五百話突破記念特別編(4)

「おーい、唯ー。そんなに走ると他の人の迷惑になるぞー。」

「唯ったら、急に走り出して……。」


この声は……


「父さん……かあ……って、誰ーー!?」


唯をくっつけたまま振り返ってみれば、そこには父さんと母さんっぽい人が。


「ん? お、おま、蓮斗か!?」

「え、あ、本当だ……。」

「はぁ、はぁ、はぁ……。」


ーーボタタッ


………変態が鼻血を出したようだ。


「っていか、その人本当に誰なんだよ、父さん!」

「誰って、お前の母さんだが?」

「母さんだが? じゃねぇよ! 本当の母さんは、もっと、こう……とにかく違うだろ!」

「エステ行って帰って来たらこうなった。」

「エステすげーなオイ!」

「蓮斗の生命保険を使わせてもらったわ。」

「俺の生命保険ーーーー!!」

「ねぇ、お兄ちゃん。なんでお兄ちゃんから女の匂いがするのかな? かな?」

「へ?」

「あ、レント。料理取って来たんだけど、いる?」

「あ、セフィア……今こっち来ちゃダメだ!」

「え?」

「同じ匂い………お前かーーーー!!」

「うわぁあーー!!」


超カオス!

妹が俺の嫁に飛びかかって襲い出すし、母さんはなんか無駄に若返ってるし、父さんは能天気だし、リリン達が合流して唯が更に暴走するし、超カオス!


「お前が私のお兄ちゃんを奪ったのかーーーー!!」

「誰がお前のだ!」



暴れる唯を止めて、本当に母さんなのかの確認をしたりするのに20分もかかってしまった。

というか、唯がテーブルとかを使って逃げるせいで捕まえるのにかなりの時間がかかったんだがな。

その唯は現在俺にしがみつきセフィア達に対して威嚇をしている。


「あ、あの、そんなに睨まないで欲しいんだけど。」

「うるさい泥棒猫。」

「泥棒猫も何もお前とは何にもないだろうが。」

「あうあう。」


頭をぐりぐりして止める。


「それで、お前とその子達の関係は?」

「そうよそうよ。どうしたのこんなに可愛い子達! っていうか、聞いていたけど本当に優姫ちゃんも一緒なのね!」


父さんが押しのけられた。

力関係は相変わらずか。


「あー、この子達は、嫁と彼女とパーティメンバーだ。」

「嫁ーーーーーーーーーーーーー!?」

「うるさっ!」

「お兄ちゃん嫁ってどういうことよ! 私というものがありながら! 昔言ったよね、私と結婚してくれるって! なのになんで、どうして!」

「どうしても何もお前は俺の妹だろうが。というかそれ、まだお前が4歳、俺が5歳の頃の話だろう。」

「そんなの関係ないよ! 私は大学卒業したら田舎で一緒に暮らす計画まで立ててたのに……。」


なにそれ。

ウチの妹こわい。


「それなのに……どうして死んじゃうのよ! どうして……すっごく悲しくて、寂しかったんだから……ぐすっ……。」

「……………。」


泣きだした唯は俺に抱きついてきた。

そんな唯の頭を撫でてやる。

全く……。

ひとしきり泣いたらそのまま泣き疲れて眠ってしまったよ。

隅っこの方のソファーで膝枕をする。


「蓮斗はそのまま唯を見てて。私はちょっとあなたのお嫁さん達と話をしてるから。」

「あんま変なこと聞くなよ。」

「分かってるって。あ、あなたはどっかその辺でご飯でも食べてきたら?」

「は!? ちょっ、母さん!?」

「ガールズトークに男がいたらおかしいでしょ?」

「だけど……俺だって色々と話したいんだよ。」

「ね?」

「わ、分かりました。」


母さんが凄んだら父さんが引き下がった。


「じゃ、あっち行ってお話ししよっか。」

「あ、はい。じゃあ、レント。行ってくるね。」

「ああ。母さんに変なことされたり言われたらすぐに戻ってきていいからな。」

「あはは……。」

「流石にそんな事はしないわよ、多分。」

「多分かよ。」


全く母さんは……。

全然変わってなかったな。

いや、見た目はかなり変わってたけど、中身はね。

父さんも、母さんには負けてるし。

あれでも一流企業に勤めてるというから驚きだよな。

……本当に、全然、変わってないな………


「あれ?」


なんでか、涙が出る。

俺は大丈夫だと思ってたんだけどな。

セフィアが最初の頃からずっといたし、寂しくなんてないと思ってたのに。


「お兄ちゃん?」

「あ、起きたのか、唯。」

「うん。………泣いてるの?」

「なんでもないよ。」

「ねぇ、もうしばらくこうしてていい?」

「ああ。」


それからしばらくの間ゆったりとした時間を過ごした。


「みなさま。そろそろお開きのお時間となりました。本日はお忙しい中お集まり……」


「どうやら、終わりのようだな。」

「そうだね。…………ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはさっきの人達と、結婚してるんだよね。」

「そうだ。全員じゃないけどね。」

「そっか。ねぇ、お兄ちゃん。」

「なんだ?」

「待っててね。絶対、私もそっちに行ってみせるから。」

「はは。期待しないで待ってるよ。」


「蓮斗。この子達みんなすっごいいい子ね! 絶対に幸せにするのよ。」

「蓮斗。元気そうで安心した。またいつか会える日を楽しみにしてるぞ。」

「じゃあね、お兄ちゃん。久しぶりに会えて嬉しかったよ。」

「ああ。また。」


母さん達が帰っていき、それからアベルさん達やクレアさん達といった知り合いの人達が挨拶をしにきてそのまま帰っていった。


「蓮斗さん。今日はどうでしたか?」

「アリシアさん。楽しかったですよ。母さん達にも会えましたし。」

「そうですか。それは良かったです。」

「………………。」

「………………。」

「さて。それではそろそろ帰りましょうか。明日からはまたいつもの日常です。これからも頑張ってくださいね。」

「もちろんです。アリシアさんにもらったこの命、大切に使わせてもらいますね。」

「はい。」


こうして、突然始まったパーティーは終わりを迎えた。

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