夫だろう。


…………………………。

やっぱり心配だよ!

私なら本気出せば10階層くらい1日とかからずに見に行けるし、行こう!


「どこに行く気ですか?」

「え、エリーナ……えっと……。」

「大方、レントさん達が心配になって我慢できなくなったといったところでしょう。」

「うぐっ!」

「当たりですか。全く……大手を振って見送ったのなら最後までドンと構えて待っているべきでしょうが。」

「で、でも、殺戮ウサギはちょっと厄介なスキルがあるし……って、あれ? 何持ってるの?」


レントのことが心配で気づかなかったけど、エリーナが何か持っている。


「ああ。貴女と同じように居ても立っても居られなくなった人ですよ。」

「え、リナ!?」


エリーナが持っていたのはリナだった。

リナもレントの恋人だから、我慢できなくなったというのも理解できる。

でも、もう少し優しく持ってあげなよ。

首、締りかけてるよ?


「確かにあのスキルは少々厄介ですが、そもそもあの程度の相手、攻撃を当てることすら出来ませんよ。それに、多少怪我しようともポーションで回復できるでしょう。彼等は部位欠損を回復できる物も持っていたはずですし。」

「っ!? そうだよ! ポーションだよ! なんで私はポーションを用意しなかったんだろう!? ううん。今からでも遅くない。すぐに凄いのを作ろう。前に諦めていた両手両足を失ってもニョキニョキ生える奴を完成させよう! 材料は確か、世界樹の樹液に、青龍の角、朱雀の尾羽、玄武の尾の蛇の鱗、白虎の爪、それから……ぶげっ!?」

「貴女は、何をバカなことを言っているんですか!? 世界戦争でも起こす気ですか!?」

「痛い……。」

「痛いじゃない!」

「はぐっ!?」

「材料自体、1つだけでも小国なら国が滅ぶほどの値段がしますよ!? それに、そのレシピは延命の秘薬です!」

「あれ? そうだっけ?」

「そうです! そもそも、もうすぐ奴隷市だというのに、ギルドマスターがふらふらしないでください!」

「でも……」

「デモもストもありません! 脱走しないよう、私とジャクスで交代して見張りますから! リナもですよ!」

「あうっ!」

「もう少し優しくしてあげなよ。」


リナが捨てられるように部屋に入れられた。

ちょっとくらい見逃してくれてもいいのに、相変わらず頭が硬い。

仕方ない。

仕事をするしかないか。


レント……お願いだから無事に帰ってきてよ。

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