第469話 そして就寝前。的なお話

宿に帰ってみると既にみんなは出かける準備が出来ていて、どうやら俺を待っていたようだ。

でも、出かける前にする事がある。


「レイダさん、ちょっといいかな?」

「はい、なんでしょう。」

「レイダさんはさ、俺の事、好き?」

「主人ですから、当然です。」

「いや、そういう事じゃないんだよね……。」

「あ、ひょっとして……」


ん?

なんでそこでアカネが反応するんだ?

そこは普通セフィアじゃないの?

いつもならセフィアが察する場面だと思うんだけど。


「異性としてって事だよ。前にもそういう話になったことあったよね。あれから、どう? 何か、心境に変化とかあった?」

「いえ、別に何もないです。」

「もしも、奴隷だからって考えているのなら…………俺はレイダさんを解放しようと思う。その上で改めて聞かせてもらうよ。だから、正直に答えて欲しい。俺の事は好きですか?」


緊張する。

告白しているわけじゃない。

でも、こういう言い方は告白しているようなもので、だから緊張する。

レイダさんはなんて答えるのだろうか。

やはり頑なに何もないと言うのだろうか。

早く、何か答えてくれ……


「分かりました。では、答えさせてもらいます。」


なんと、答えるんだ……


「恐らくですが、私はご主人様の事が、好きだと、思います。綺麗だと褒めて貰えば、嬉しいと感じ、その事をふと思い出して顔を赤くする事があります。自身を奴隷だと考えれば、胸が痛む事があります。奴隷だからと考えないようにしていましたが、私は、ご主人様の事が、好きなんだと、思います。」

「そっか。………そっか……俺も、レイダさんが好きだよ。」


ホッとした。

これでやっぱり恩は感じててもそういう風に見れないなんて言われたら凹んで何もする気が起きなかったと思う。


「良かったね、レント。」

「ああ。本当に良かったよ。」

「でも、急にどうしたの? やっぱり朝の件で心境に変化があったの?」

「………なんで知ってるの?」

「え、だってアカネちゃんが教えてくれたし。」


今俺、バッ! って効果音が付きそうなくらいの勢いでアカネの方を向いたよ。

首痛めるかと思った。


「アデラードさんを起こしてる声で目が覚めたのよ。でも、あんたがいきなりプロポーズなんかするから気まずくて起きれなかったの。」


俺もそんな場面に遭遇したらじっと息を潜めてるわ。

そりゃ仕方ないな。


「そういえば、2人はいいの?」

「ん? 2人ってリナさんとアイリスさん?」

「うん。レイダさんに言うなら2人にも言った方がいいのかなって。」

「いや、2人には既に言ってあるから、あとは2人次第だよ。まあ、リナさんは押しかけてきたけどね。なんか、エリーナさんから聞いたとか言ってたけど。」

「え、嘘! 一応アデラードさんには口止めするように言ったんだけど……。」

「え、そうなの? なんでそんな事を?」

「え、だってあの人色々と言いふらしそうだし、それはちょっとかわいそうかなって。」

「そっか。サンキューな。」


あれ?

だったらいつの間にエリーナさんは知ったんだ?


「もしかして、聞かれてた……? 本人もエリーナさんに言いそうだって言ってたからそれ以外考えられないわね。」


なるほど。

大方、あんまり話こまないようにって注意しに行って聞いちゃったってところか。

それじゃ仕方ないか。

それに、結果オーライだしそこまで困らないか。


「さて、それじゃ祝勝会に行きますか。あ、着替えた方がいいかな?」

「うーん。大丈夫じゃないかな。」

「そうか。じゃ、行くか。」


みんなに連れられて向かったお店は結構綺麗な見た目だったけどドレスコードはなかった。

冒険者が多いからその辺を配慮してのことらしい。

似合わない人とか多そうだしね。

料理も美味しく、文句のつけようがなかった。


そして就寝前。

そこにはいつもとはちょっとだけ違った光景が広がってる。


「今日からはレイダも一緒。」

「ふ、ふちゅっ……不束者ですが、よろしく、お願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」


いつもの光景にレイダさんが加わった。

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