第547話 警戒する必要はないしね。的なお話

小休止を始めて1時間と少し。

………小休止って、こんなに休むものなの?

字から考えて少し休むというのだと思うんだけど。

まあ、ランさんが帰ってこないことにはどうしようもないのは分かるけど、でもここまで時間があるとかえってだれて来てしまう。

なんか、気を張ってるのも疲れるし、も少し気、緩めても良いよね?

とか思ってたらランさんが帰ってきた。


「早速で悪いんだけど、何があったか教えてくれない?」

「分かりました。まず、ここから少し行った所……地図のこの辺りに湧き水が湧いていました。」


みんな集まり、広げた地図を囲んでランさんの報告を聞く。

これまでの行程が刻まれ、およその現在地である場所がマークしてある所を指差してそこから少し指の位置を動かして指し示した。

そこが湧き水か……。

指はそこから更に右に進んでいく。


「そしてだいたいこの辺り。ここに洞窟がありました。その洞窟は地面が盛り上がっている所から地下に向かっていっているタイプでやはり見張りがいました。暫く様子を伺っていたのですがこちらに気付いた様子はなかったので気配察知系のスキルは無いか、もしくはレベルが低いと思います。」

「そう………………………流石に敵の人数までは分からないよね。」

「見張りがいましたし、侵入して敵に気づかれては良くないかと思い、そこまで探ることはしていません。」

「そうだよね。」


そう呟くとアデラードさんは思案顔で何やら考え込む。

アデラードさんが何を考えているのか……どのような答えを出すのかじっと待つ。

ん?

ぶつぶつと何か呟いてる。

考えを巡らせてるのは別に良いんだけど、なんかさっき、トレインって言ってたように聞こえたんだけど?

何やらされるの!?


「ねぇ、レント。魔物をトレインして敵をおびきだせないかな?」

「流石に無理です。ジェイル家の目的も分からない状況でそんな事して、もしも魔物と諸共に倒そうと襲ってきたらどうするんですか?」

「それもそうだよね〜。」

「あの〜、そもそもなんでジェイル家を敵認定しているんですか? 断絶されたとはいえ、いささか早計すぎるのでは?」


そう発言したのはえーと……………………………………………………誰だ?

天装のなんとかさん。

名前は忘れた。

ルーニャさんじゃない方の魔術師っぽい人。


「それなんだけど、実はね、前にも一度ジェイル家の名前が出てくることがあったんだよ。その時は、ただ単に兵士が盗賊になったんだと思ってたんだけど、こうして再びジェイル家の名前を聞いた今だと状況は変わってくるんだよ。あの時の盗賊も今回の件と繋がっていて、その時は食料や資金なんかを集めてたんじゃないかって。」

「なるほど……。」

「そういうわけなんで、無実だなんて考えるのは楽観的過ぎるんだよ。だから、敵として扱ってるんだよ。事実関係なんかは捕まえてから聞けばいいしね。」


聞けばが聞き出せばと聞こえた気がする。


「とはいえ、流石にトレインは無理があるよね。じゃあ、奴らの前に魔物を追い立てるのはどうかな? それなら挟撃されることもないし。」

「うーん。出来なくはないかもですけど、やっぱり非常識過ぎる気が……。」

「レント。常識ってのは破る為に存在するんだよ。」

「そんな話は聞いたことありません。」


アデラードさんは俺に呆れつつも諭すような声色でそんな事を言ってくる。


「でも、非常識だからこそこちらの意図に気づかれる事なく接触できるんだよ。普通の冒険者が魔物を追ったら出くわしたって。」

「だとしても、何か良からぬ事を考えていたら口封じして来ようとすると思うんですが。」

「そしたら普通に応戦すればいいんじゃないかな?」

「それに、魔物と戦っている時にこっちを先に襲われないとも限りませんし。」

「でしたら、奴らの前に姿を現さなければ良いのでなくて?」

「………それもそうですね。」


その後、もう少し話を詰めて少し離れた所で魔物と戦っていたけど、途中で逃げられて結果的に奴らの方に向かったという口実で襲わせる事になった。

追い立てるのは俺とリリン、アカネ、ナタリアさんになった。

リリンが魔物を見つけ、俺とアカネ、ナタリアさんが火魔法と火炎魔法で派手にやらかして逃す計画。

決行はランさんが十分に休息を取ってから。

目的は戦力を見る事なんだけど、仮に奴らがやられそうになったら助太刀してそのまま捕縛する。

その程度の力しかないんなら警戒する必要はないしね。

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