番外編 お年玉?
アデラードさんの家でクリスマスパーティーをしたと思ったらあっという間に年越しだ。
なんとも早いものである。
普段なら家の大掃除とかをするのだろうけど、あいにくと現在は宿住まいなのでする必要はない。
まあ、必要はないけど普段お世話になってるから手伝ったんだけどね。
レイちゃんに感謝されたし。
そして年越し。
ごーん、ごーんと除夜の鐘が領主邸から聞こえてくる。
この除夜の鐘も当然のように勇者が伝えたもので、年末に108回撞くとなんかいいことあるというなんともふわっとしたもの。
多分勇者の記憶が曖昧であんまり詳しくなかったのだろう。
しかし、勇者様の国の文化ならば是非とも取り入れましょう! と、当時の国のお偉いさんが張り切った結果根付いたらしい。
そんな事を招かれたアデラード邸で聞く。
「いや〜、今年も色々あったね〜。」
「そうですね。」
本当に色々あった。
恋人が増えたり恋人が増えたり恋人が増えたり婚約者が増えたり……………あれ!?
なんとなく分かっちゃいたが、これじゃまるで屑じゃん!
うぅ……容認どころかむしろ推奨されてるし一夫多妻制当たり前な世界だけど、やはり気になってしまうよ……。
もう少し自重………はしてるし、どうすればいいんだ?
「ま、私としては、その、こ、婚約者が出来た事が、1番、かな……。」
どんな反応をすればいいんだろうか?
突然そんな事を言われても反応に困る!
「私達は、やっぱりアレね。あのオーク達が1番印象が強いかな。もう、あんな思い2度としたくない……。」
シアはシアで別の意味で反応に困る事を……。
「年越しそばのご用意が出来ました。」
メイドさんナイス!
この微妙な空気が雲散霧消してくれてよかったよ。
そういえば、年越しそばって年越す前に食べるほうがいいんだよね?
ひ◯まりスケッチで金運を逃すとか言ってたし。
年越す前に蕎麦を食べ終わり、いよいよ新年となった。
どこかで花火が上がり街全体が新年を祝う。
「「「あけましておめでとうございます!」」」
「さて、それじゃ早速……落とし魂でも狩りに行こうかね。」
「そうですね。」
「ん。」
「私、落とし魂狩り初めてなんですよ。今まではお母さんが朝になると落とし魂狩ってきたよって言って貰ってたんですけど、今年でついに落とし魂狩りデビューです!」
「そっか。それはおめでたいね! それじゃ、たくさん狩れるように頑張らないとね。」
「はいっ!」
「「?????」」
え?
なんの話をしてるの?
お年玉狩り?
というか、俺にはお年玉をくれそうな親戚なんてこの世界には存在しないんだけど。
「2人とも何やってんの? 置いてっちゃうよ!」
「え、あ、うん。」
なんかよくわかんないけど、とりあえずついて行こう。
置いてきぼりは寂しいからな。
どこに向かっているのかは分からないが、駆け足で進む皆を追いかける俺と蒼井。
新年になったばかりということもあって街は人が多い。
「あ、すみません。」
通行人とぶつかってしまったので謝るのだが……
「ホエェェェェェェェェェ!!!」
「うわっ!? 何事!?」
ぶつかった人がよろけて転んだと思ったら、妙な叫び声を上げて蒸発してしまった。
え………ひょっとして、俺が殺しちゃったの?
「あ、レントが最初に狩っちゃったんだ。一番手を目指してたのに〜。」
「え? 狩った? 何を? というか、何これ?」
「何って、落とし魂だけど? あ、でも残念だったね。ハズレだよ。」
「????」
ハズレ? ハズレって何が?
というか、これが落とし魂?
「あー、レントは知らないよね。あっちじゃあり得ないし。」
「アカネ? これがなんなのか分かるのか?」
「まあね。」
「教えて、アカネ! もう訳わかんなんだけど。なんなのよ、これ!」
「ユウキも落ち着いて。ちゃんと説明するから。」
「う、うん。」
「彼の者達、生きて新年を迎えること能わぬ。ならばと彼の者達は生者を道連れにあの世へと誘わん。彼の者達は謳う。魂落とせと。故に落とし魂。」
「えーと、つまりは、何?」
「これは古い伝承らしいんだけど、要するに新年を迎える事が出来ずに死んだ生物の魂が生者の魂を求めて彷徨うんだって。初日の出の光に浄化されるまでの間に生気を求めて人間を襲うんだけど、それまでに倒すと何故かいろんな物を落とすのよ。一説には魂に似た物を集めててそれを落とすんじゃないかっていうのもあるんだけど。」
「つまり、元旦の初日の出までの間限定で現れるアンデットで倒すと何かを落とすって事?」
「そう。落とす物も色々あって金塊や銀塊、銅塊なんかは当たりの部類かな。といっても、硬貨サイズなんだけどね。他にも鉄塊や魔物の骨、魔石とかを落とすんだけど、ハズレだとただの石とか、葉っぱとか、木の棒だったりするのよ。」
「なんか、変わってんな。でもさ、それって危なくないか? そこら中に魔物が溢れるって事だろ?」
「それがね、この落とし魂って、すっっっっっっごく! 弱いのよ。ラージラットやメイズワームなんかよりも弱いのよ。まあ、それはさっきので実感してると思うけど……。」
「「あー。」」
「でも、油断しちゃダメよ。魂を落とそうとしてくる魔物なだけあってごく僅かな確率で確殺攻撃をしてくるのよ。」
ーーごくっ
自然と、息を飲んでしまった。
確殺って事は、その攻撃を食らったらどんな防御も無視して死んでしまうって事だろ?
なんて危険な魔物なんだ。
「具体的には、500万分の1くらい。」
「「……………………はい?」」
「だから、500万分の1よ。」
「……低すぎね? それって、ポケモンの一撃必殺よりも低いよね。」
「まあ、そうなんだけどね。でも万が一って事もあるから注意してね。」
「う、うん。」
最後の最後に拍子抜けしちゃったが、要は初日の出までのボーナスゲームって事だろ。
どうりで、みんなやる気になる訳だ。
そりゃ雑魚を倒すだけでお金になるんだからみんなやる気になるよな。
じゃ、俺も頑張りますか。
「あ、そういえば、落とし魂ってどんな見た目をしてるんだ?」
「基本的には生きていた時の姿そのままよ。だから夏場に死んだとかじゃなければ見分けにくいかな。でも、間違いなく見分ける方法はあるわ。」
「どんなのだ?」
「魂落とせって言ってるのよ。後は……ああいうのは普通に生きてる人だから、この時間帯に外に出てて活発的じゃないのは大体落とし魂よ。」
「……なるほど。」
アカネが指差したのは落とし魂を狩らんと、辺りを見回し駆けて行く人々。
なんとも分かりやすい事で。
「それじゃ、私達も頑張りましょうか。」
「そうだな。」
それから初日の出になるまで、街中を駆け回り落とし魂を狩りまくった。
魔物タイプの落とし魂はかなりレアらしく、それを1匹だけ狩れたが、レアだからといって必ず当たりというわけではなくむしろハズレだった。
なんでさ!?
と思ったりもしたが、合計ではそれなりの収入になってホクホク顔だ。
みんなも結構な額になったようでこれで何を買おうかと相談している。
俺も嫁達に何かプレゼントしようかな。
うん。
新年早々幸先良いスタートになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます