第467話 最近よく逃げられるな。的なお話
シルヴィアが来るのを待っているとグラハムさんから来客だと知らせてくれた。
やっと来たか。
「今行きま…「どういう事ですか!?」 ……リナさん!? なんでここに!?」
シルヴィアかと思っていたら何故かリナさんがやって来た。
というか、どういう事って、こっちこそどういう事?
「なんでって、聞いたからです。酷いじゃないですか、私の告白には答えてくれないのに、どうして………どうして、ギルドマスターには、プロポーズするんですか…………私の事は、レントさんにとって、どうでも良い存在なんですか………告白されても、無視できるような………そんな、ちっぽけな存在なんですか!?」
また泣かせてしまった……
そんなつもりはなかった。
軽く見てるつもりはなかった。
リナさんの明るい笑顔には毎朝元気をもらっていた。
好かれてる事に悪い気はしていなかった。
でも、嫁さん達がいたから積極的に動く事はなくて、言葉にする事はなくて、その結果がこれだ。
逃げてきた罰、なのかもしれないな。
「えーと、不安にさせてしまって、ごめんなさい。別に俺は、リナさんの事を軽く見てるわけじゃないんです。でも、誰彼構わずっていうのが好きじゃなくて、それで後手に回っていたのは間違いないです。」
「後手……?」
「はい。俺は最初にセフィアとリリンと付き合う事になりました。その後にルリエとも付き合う事になったんですけど、その時に1つ決めたことがあるんです。」
「決めたこと、ですか?」
「それは、好意を持たれても、好意を持っても、自分からは動かないって事です。こちらは既にそういう人がいるのだからそういう関係になりたいのなら、向こうが好きにさせるべきだって。傲慢だと思っています。でも、セフィア達を蔑ろにしたくないし大切にしたいんです。だから、リナさんがもし、他にも好きな人がいて、既にお嫁さんがいて、それでも俺の事が好きだというのなら、リナさんが、俺をリナさんの事を好きにさせてください。」
「随分と、酷い話ですね。」
「分かってます。」
「でも、だったらまだ好きでいても良いって事ですよね。」
「はい。」
「私、頑張ります。絶対に、レントさんに好きになってもらいますから!」
これで良かったのか………でも、泣かせるよりかはマシか。
「こんな所で何をしておるのだ?」
「し、シルヴィア? いつからそこに?」
なんかまずい気がする。
こういう時って大抵最初の方から見てたってやつだよね。
「そこのギルドの受付が泣き出したところから。」
ほらね。
というか、よくよく考えればここは鍛治の工房で他にも人がいる。
その事に気付いたリナさんが顔を赤くする。
「い、いやあぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
「リナさーーん!!」
恥ずかしさからか、リナさんがまた逃げてしまった。
というか、最近よく逃げられるな。
「何やってるの?」
「さ、さぁ? え、えーと、とりあえずこれが依頼の大剣な。結構重いから気をつけろよ。」
「ふーん。確かに前のよりちょっと重いわね。」
「そう言いつつ片手で受け取るのな。」
「それはあんたもでしょうが。振ってもいい?」
「いいけど、ここじゃなくて外でな。」
外に出てシルヴィアは軽く素振りをする。
「うん。良さそうね。ねぇ、何か斬る物ってない?」
「ほい、薪。」
「なんでそんなの持ってるのよ……」
「野営用。」
「あっそ。まあいいわ。それ、適当に放り投げてくれる?」
「了解。」
言われた通りに放り投げる。
「はっ!」
振り下ろされた大剣によって両断された。
断面は綺麗で斬れ味は抜群だ。
流石俺………なんつって。
「凄い……前のだとこうはいかなかったのに。」
「まあ、前のは刃こぼれもあって斬れ味悪かったからな。とりあえず強度も前のより上だけど定期的に鍛治職人に見てもらえよ。俺は冒険者なんでいつでも見れるわけじゃないんで。」
「分かったわ。」
ふぅ。
これで終わったか。
この後は祝勝会だけど、みんな大丈夫かな?
二日酔いになってないといいけど。
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