第470話 千客万来なんだけど。的なお話

朝に目が覚めるとまず俺はアリシアさんを探す。

すると案の定いました。


「おはようございます、蓮斗さん。」

「おはようございます。」


何回目なのかは忘れたけど、もう慣れたので驚かない。

速やかにレイダさんに布団を被せる。

俺達は起きたらアリシアさんがいる、なんていう事態に慣れているので寝間着を着ているがレイダさんは初めてなので着ていないから。


「今日はやっぱり?」

「はい。レイダさんと結ばれたのでお呪いを。」

「そうですか。でもまだ寝ているんで。」

「分かってます。なので起きるまで暫くお話してましょう。蓮斗さんの日本の家族についてなんてどうでしょう?」

「あ、それは知りたいです。是非お願いします。」

「はい。まずご両親ですが、お二人は蓮斗さんの葬儀が終わった後、1ヶ月ほど引きこもりになってました。」

「はい!? 引きこもり!?」


俺の葬儀ってだけでも違和感あるのに、そこに両親が引きこもりになってたって、そんなの衝撃的過ぎでしょ。


「蓮斗さんと二度と会えなくなったのがショックだったのでしょう。確かに蓮斗さんはここで生きていますが、向こうからしてみれば二度と会えないというのは同じなのですから。それを心配した友人やお二人のご両親の説得で今はちゃんと働いています。」


俺は、そんなこと考えてなかったな。

まあ、実際に一度死んだし納得せざるを得ないというか……


「蓮斗さんの御友人はみなさん、最初は寂しさを感じていましたが、一年も経つと流石に慣れたようで普通に過ごしております。」


慣れるのは理解できるけど、なんか釈然としないな。

今度ゴブリンの頭でも枕元に置いてきてもらおうかな?


「最後に唯さんですが、蓮斗さんがいなくて相当寂しいようで今は蓮斗さんの部屋で生活しています。」


なんでそうなるの!?


「ただ、どうも最近では蓮斗さんの私物から蓮斗さんの匂いが無くなってきたようで精神に余裕がなくなっています。ご両親とは別の意味で周りから心配されています。」


いつから俺の妹は変態になったんだ!?

精神科医にでも連れていった方がいいレベルじゃね!?


「たまに遊びに行くのですが、最近は見ていられないレベルなので出来れば蓮斗さんの古着などを貰えないでしょうか?」

「あ、はい。分かりました……。」


渡すのには若干のためらいがあるが、このまま精神を病んでしまうよりかはいいだろう。と、自分を納得させて古着を渡す。


「ありがとうございます。」


うーむ。

これは聞かなかった方が良かったのか?

いや、だが聞かなかったら古着を渡せなくて妹が今以上におかしくなっていただろうからやっぱり聞いた方が良かったのか。

だけど、このもやもやはどうしたらいいのやら。


「すみませーん。レントさんにお客さんです。」

「え、あ、はーい。」


なんだろう?

取り敢えず応対してみるとそこにはアイリスさんがいた。


「レントさんの言った通りでしたっす!」

「はい?」

「コレのことっす!」


そう言って見せられたのはいつぞやの割印した契約書。

あー。

そういえばそんな話があったな。


「実は今日の昼からギルドで競売するんすけど、私は事前に確認とかしてたお陰で優先的に売ってもらえる契約が出来たっす。これも全部レントさんのお陰っす!」

「そっか。それは良かった。」


でも、俺は何にもしてないんだけどな。


「なのでこの契約書は破棄してくださいっす。これからその交渉があるっす。今日はお礼を言いに来ただけなので私はこれで失礼するっす。」


さて、それじゃアリシアさんとお喋りに戻ろ……


「すみません、レントさん。またお客様です。」


また!?


「ちょっといいか?」

「はい、なんでしょう?」


次に来たのがグラハムさん。

忘れ物でもしたっけ?


「実はよ、何故か昨日あたりから仕事が立て込んで来てな、手が足んなくなってきたんだよ。だから悪いんだが、ちょっと手伝ってくれねぇか? ちゃんと報酬は出すからよ。」

「はぁ……えっと、今お客さんが来ていますし、少し考える時間をください。受ける受けないに関わらず後で答えを言いに顔を出しますんで。」

「そうか。悪いな、こんな朝早くからよ。」

「いえ。」


ふぅ。

今度こそ、アリシアさんとおしゃべ……


「痛っ!」

「あぅ!」


肩に衝撃が……今度はレイカーさんか……

今日は一体どうしたんだ?

千客万来なんだけど。

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