第630話 さっさと眠るとしよう。的なお話
食休みもそこそこに、地上へ向けての行軍……じゃないな。
軍じゃないし。
なんて言うんだろう……ま、それはいいか。
とにかく、それからも歩いていき、夜になれば野営をし、朝になればまた地上へ向けて歩きというサイクルを繰り返して、久しぶりの地上を拝むことに。
その間、特に何もなかった。
探索してるわけじゃないのだ。
最短ルートのど真ん中に宝箱なんて出現しているはずもないし、魔物も少なく、たまに現れても低階層ということであっ、と言う暇もなくさくさくっと処理して終わってしまった。
奴隷市が近いせいか誰ともすれ違わなかったしかち合わなかったし、追い抜かれもしない。
セーフティーエリアで野営していたということもあって、野営は野営で、何も起きることもなかった。
本当に、この数日、特に何もなかった。
せいぜい、相変わらず嫁達の料理が美味かったとしか言えんよ。
ま、そんなわけで、無事に地上へと帰還したが、やっぱり眩しいね。
というか、ちょっと目が痛い。
「これからどうする? とりあえず宿に帰る?」
「帰る! 今はとにかくお風呂入りたい!」
「みんなは?」
「ギルドに帰還報告をしないといけないけど、予定よりも早いし、もう暗くなってくるから、帰るでいいと思うよ。帰還報告は明日ってことでさ。」
「帰る。」
「洗濯物も多くて気になりますし。」
特に反対意見もなく、帰るということになった。
まあ、俺もベッドが恋しいしね。
宿に帰ると丁度レイちゃんが他の客の受付をしているところだったようで、その客を捌くとこちらの方に歩み寄ってくる。
久しぶりだからか、こうして出迎えてくれると帰って来たーって気がするな。
「お帰りなさい。今回は随分と長かったですね。お風呂にします? それともご飯にしますか? 今ならお風呂は空いていると思いますけど。」
「お風呂!」
定番の、わ、た、し? っていうのを想像する前に蒼井がお風呂と宣言する。
「分かりました。じゃあ、ちょっと準備して来ますね。あ、お部屋の方は毎日掃除してましたからすぐに使えるようになってますから。」
いくら水浴びをしていても気になるから、まあ、お風呂でいいか。
とりあえず部屋に戻ると、ホコリひとつなく、レイちゃんの言う通りちゃんと掃除されていることが見て取れる。
だが、ここでひとつ問題が。
掃除されていて、シーツも洗濯済みの綺麗なやつな為に、ダンジョンにずっと潜っていて薄汚れている俺達が近づくのは凄くためらわれる。
こんなん、汚せねーよ。
なのでルリエが椅子に座っているが、それ以外は立っている。
「準備できましたー。とりあえず2時間ほど予約しておきましたからその間は自由に使ってください。」
レイちゃんがお風呂の準備ができたと言うとすぐに退出していってしまった。
多分蒼井達の部屋とか、シア達の部屋に向かったのだろう。
ここで先にと思わなくもないが、蒼井が真っ先にお風呂と言ったんだし、先に譲るか。
その間に俺達は剣の手入れや洗濯物の選別なんかをする。
当初の予定の10日分ではないが、それでも結構な量だ。
それが10人分だからな。
明日は洗濯の手伝いでもしようかな。
さすがにこれだけの量を任せるのは気がひける。
そして、順番にお風呂に入りサッパリすると食堂で夕食をいただく。
ここの料理も久しぶりだから、目一杯堪能した。
うん。
嫁達の料理とは違った美味しさがあるね。
部屋に戻ると、すぐに眠気が襲ってくる。
睡眠時間や眠る環境が違ったし、仕方ないか。
なにより、楽だと思っていてもどこか気を張っていたのだろうことも影響しているのだろう。
だめだ。
もう限界。
流石のリリンも今日は襲ってこないと思うし、さっさと眠るとしよう。
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