第524話 そんな気分じゃなくなったよ。的なお話

腹ごしらえも済ましたので買い出しを続けていく。

紙は前にやった勉強会やカインの初心者ダンジョンのマッピングの時にやった残りがあるが、ちょっと心許ないし買い足す。

それに合わせてインクも買っていく。

そして食材。

最近はあんまり使っていないけど、そこそこには減っているのでこっちも買い足す。

あ、川魚があんま無いや。

次で最後かも。


場所によっては調理できないかもだから出来合いの物も次々と買っていく。

あ、どうせならさっきのピザ屋でお持ち帰りの物を買ってくればよかったよ。

よし、買ってこよう。


調査場所の地図もって言ってたよな。

それってどこで買えるんだろう?

やっぱりギルドの直営店の道具屋かな。

コンパスは最初のプレゼントボックスに入っていた。

まあ、あの場所で使えるかはわからないけど。


地図も買った。

そして近くまで来たということでギルドに入って魔物に関する資料を借りようと思っていると、そこにはランさんがいた。

またですか。


「あ、また会ったねー。何? レント達も調べ物?」

「あ、はい。ルキノさんにこういう時に何がいるか、何をすべきかを軽く教えてもらったので。」

「ルキノに会ったんだ。へー。じゃあお嬢には会った?」

「会ってませんけど……どうしてですか?」

「お嬢は武具屋に装備を見てもらってるから会うかなーって思ってさ。そっか。会わなかったのか。」

「ええ。」

「それでレント達は何を調べるの?」

「あ、普段の魔物の分布です。それと比べることで何か分かるかもという事なので。依頼を受けたりでそこそこ知ってはいるけど知らないこともあると思って。」

「ふーん。そっかー。」


おや?

なんか、ランさんの目がキランって光った気がする。


「そんなレント君に耳寄りな情報。実はここに私が調べてまとめたこの近辺に出てくる魔物の情報があるんだよね〜。どう、欲しい?」

「いえ、いいです。」

「え!? なんで!? そこは普通欲しいって言うんじゃないの!?」

「いや、なんかお金とか請求されそうだし。それに調べるのも嫁と仲良くやれば楽しいかなーと。」

「えぇー。買ってよー。ちょっと使いすぎて金欠なんだよー。だから助けると思って。ね、お願ーい。」

「本音が出ましたね。というか、この前依頼を受けたばっかじゃないですか。」

「あれだってもう何週間も前じゃん!」

「プライドとかないんですか?」


まあ、俺もそう大層なプライドとかないんですけど。

ホコリを持つほど生きてないし。

それにやっぱり宇◯兄弟が頭をよぎるし。


「プライドなんてなんの役にも立たないよ!」

「はぁ……。分かりました。で、いくらですか?」

「いちま……「この話は無かったという事で。」……わー、待って待って! ただの魔物の分布情報じゃないから! 弱点とか攻撃方法とかも書いてるから! 今後の戦闘でも絶対役立つから!」

「………今回だけですよ。」

「ありがとー!」

「というか、なんでそんなになるまで使うんですか。一体何に使ったんです?」

「え、実家への仕送り?」

「はい?」

「いやー、うちの実家お父さんが病気で今働けないんだよね〜。それに弟や妹もいるからここ数ヶ月厳しいんだよね。」


プライドなんてゴミみたいなものだった。

そんな物よりも家族の方が大事だよね。


「なんか、いろいろ言って、すみませんでした。」

「あ、気にしないで。確かに自分の生活を危うくするまで仕送りとかするべきじゃないよね。」


心が痛いです。

ダメ人間だと決めつけた少し前の俺を全力でぶん殴りたい。


「えっと、そ、それじゃ、俺達はこれで。」

「今度こそ、また明後日ね。」


罪悪感に苛まれた俺はみんなを連れて宿に帰った。

本当はルリエ達とショッピングでも楽しもうと思ってたけど、そんな気分じゃなくなったよ。

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