第519話 あまり使いたくないし。的なお話
かくかくしかじかとリナさんに説明するアデラードさん。
それを驚きの表情で聞くリナさん。
それは別にいいんだけどさ、アイリスさん同様、リナさんにそんな簡単に教えちゃっていいの?
言っちゃ悪いけど、リナさんはあくまでもただのギルド職員で下っ端もいい所だと思う。
それなのに他の、例えば例の先輩さんとかを差し置いて機密情報を漏らしちゃっていいのか?
漏らしたのがギルドのトップだからリナさんとアイリスさんは罰せられないというのが救いか。
アデラードさんは怒られるだろうけど、まあ、こっちは自業自得ということで。
「な、なんで私なんかにそんなこと言うんですか? 担当冒険者がいるとはいえ、私はただのギルド職員ですよ? はっ! まさか、将来の幹部候補として期待してのことですか!?」
「え、全然。」
「ですよねー。」
「まあ、今回はこの調査隊にレント達が行くから知らせておくだけだよ。レントの担当だから。」
そういえばそんな設定もあったな。
訓練ばっかり鍛治ばっかりだったから忘れてたよ。
「そう言う理由ですか……。」
「とはいえ、これはおいそれと周りに知らせるわけにはいかないんでね。余計な混乱を招くかもしれないからさ。その辺は注意してね。」
「は、はい!」
「アイリスさんもね。」
「は、はいっす!」
そう思うなら言わなきゃいいのに。
まあ、リナさんはいずれ知ることになるか。
「じゃ、そろそろ仕事に行こっか。」
「え、あ、そうですね。」
もうそんな時間か。
ご飯が美味しいし、話はちょっと問題があるしで気付けば結構時間が経ってた。
「それじゃ、俺達も帰らせてもらいますね。」
「そうだね。」
「昨日はありがとうございました。それに朝食まで。」
「気にしないで。将来の旦那様なんだし、もうここはレントの家も同然だよ。また来たくなったらいつでも来ていいよ。」
「え、いや。それは流石に……。」
「そ、そっすよ。それは流石に横ぼ……じゃなくて、レントさん達も気を使うっすよ!」
「そうですよ!」
おや?
何やら変な雲行きに……
「と言うわけで次はうちに来て欲しいっす!」
「あ、ずるい! 私はギルドの職員寮で呼べないのに!」
「ま、まあ、流石にここには勝てませんが……精一杯もてなすっす。」
「うえぇっ!? いやいや、それは無理ですよ! それにそんなことになったらアイリスさんの周りで変な噂が立っちゃいますよ!」
「むしろ望む所っす! もう、アイちゃんはいつ結婚するの? とか、いい人紹介しようか? なんて、言われたくないっす……友達もみんな結婚してるし……。」
「あー、えと、それでもやっぱり…………………………その、少し考えさせてください。」
断ろうとしたけど、すごく悲しそうな顔をされたら断るなんて無理だ。
もう、だいぶ絆されてるな。
次告白されたら落ちない自信ないかも。
「その、もうすぐ依頼がありますし、準備とかもありますし、アイリスさんには防具の調整をやって貰いたいですから……。」
「あ、そ、そうっすよね。」
うん。
すぐに泊まろうものなら落ちてしまう。
落ち着く時間が欲しい。
いや、アイリスさんが嫌いというわけじゃないけど、でも、ここまでモテまくると、少し怖くなってくるんだよ。
前世ではそんなことは全然なくて、こっち来てからすぐにそういう感じで……なんか、運気を全部使い果たしちゃうじゃないかって。
「そういうわけなんで、その話はまた今度ということで。」
「分かったっす。でも、いつか泊まってもらうっすから。」
「ははは……そうですね。」
この考えは今は置いておこう。
恐怖はあるけど、それよりも今は今度の依頼のことだ。
とりあえず、何かあっても対応できるように備品の補充でもしようかな。
ポーション類ももう少しあったほうがいいかな。
幸い資金は潤沢にあるし、ストレージ内で肥やしとなっているポーションよりも高価なのを買おう。
ソテー味のは………あまり使いたくないし。
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