第608話 別に羨ましくなんかないし。的なお話

目を覚ますと7時半だった。

あちゃー。

もう少し早く起きるつもりだったんだけど、襲われたことによる就寝時間が遅れたのと、訓練の疲労が原因かな。


「みんな起きて。朝だよ。」


みんなを起こして朝食を食べに行く。

本音を言えばシ◯フォギアの続きを見たかったが、出来るだけ早く行っておきたかったので見ていない。

ダンジョンの後には奴隷市での護衛があるからそこまでダンジョンに時間をかけていられないんだよな。



ギルドで探索予定表を書くのだが……何日にしよう。

悩む。

普通の冒険者って10階層に行くのにどれくらいの時間かかるのだろうか?

いやまあ、あんまり時間をかけられないから基本的には最短ルートを突っ切りつつ遭遇した魔物と戦闘っていうのを想定しているから普通とはちょっと違うだろうけど。

でも決める基準になるだろうし。

どこかに知り合いでもいないだろうか……あ、ウチのパーティって基本知り合い作ってなかったわ。

天装、堅牢、黒狼、馬鹿のパーティだけだな。

これって多いのかな?

まいいや。

リナさんに聞こっと。


「ちょっと聞きたいんだけど、今いいかな?」

「は、はい! なんですか?」

「ちょっとダンジョンに潜るんだけど、普通の冒険者って10階層まで行くのにどれくらいかかるかって分かるかな?」

「あ、そっちですか……えーと、ちょっと待ってくださいね。」


そっちって、それ以外には何があるのだろうか?


「えーとですね、他の冒険者の皆さんは大体ひと階層につき1日から5日くらいかけているみたいですね。でも、これはあくまでも目的の階層があってそこをメインにしてるようなので、あまり参考にはなりそうにないです。ただ、先輩に聞いてみたところ、低階層ならばひと階層を越えるのに半日で行くこともできるみたいです。」

「そうか。ありがとうございます。それを参考にして探索予定表を書くよ。」


どうやら半日くらいでなんとかなるらしい。

しかし、それは普通の冒険者の話で、俺達は冒険者経験はまだ浅いしダンジョンも久しぶりだ。

ステータスは加護のおかげで高めだろうけど、経験の差は大きいだろう。

でも低階層ならば差はそんなには無いと思うし、半日って事で考えておくか。

となると、大体10日前後かなぁ。

余剰日は2日かなぁ。

一応捜索希望にも◯を付けて。

で、数日休んだらその後は護衛、と、


「書きました。」

「それではお預かりしますね。それと一緒に依頼をお受けしますか?」

「あー、今回はいいかな。依頼の事とか何も考えずに自由にダンジョンを楽しみたいし。」


依頼の品を探して時間を使うのは良くないからね。


「そうですか。では気をつけて行ってらっしゃいませ。」

「はい。行ってきます。」


探索予定表を出し、リナさんの所から離れる。

さて、それじゃ早速ダンジョンに向かおうか……って時にアデラードさんが仁王立ちしてた。


「準備はいい?」

「はい。昨日の時点でちゃんと済ませましたから。」

「そっか。ダンジョンで重要なのは休む時はきっちりと休む事だよ。場所柄気が休まらないって事もあるだろうけど、ずっと気を張ってるのも良くない。だから、休む時は仲間を信じてちゃんと休む事。それが仲間を助けることにも繋がるんだからね。」

「「「はい!」」」


いざという時に疲れてて助けられないということほど辛いことはないだろう。

そうならない為にもきっちりと休む。

それに、誰も休まないと他の人も休みづらいだろうし、そうなるのを避ける為にもちゃんと休む必要があるわけだな。


「それじゃ、気をつけてね。」

「「「行ってきます!」」」


アデラードさんに見送られてダンジョンに向かう。


〜アデラード視点〜


「〜♪」

「随分と機嫌がいいね、リナ。」

「あ、ギルドマスター。実はですね、レントさんの口調が変わってきてたんですよ〜。普段の丁寧な言葉遣いとタメ口が混ざった感じで、受け入れられていてそれが出てきてるんだなぁって思ったら嬉しくって。」

「……………。」

「痛っ! ちょっ、なんで蹴るんですか!?」

「うるさい。」

「痛っ! ちょっ、痛いですって! あ痛っ!」


別に羨ましくなんかないし。

私師匠だもん。

丁寧な言葉遣いになるのも当然だもん。

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