第560話 待ちくたびれちゃうからね。的なお話

朝になった。

今日は報酬の受け渡しの日だ。

まあ、まだ買取してもらってないんだけど。

でも、買い取ってもらったらどうなるかと考えるだけで楽しみだ。

俺達が相手をした恐竜さんはアデラードさん曰くまだ若い個体らしいので前の時のやつよりかは安くなると思う。

でも、それを差し引いたとしても1000万は超えるはず。

冒険者なった頃の報酬は数百リムとかだったことを考えると、感慨深くなるなぁ。

今まで頑張ってきた甲斐があったというものだ。


1000万か。

そんだけあればそれなりの大きさの家を買えるはず。

いい加減宿住まいというのもどうかと思う。

思うんだが……ルリエがレイちゃんと仲良くなったのに離れなければいけなくなると、と考えるとなぁ。

まあ、1人で決めることじゃないし、あとあと考えるか。


よし。

現実逃避終了。

まずは酒瓶を片付けることから始めよう。



アデラードさんが宿を飛び出すのを見送った後、みんなと一緒に朝食を食べる。


「今日はギルドに報酬の受け取りに行くんだよね?」

「ん? そうだけど、どうしたんだ?」


蒼井が唐突にそんなことを聞いてくる。

前回、かなりの額になったから今回もと考えたのだろう。

たかりか……。

だが、残念ながらまだ倒した魔物は全部ストレージの中だ。

って、あ!

そういえば俺の防具裂けてたわ。

確か戦っている時に防具にしてやるとか思ってたっけ。

丁度いいし今聞こうかな。


「それでさ〜、ちょ〜っと、行きたいところがあるんだけど……いいかな?」

「残念ながらまだ買取してもらってないからそんな大金入ってこないぞ。」

「な〜んだ。」

「……ったく。それよりもさ、その時の戦いでさ、俺の防具壊れちゃったんだよね。だからさ、レックスの皮を使って防具を作りたいんだけど……いいかな?」

「いんじゃないかな? ただ、僕個人の感想を言わせて貰えば、お揃いじゃなくなるのが、ちょっと残念かな。」

「よし分かった。リザードの防具にする。」

「ええっ!? いやいや、そこまでしなくていいよ!」

「ん。すごく残念。でもそのせいでレントが怪我するのは嫌。」

「分かった。レックスのにする。」

「あんた現金すぎ…。」

「そうか? こんなの当たり前じゃないか。」


シアが呆れているが、嫁や恋人を優先するのが俺です。

なので、この反応は至極当たり前だ。


「ま、あんたらしいけどね。それはそれとして、残りはどうするの?」

「そうだな……とりあえず、肉は欲しいな。美味かったし。」

「それには賛成! あ、そうだ。あんたって牙とか爪とかで武器作れないの? ゲームだと定番だし。」

「いや、そんなのは教わってないから出来ないな。」

「な〜んだ。残念。」


確かに定番だし、いつかは覚えたいとは思ってるけどさ。

でも、教わってても亜竜の素材なんてそう簡単に扱えるとは思えないけどね。


「じゃあ、肉の一部と防具用の皮は取っておいて、残りは全部売るってことでいいかな?」

「それでいいんじゃない?」

「あ、でも、みんなも皮を使った防具に新調したいなら遠慮なく言ってくれ。リリンが俺に怪我してほしくないと言ってくれたように、俺もみんなには怪我をしてほしくないからさ。」

「それじゃ、僕の分もいいかな? 今作れば、またお揃いになるし。」

「私も。」

「私はいいわ。今回は全く関わってないのに、素材をもらうなんて申し訳ないし。それにまだランクも釣り合ってないしね。」

「わ、私もいいかな。この前、買ってもらった、ばかりだから。」


セフィアとリリンは新調。

シアとルナはしない。

というか、ルナが嬉しいことを言ってくれる。

今度、服とか買ってあげよう。


「私も欲しい! 絶対に欲しい!」


蒼井は図々しくも要求。

まあ、別にいいんだけどさ。

残りのみんなにも聞いたところ、ルリエ、レイダさん、ユキノはランクが釣り合わないと言って遠慮した。

アカネも遠慮しようとしたけど、「一緒に頑張ったんだから、お揃いのにしようよ。」と言ってセフィアが説得し新調する事に。


「さて、それじゃリザードについてだけど、全部売りでいいよね?」

「毒持ちだし、使い道ないからね。」

「そもそも既に防具として使ってるし、要らないでしょ。」


恐竜は少し時間が掛かったけど、リザードはあっさり決まった。

これが格の差か。

残りは牛だが、早く決めよう。

アデラードさんが待ちくたびれちゃうからね。

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