第548話 それは内緒だ。的なお話
ランさんも十分に休息を取ったので、作戦開始だ。
洞窟を中心にして今いる場所から45度近く移動した方向から追い立てる。
みんなの真後ろからだと危ないからね。
「いた。」
「どこ?」
「後ろ。」
「後ろか〜。回り込まないといけないか。」
リリンの指示に従って魔物の背後を取る。
やっぱり派手に音とかを立てた方が良かったりするのかな?
追い立てるわけだし、奴らに気づかせないとだし。
となると、アレかな?
ついでで覚えたファイヤーボム。
あれが1番音を立てそうだ。
でもそれだけだとショボいかな。
いや、今まで魔力操作の訓練を地味に続けて来たわけだし、きっとこれまでよりも強いのを放てるはず。
集中。
弾ける炎を出す。
それの威力を上げる……それでいて、小さく、もっと圧縮……
そうして出来たのは小さな、ピンポン球サイズの火球。
しかし、こめた魔力はそれなり。
うーん。
このサイズを手のひらから放つのは…………かっこ悪いよな。
たとえ発動した魔法の威力が高くても発動してる見た目がかっこ悪いのは、ヤダよなぁ。
というわけで指を銃の形にする。
うん。
ちょっとカッコいい。
レ◯ガンみたいだ。
魔法の準備が出来たので視線で合図を送る。
タイミングを計って俺、アカネ、ナタリアさんが魔法を放つ。
「エクスプロージョン!」
「爆槍烈火!」
「レイ◯ーーーーン!!」
「ちょっ、あんた何口走ってんのよ!」
アカネが炎系では定番のエクスプロージョンを、ナタリアさんがフレアガングニールに似た槍を投擲する。
そして俺は、見た目からあの名前を叫んだのだけど、アカネにツッコまれてしまう。
一時期、よく再放送をしてたしその時に知ったのかな?
ーードガガガーーン!!!
3つの魔法が凄まじい爆音を上げて炸裂する。
うぅ。
耳がキーンってする。
結果はどうなったんだと思って見てみると、そこには焼け焦げた地面だけで魔物がいた証は何もなかった。
えーと………やり過ぎちゃった?
どうしようかと思っているとランさんが慌てた様子でやって来た。
「ちょっ、今のなんの音!?」
「あら、どうしたの、ラン?」
「どうしたのって、それはこっちのセリフだよ! なんなの、この焦げた地面!」
「えーと、ちょっと、張り切り過ぎちゃって、お二人と一緒に魔物を跡形もなく焼滅させただけですわ……。」
「やり過ぎたって………えー……?」
「そ、それよりも、そっちの方はどうだったんですか?」
「あー、うん。敵襲かと思ったのか、慌てて出て来て……そんで今は厳戒体制を敷いてる。」
OH!
やってもうた!
とりあえず、アデラードさんのところに戻ろう。
◇
「良くやったよ! たくさんの魔物が飛び出していって、今はその対処に当たってるところだよ!」
「「「「え?」」」」
「ほら!」
アデラードさんに促されて奴らの拠点の方を見てみると、確かにそこにはたくさんの魔物と、それと戦う武装した集団がいた。
……………うん。
結果オーライということで。
さっきのは無しの方向で行こう。
どうやら飛び出した魔物の大半はDランク程度の雑魚だったようだが、中にはCランクの魔物も混じっていてそいつらを相手にしている奴は少し手こずっている。
このくらいなら問題ないかな。
「GOAAAAAAAAAAAA!!」
なっ!?
この鳴き声は……!?
「………レックス。」
自然と、呟いてしまった。
その呟きに合わせるようにして洞窟からその全貌を現す。
「間違いなくレックスだね。それにあの男……。おそらくだけど、一緒に出てきたあの男が抱えてる子供の所為でテイミングされたんじゃないかな。」
「ににに、逃げましょうよ! まだ気づかれてない今のうちに!」
「そ、そうですよ!」
一緒についてきていたギルド職員達からは逃げようという声のみが上がる。
「んー。あの男が今回の主犯じゃないかな? じゃなきゃあんな風にレックスの子供なんて抱えていないと思うし。アカネはどう思う? どっかで見たことない?」
「子供の頃なので確証は無いですけど、次男の方の面影がある気がします。」
「ナタリアは?」
「そうですわね……あの残念なルックスはおそらくそう、としか言えませんわ。」
「そう。分かった。じゃあ、攻めよう。職員達と、天装のCランク相当の子達はここで待機。他のみんなは私と一緒に出るよ。」
「なっ!? なんでここでわざわざ攻める必要があるのです! 彼らはまだ我々の存在に気づいていません! ならばここは一旦撤退して戦力を集めた方がいいじゃないですか!」
「言ってることもわかるけど、どうせならここいらでアカネにケリをつけて貰おっかなって。あの程度なら私だけでなんとか出来るからなんの心配もいらないしね。」
「ですが……。」
「それに君達はここで待機するんだよ。危険なんてあるわけないじゃない。それにいざとなったら撤退していいからさ。」
「………分かりました。」
「というわけで、行こっか。盗賊退治。」
アデラードさんが職員さんを言いくるめて攻めることを提案する。
俺は賛成も反対もせず、アカネに問いかける。
「アカネはどうしたい?」
「…………戦うわ。あいつの事はどうでもいいけど、ここで逃げたらあいつから……ジェイル家から逃げたことになる。それは絶対に嫌。だからここで戦うわ。」
「そっか。なら、俺達はそんなお前を全力でサポートしてやる。」
「頼りにしてるわよ。」
アデラードさんは脅威ではないと判断したので、俺達もアデラードさんについて行って奴らの元へと向かう。
ちなみに、寝静まった頃に洞窟を崩落させるなりすれば良いのでは? なんて考えてしまったが、それは内緒だ。
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