第508話 流石だよ、アデラードさん。的なお話

訓練が終わって時計を見れば6時半過ぎ……。

やばい……カニパが……リナさんには7時といったのに、このままでは待たせてしまう。


「あ、俺達はちょっとこの後用事があるから、これで失礼します!」

「え、レント!? ちょっと……」


アデラードさんがなにやら言ってるが、それに構ってる余裕なんてない!

このままではリナさんが……

それに場所の準備とか厨房を借りたりとか、それにドロドロになってるから風呂に入りたい。


「あ、レントさん。準備できてますよ。」

「へ? 準備って、何のことかな、レイちゃん?」

「あ、実はさっきリナさんが来まして、厨房と大部屋を貸して欲しいって。それに皆さんが汚れてくるからお風呂の準備もしてと言われまして。」

「あ、そうなんですか……。」


待たせてしまった。

というか気を使われてしまった。

………しかたない。

存分に甘えよう。

というわけで風呂へと向かう。


それはそれとして、ここの風呂では魔道具が使われている。

お湯を生み出す魔道具だ。

どうも魔道具というものは魔石を使っているらしく、その魔石の供給量が高いここでは魔道具の値段も安くなっているらしい。

そんな風呂に嫁達と入る。

後がつかえてるというのもあるが、風呂のサイズがそこまで大きくないので長時間貸切にするのは他の客の迷惑だからな。


頭をワシワシとタオルで拭きながら料理の準備を手伝う為に厨房へ。

あんま時間かけられないからね。


「あ、レントさ…………。」

「ん? どうしたんですか?」

「…………あ、いえ、その、その格好も素敵です……。」

「そ、そうですか…。」


そんなこと言われたのは初めてだ。

風呂上がりの格好が素敵だなんて。


「え、えと、それじゃ今から準備を始めますので、部屋で休んでてください。」

「い、いえ。手伝いますよ。」

「手伝ってもらおうよ。リナさん。ここのお皿を持って行ってくれる?」

「は、はい。」


リナさんに休んでてもらおうと持ちかけたら拒絶された上にセフィアが手伝ってもらおうと言ってそのまま手伝ってもらうことに。

こうなると今更休んでなんて言っても無意味だな。


「じゃ、やりますか!」

「うん。」


セフィア達にはカニ以外の料理を作ってもらい、俺は焼きガニを作る。

まずは軽くヒートバーナーで炙る。

こうすることで甲殻が柔らかくなるので、柔らかくなったところで包丁で輪切りにしていき、その輪切りから甲殻を剥がしてフライパンで焼いてみる。

カニ足ステーキ? みたいになればなと思ってやってみてたりする。

ひっくり返すのを崩れないように慎重に行い再び焼く。

一通り火が通ったのを確認したら味見をしてみる。

うん。

美味い!

旨味たっぷり、口の中で繊維がほぐれていく感覚もいいな。

この調子でガンガン焼いていくぞー!


そして大量のカニ足ステーキをストレージにしまって大部屋へと向かう。

そして並べる為に大部屋へと入ってみれば、そこには何故かアデラードさんの姿が。

なんでここに?


「遊びに来たら大部屋を借りてなんかするとか言うじゃない。だから勝手に上がらせてもらったよ。」

「そ、そうですか……。」


この人のやることにいちいちツッコんでいたらキリがない。

だからもうしばらく待っててもらうことを伝えたら、酒飲んで待ってるという返答。

それは想像に難くなかった。

まあ、それは別にいいんだけどね。


アデラードさんが増えたことをみんなに伝えてそのぶんの料理を少し増やしてもらい、俺も更にカニ足を一本使ってカニ足ステーキを量産。

ついでにアイリスさんにおすそ分けするぶんも作る。

そして料理を作っている間に風呂を出ていたみんなに手伝ってもらいながら料理を運び込んだら、カニパ開始だ。


まずはセフィア達が作ったスープから。

野菜の甘みが出てて美味しい。

次はメインの焼きガニステーキ。

別にほじって食べてるわけじゃないのに自然と無言になる空間。

きっとカニの旨味を堪能しているんだろうな。


そして、みんながお代わりをしつつ楽しんだ食事を終えてみれば、笑顔のみんなが。

やっぱり美味いものを食べると笑顔になっちゃうよね。


「じゃあ、飲もう!」


うへぇ〜。

この一言でみんなの顔に翳りが……。

みんなの笑顔を速攻で翳らせるなんて………。

流石だよ、アデラードさん。

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