第546話 得られる事を祈ろう。的なお話

朝食も済ませ、後片付けをしてから調査を行う。

アデラードさんがいつの間にか探っていた範囲については既に情報の共有をしている。

俺達は殿な為に基本、付いていくだけだが、それでも情報は持っていた方がいいし何か予想外のことがあって転身して撤退する可能性もあり、その時に、あれ? どっちに行けばいいんだっけ? と、ならないようにする為に俺達もきっちりと情報はもらっている。

その時に、アデラードさんの行動範囲にたいそう驚いた。

野営地から10キロも探っているって、アデラードさんは化け物か?


そんなこんなでアデラードさんが既に探っていた10キロ圏内はスキップしてその先へと向かう。

そう思っていたのだが、前方を歩いている男性の顔色が少し悪い事に気づく。

この人はごく少数だけ付いてきたギルド職員だったはず。


「あの、大丈夫ですか? 顔が悪いですよ。」

「ああ、体的には問題ないよ。ただ、精神的に疲れてるだけだから、問題ないよ。でも、心配してくれてありがとう。」


顔色が悪いを顔が悪いと間違える定番ボケをしてみたがツッコミがないとは。

確かに精神的に疲れてるみたいだ。


「ひょっとしてこういうことには慣れてないんですか?」

「いや、一応訓練は受けてるよ。調査員として冒険者に随行する事もあるからさ。今回みたいにね。原因は別のところから来てる。」

「なんですか?」

「……………君には分からないかもしれないけど、たくさんの女の人の中に少数で放り込まれれば、そりゃ気疲れの1つや2つ、3つ4つ5つ6つとあるよ。」


無駄に多い……。


「女の人ばっかの中にたった3人で放り込まれて、肩身は狭いし、天装の姫は男嫌いって話で事実対応は辛辣ですし、寝る時もギルドマスターに土壁で完全に封じられましたし……まあ、君は普段から女の人に囲まれてるし、この辛さは分からないでしょう。」


そうなのか?

ナタリアさんもランさんも、それにルキノさんも別に男嫌いってわけじゃないし、そんな対応する人じゃないんだけど…………まあ、ルーニャさん? だっけ? あの人はなんか機嫌が悪そうだったけど。

ひょっとしてあの人が原因か?


「そ、そうですか。えっと、辛かったら言ってくださいね。多分アデラードさんもその辺は配慮してくれると思うので。」

「ああ。そういえば、君はギルドマスターのお弟子さんでしたっけ。やっぱり、俺とは違うんだなぁ。」


どことなく、遊び人とかプレイボーイ的なニュアンスが含まれてるような……。

これ以上、話しかけない方がいい気がする。

俺の方が怪我をしそうだ。


アデラードさんが探索した場所の先へと至る。

ここからはより気を引き締めていかないと。

目を皿のようにとはいかないまでも、注意深く進んでいく。

あ、右から水の音が聞こえる。

湧き水なのかな?

そういえば、湧き水の側の洞窟を拠点にしてるって言ってたな。

ということは……。


「ストップ。ラン。あっちの方から水の音が聞こえるからちょっと見てきて。もしも湧き水ならそのまま拠点になりそうな洞窟を探して来て。」

「分かりました。」

「他の者はここで小休止とする。軽く摘めるものを食べるのはいいけど、動けなくなるなんてことがないように注意して。ランが帰って来たらその情報を元に今後の事を考えるけど、最悪、そのまま戦闘になる事もあるから。」

「「「「了解!」」」」


もしも拠点があった場合いつ突入することになるのか。

はたまたその情報を持って帰って改めて討伐隊を編成するのか。

それは分からないけど、アデラードさんの言う通り、いざということがあるかもだから気を緩めすぎないようにしよう。

こちらが有利に動ける情報が得られる事を祈ろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る