第455話 森の中だから!? 的なお話

馬鹿も去り、アカネ達も再び森の中へと入っていった。

その頃になると昼食を食べに来た冒険者もあらかたいなくなり静かになった。


「さて、俺も遅めの昼食といきますか。」


誰に言うのでもないが、つい独り言を言いながらお昼を受け取り適当なところに腰を下ろして食べ始める。

セフィアとリリンがいるから味は疑っていない。


「あの、私もご一緒してよろしいでしょうか?」

「え、あ、リナさん。もちろんいいですよ。」

「では、失礼して。」


となりにちょこんと座るリナさん。


「そういえば、受付の皆さんは何をしてたんですか?」

「えーと、冒険者の皆さんが倒した魔物の仕分け、ですね。参加したパーティ毎に分けないと困りますから。ギルドカードだと何を倒したかは分かっても素材の質まではわかりませんから。」

「なるほど。あれ、でもお昼までは全然来てませんでしたよね?」

「そうですね。」

「じゃあ、その間何してたんですか?」

「昨日の分の内、査定が済んでいるものの計算をひたすらにしてました……疲れました……。」

「あ、それは……お疲れ様です。」

「昨日は昨日で数が多くて仕分けが大変だったって昨日も参加してた子が言っていましたけど、今日は今日で大変です。レントさんは何してたんですか?」

「俺は、セフィアとリリンが調理の方に参加しているのであんまり出来ることがないんですよね。それにアデラードさんからは本部テントの歩哨と伝令、列の整理に喧嘩の仲裁をやるように言われてたんで。まあ、伝令する事もなかったし、喧嘩する連中もいなかったしで、本当に何もすることがなかったんですよね。だから、ずっと立って時間が過ぎるのを待つだけで、それが逆に辛かったです。忙しい時は休みたいって思うけど、暇すぎるのも辛いっていうのを知りました。」

「あはは……本とか読むわけにはいかないですしね。」

「そうなんですよね。一応何かあった時にすぐに対応できるようにしてたんですけど、他に人達が優秀なんでただ見てるだけしかできなかったんですよね。」

「黒狼の爪牙は6年、天装の姫も結成してから4年になりますから。」

「そりゃ、優秀なのも納得ですね。6年もやってたら色々経験してるでしょうし。その点、ウチは1年ちょいですし、後から参加した子もいるから冒険者パーティとしての経験は少ないんですよね。基本討伐と納品依頼しか受けてなですし。」

「でも1年でBランクは凄いですよ! 10年頑張ってもCランクのままって人もいっぱいいるんですよ?」

「でも、Cランクでも十分稼げるんじゃないですか? 別にCランクでも問題ないと思うんですけど。」

「そうなんですけど、その分武器のや防具の手入れ、備品の補充なんかも必要で、それにここは迷宮都市ですから普通の依頼とは違って必要な物が多いですから。」

「あ、なるほど。そういえば帰還結晶も150万しますしね。」


それに、ウチは武器をアリシアさんからもらってるけど、あれらを買うとなると何百万どころか何千万とかしそう。

普通の冒険者が使う武器はそこまではしないだろうけど、それでも結構な額になりそうだ。

そう考えるとそこまで利益が出なくてもおかしくはないのか。

なにより、たくさん酒飲んで散財してるイメージがあるし。


「その点、レントさん達は素材の質が凄く良いですし、怪我もしてるところは見たことないから、本当に凄いですよ。」

「えっと、ありがとうございます。」


加護のお陰なところもあるから手離しで喜んで良いのか分からないけど、凄いって言われるのはやっぱり嬉しいな。


「それに、レントさんは実力をひけらかしたりしないし、優しいですし……その点も好感が持てるというか………あの、五股も六股も変わらないですよね?」

「はい!? え、な、何を言ってるんですか?」

「えと、つまり、私はレントさんのことが、好きって、事です……。」

「いや、そこまで付き合い長くないですよね!? というか、なんでこのタイミングで!?」


どう考えても告白するタイミングじゃないだろ!?

それにここ、森の中!

魔物が跋扈してる森の中だから!?


「え、あ! えと、勢い余ったと言いますか………その、すみませーーん!!」

「リナさん!?」


告白されたら逃げられました。

何これ?

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