番外編 織姫彦星決定戦 中編

少し遠くのを目指して走っていると、何やらおっさん達が犇いているところがあった。

もしやと思って地図を見てみれば案の定、1番近くの遊戯台だった。

そんなにいるなら他の場所行けば? と思わなくもないが人がいるならそれだけ多くの獲物がいるとも言えるからそれが狙いなのだろう。

俺はあんなむさ苦しい所には行きたくないけど。


そして適度に空いてるところを覗いてみる。

そこにはけん玉があった。

…………ふっ。

何を隠そう、この俺は! これまでに一度たりともけん玉を成功したことがない男だ。

………………ここは止めよう。


「そこの少年。俺と勝負だ!」

「げっ!」


まずい。

けん玉で勝負なんてしたら絶対に負ける。


「この、オセロで!」


あ、良かった。

けん玉だったら確実に負けてたし、これならばなんとかなるだろう。


オセロは角を取った方が有利。

一度取れば二度と取られる事はない。

この人も角を取ろうと少し焦ってるように見える。

そんなに名誉なのかね、彦星。

でも、そこが隙になってる。

そこを狙って罠を張る。

それとは別に、裏返す石の数を少なめにしておく。

大量リードで相手を油断させるためだ。

すると案の定罠にも気付かずにどんどん手を進めていく。

そして盤面の半分が埋まったところで攻勢に出る。

どんどん黒に染まる盤面。

それに比例して青くなっていく相手の顔。

いや、だからそんなになりたいものなの、彦星って。


「負けた……」

「勝った!」


狩ったキーアイテムは牛の鼻の所につける輪っかみたいなの。

なんて言うんだろう、これ。

と、そんなことしてる場合じゃないな。

ずっとここにいてけん玉で勝負を挑まれたらヤバイ。

だからさっさと離れよう。


次の勝負は輪投げ。

これも勝った。

キーアイテムは牛の角。

その次はコマ回し。

これも勝てた。

キーアイテムは牛用の爪切り。

次は負けた。

福引きなんていう運勝負じゃしょうがない。

ただ、一度に奪えるキーアイテムは一つだけだったのにはホッとした。


途中で負けを挟みつつもなんとか全部集めることができた。

最後のキーアイテムは牛革。

…………………………牛ーーーーーーーー!!!!

なんで最後に殺されてるんだよー!?


えーと。

とにかく、全部集まったわけだし太守館前に行くか。



「みなさんお疲れ様です。私がここの太守を務めさせていただいているギリアム・ホーキンスといいます。この織姫彦星決定戦は遥か昔、時の勇者であるマサムネ・キクチが発案しこの地で広まった祭りです。それから多くの織姫と彦星が生まれました。中には先代アクリア国王やグラキアリス騎士団第二大隊隊長もそこに名を連ねています。そして、その方達の中にここにいる皆様の名が新たに刻まれる事になるのです。その栄誉を目指して頑張ってくださいね。」

「ギリアム様、ありがとうございました。えー、それではこれより織姫彦星決定戦本戦を開始したいと思います。まずは彦星から決めたいと思いますので男性の皆様は壇上に上がってください。」


本戦出場者は全部で大体60人くらいか?

こいつらが全員ライバルという事になるんだけど、頭良さそうなのがあまりいないな。

知能を競う問題が出れば勝てるかも。


「よー。レントじゃねーか。お前も参加してたのか。」

「あ、えーとカルノ?」

「カルロだよ! 人の名前くらい覚えろよ。」

「あー、そうそうカルロだ。でも、一回しか会ってないし間違えてもしょうがないだろ。」

「それはそうかもだけどよ、一緒に酒飲んだ仲じゃねぇか。そこは覚えてて欲しかったな。」

「俺は飲んでねえから。ところでさ、彦星になるとなんかあんの?」

「え、知らねぇのか?」

「なんかイベントやるっていうからとりあえず参加してみた。」

「とりあえずって……いいか、この織姫彦星決定戦っていうのはだな……」

「それじゃ、早速始めようと思います。準備はいいかなー?」

「と、始まるみたいだな。まあ、最後まで参加してれば分かるし、それじゃな。」


結局何にも分からなかったな。

でも、カルロの言う通り最後までいけば分かるし、彦星になれるとも限らない。

仮になれたとしてもその時に考えよう。

そこまで悪いもんじゃないだろうしな。

さてと、それじゃいっちょやってみっか。


「第1問! ギルドの受付嬢に聞きました。結婚相手に求める条件は? 1、強さ。2、かっこよさ。3、お金。4、優しさ。さーどれ?」


は?

なんか、急にクイズ番組みたいになってんだけど。

こんな感じなの?

えと、とりあえず4、かな。

定番だし。


「答えはー………………4の優しさ。強さ、かっこよさ、お金も大事だけど、一緒に暮らすなら優しい人がいいって意見が多かったです。って、おやー? 4を選んだのは20人。いきなり3分の1に減っちゃった。これは驚きだー!」


定番だよね?

これはもしかして……意外と簡単かもしれない。

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