第454話 指差した。的なお話

クルトとマリナが昼食を取りに行ったと思ったら、森の方からアカネ達が現れた。

ひょっとして、お昼用意し忘れた?


「どうしたんだ? お昼用意し忘れた?」

「周囲に気を配りながらだとしっかりと休めないでしょ? だからここで一旦しっかりと休んで午後を頑張ろうってことになったのよ。」

「なるほど。昼はあそこで配ってるから受け取ってこいよ。あ、それとなんかクルト達がいたぞ。」

「クルト? 誰だっけ?」

「いやいや、確かに全然会ってなかったけど、だからって忘れるなよ。ほら、カインにいた時に偶にいただろ? ナンパしては失敗する金髪。」

「ナンパ…………金髪?」

「ああ。そういえばそんなのもいたわね。私もされたっけ。」

「シアも覚えてるの? えーと、えーと、あ、いたね。うん。思い出した。」

「あいつ、そんなにキャラ薄かったかな?」

「そういうことじゃないけど、流石に数ヶ月も会ってないとね。」

「ま、あいつの事はいいや。それで、勝てそうか?」

「あ、ちょっと待って。その前にお昼貰ってきていい?」

「いいぞ。というか、すまんな、引き止めちゃって。」

「別にいいわよ。仲間でしょ。」


そう言って一旦この場を離れてお昼をもらいに行った。

そういえば、もう大丈夫なのかな?

骨折した時のを引きずっていたけど、普通だったよな。

気軽に安心すべきではないけど、あの様子なら大丈夫かな。


「ごめんね。それで、勝てそうかだったよね?」

「ああ。」

「まあ、無理じゃない?」

「って、無理なのかよ。」

「こうしてここに食べに来てるし、実を言うとここに来るのにちょっと迷っちゃってたのよ。いつもはセフィアに頼ってるからその分ね。それにリリンが居ないから索敵でも差が出るのよ。」

「……………俺は?」

「…………………。」

「おい!」


俺についてを聞くとあからさまに目を逸らされた。


「えーと、ほら、レントって偶に鍛治とかでいないじゃない? だからいない状況にもなれちゃったのよ。それに、レントってストレージくらいしか……」

「ぐはっ!」


それを、言うなよな。

俺だって少しは気にしてんだぞ。

戦闘だとリリンが真っ先に察知してシュパッて行ってサクッと倒すとか結構あるし、セフィアは料理長でマッピングとかしてるし。

でも、俺だって鍛治とか頑張ってんだぞ。

アリシアさんの武器が凄すぎるから陽の目を見ることがないけど、実力的にはその辺の鍛治師より上だぞ、多分。


「いや、でも、レントは最大火力ではウチの中で一番だし、それにいざって時は頼りになるし、この前だって助けてくれたし……」

「そ、そうか……」


最後の方が若干尻すぼみになってたけど、そう言ってくれるのは嬉しい。

でも、なんでそこで顔を赤くするんですか?

ちょっと照れるんだけど。


「おーおー、お熱いね〜。もしかして新しい彼女か?」

「げっ、馬鹿が来た。」

「誰が馬鹿だ!?」


と言うので指差した。

そしたら俺だけでなくみんなも鋭き刃の連中も指差した。


「おいっ! というか、お前らもか!?」

「だって、なぁ?」

「だよなぁ。この中で馬鹿っていえば、こいつだし。」

「お前ら〜、この、ぶん殴ってやる!」

「やべっ、逃げろ。」


冷やかしに来た馬鹿が馬鹿にされてどっか行ってしまった。

何しに来たんだ、あいつら。


「馬鹿はほっといて、とりあえず、残り時間がんばれよ。優勝できるかなんてのはぶっちゃけどうでもいいしな。楽しんで、そんでお金を稼げればそれでいい。入賞するかはおまけだしな。」

「そうよね。ま、適当に楽しんで来るわ。」

「それがいい。レイダさんがもう待ちきれなくなるのも時間の問題だし。」

「そうね。」

「というわけで、急いで食え。」

「う、うん。」


アカネは昼食をかっこんで、暫しの食休みをしてから、みんなは再び森の中に入っていった。

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