第609話 リリンにお願いしておこうかな。的なお話
久しぶりにやってきたダンジョン。
カインにある初心者ダンジョンとは違って内部構造が変化することもないので地図が使える。
地図はアデラードさんがくれた。
前に買ったりしたけど、それと違ってアデラードさんのは色々と書き込みがしてある。
ダンジョンに出現する魔物の種類なんかはほんの序の口で、どこどこで取れる苔が風邪薬になるとか、キノコが滋養強壮にいいとかそういったことも書いてある。
後は、何がドロップするかとかも書いてある。
これらの情報は凄く助かるし、依頼を受けてないけど、時間があればちょっとした小銭稼ぎに採取したりするのはありだと思う。
でも重要なのは、この地図が新品だということ。
それってつまりは、アデラードさんが使っていた地図じゃなくて、わざわざ書き込んでくれたのをくれたって事だ。
それが凄く嬉しい。
10階層までは罠がないという話だし、道さえ分かれば困らないのに、わざわざ書いてくれてるんだ。
嬉しくないはずがない。
あー。
なんか、どんどん好きになっていってる気がする。
それは全然悪くないんだけど、自身の気の多さに嫌気がさして来る。
いや、みんなの事が嫌なわけじゃない。
ただ、意外と惚れやすい自分に驚いている。
「レント。これお願い。」
「分かった。」
そんなことをのんびりと考えていられるのも、仕事が全くないからだ。
いつも通りリリンがシュパッと行ってサクッとヤッてくるのでドロップアイテムを仕舞うだけの金庫状態。
あいも変わらずリリンは優秀だ。
でも、もう少しこっちにも仕事を回してくれてもいいんだよ?
優秀すぎるリリンのお陰でダンジョンはさくさくっと進んで行ける。
最短ルートを通っているっていうのもあるだろうが、それでもかなり速いペースで、3時間程で2階層への階段に辿り着く。
「ちょっと早いけど、お昼にしようか。お昼の時間に合わせると中途半端な場所で食べることになりそうだし。」
「ん〜、そうだね。それが良さそうだね。」
朝食やギルドに赴いた時間などがあったりして、現在は11時21分。
まあ、休憩がてらのんびりと準備すればいいか。
働いていたリリンにはゆっくりと休んでもらい、残ったメンバーで昼食の準備をする。
食器を取り出し、調理器具を渡し、水を魔法で用意し、食材を準備する。
…………これで終了。
後は邪魔になるので場所を開けて眺めるのみ。
手伝おうにも、出来る人が多い為に手伝う余地が全くない。
夫婦並んで仲良く料理っていうのはいつになったら出来るようになるのやら。
それぞれが調理をして、それでいてお互いに手伝ったりするってのが理想で、前みたいな教わりながらというのはちょっと違う。
あれはあれで楽しいんだけどね。
せっせと調理している嫁達をぼーっと眺める。
動きに淀はなく、みんなの連携もその練度が伺える。
流石、いつもやっているだけはあるな。
あそこに混ざれたらな。
「準備できたよー。」
準備ができたそうなので早速頂く。
出来合いの物もあるにはあるが、食べられる時はこうして作ってもらう。
栄養が偏るのは体が資本の冒険者としてはあまり良くない。
…………ということにしてるが、実際は食べたいだけ。
栄養は確かに大事だが、調理してる匂いが魔物をおびき寄せたりすることもあるだろうし、どっちを取るかは自由ってことで。
それじゃ早速、いただきまーす。
◇
昼食も終え、食休みも済ませたので探索に戻る。
戻るのだが、やっぱり俺には仕事がない。
たまにリリンがユキノや蒼井に変わったりしてるが、それでも俺には仕事がない。
そんなこんなで、途中小休止を挟みつつこの日は3階層を踏破し4階層に行く階段前で野営をする。
……道中暇だったし、明日はこっちにも仕事を回してもらえるよう、リリンにお願いしておこうかな。
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