第466話 結構良い出来じゃないか? 的なお話

朝起きていきなりプロポーズって、俺は一体何をやっているんだ………

寝ぼけてるのかな?

いや、驚いた時に目も頭も覚めたから寝ぼけてはいないか。

となると、やっぱり勢いだよな。

本当は誰かに相談したいところだけど、誰も起きてないし。

起こすのもかわいそうだし1人で朝食を食うか。

朝食べる時に誰もいないのって、なんか、寂しいな。

朝食を食べ終わっても誰も降りてこなかったので書き置きを残してグラハムさんのところに向かう。


アデラードさんの件は気になるが、今はこっちに集中しないと。

俺が駄目なのを作った所為で大怪我なんてやだから気を引き締めていかないと。

大怪我なんてさせちゃったら責任を取るとか言っちゃいそう。

そういうのはもうアデラードさんで頭が一杯だ。

いやだから、一杯じゃ駄目なんだよ!

はぁ、はぁ、はぁ。

一旦落ち着け。

精神を研ぎ澄ませて、一振りの剣を作ることだけに意識を向けるんだ。

集中、集中………。

よし。

やるぞ!


〜アカネ視点〜


レントがアデラードさんを起こそうとしている声で目が覚めた。

それはいい。

昨日はまた大変な事になると思って飲まなかったからこうして起きられたんだけど、何あれ!?

なんで起こしてるはずがプロポーズなんてしてるのよ!!

その所為で起きるタイミングを逃しちゃったわよ。

気まずくてレントがグラハムさんのところに向かうまで動けなかったわ。


「うーん。どうしたもんか。」


なんだろう、この感じ。

後から出てきたぽっと出のキャラに全部持ってかれたような感覚は。

別に、私はあいつのことなんて……好き、かもしれないけど、でもそれが恋愛感情なのか同郷だから親近感を感じているのか、この前の罪悪感から来ているものか、それは分からないけど、なんか面白くない。


「ふぅ。私もご飯食べよ。みんなは……寝てるわね。それが終わったら後始末かな。多分アデラードさんはポロっと言っちゃいそうだし、少なくとも釘は刺しとかないと面倒な事になりそうだ。」


〜エリーナ視点〜


あれは一体なんなのでしょう?

アデルが妙にご機嫌なのですけど、何があったのでしょうか。

ですが、それを聞けば調子に乗ってベラベラと喋ってきて面倒くさい事になりそうだし、どうしましょう。


「すみませーん。アデラードさんいますか?」


そう思っていたらアデルに来客のようですね。

あれは………確かアカネさん、でしたっけ。

レントさん達のパーティメンバーの。

どうしたのでしょうか?


「レントは勢いで言ったかもなんですけど、あいつは言ったことはそう簡単に覆すような、少なくともこんな大事な事を違えたりするような奴じゃないからプロポーズの事をなかった事にはしないと思います。でも、今アデラードさんが誰かに言ったりしたらお互い困る事になると思うんですよ。だから、あいつが言っていた期間の間は秘密にしておいたほうがいいと思います。」

「た、確かに、それはそうかも……このままだとエリーナ辺りに自慢してたかもしれないし、言ってくれてありがとうね。でも、それを言う為に来てくれたの?」

「ええ。このままだと大変な事になりそうでしたから。」

「でも、折角来てくれたんだし稽古つけてあげるよ。」

「いえ、結構です。狩猟大会の後始末もあるでしょうから。私はこのまま宿に帰りますよ。」

「そうなんだ。それじゃあね。」

「はい。お仕事頑張ってください。」




た、大変な事を聞いてしまった………あんまり長引かせないようにと釘を刺しに行こうとしたら、まさかそんな事になっているなんて……リナにはなんて言ったら良いのでしょうか……駄目ですね。

私には気の利いた事は言えそうにありません。

発破をかけた身としては正直に言って、その上で頑張るように言うしか出来そうにないですね。

願わくば、ここで挫けないでくれると嬉しいのですが。


〜レントに戻ります〜


なんとか集中して作業が出来た。

その結果またお昼を食べ忘れてしまったけど、うん。

結構良い出来じゃないか?

鍔も柄も刀身も飾りっ気は殆どないけど、柄頭にはちょっとしたアクセントとして三日月のアクセサリーを付けておいた。

やっぱり女の子なんだしちょっとくらい飾りがあったほうがいいよね。

本当は十字架にしたかったんだけど、なんか銀髪に赤い瞳ってヴァンパイアを彷彿とさせて選びにくかったんだよね。

たまたま特徴が似てるってだけで本当にヴァンパイアだとは思わないけど、一応ね。


さて、後はシルヴィアが来るのを待つだけだ。

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