微ユニークから始まる異世界生活

番外編 織姫彦星決定戦 前編

今日は待ちに待った七夕だ。

例によって例のごとく、勇者や転生者によってこの世界にも七夕が存在する。

そして先日、ギルドに寄った際に七夕イベントを行うことを知った。

まあ、その時には既にあるだろうと考えていたけどね。

どうせ普通の七夕とは違うんだろうと思ったからその時はどんな内容か聞かずに参加表明だけした。

だから楽しみなのだ。

七夕がどんな感じに変異しているのかが。

確か本来の七夕は真面目な牛飼いの青年を織物を作っている勤勉な娘の婿にしたけど、年がら年中イチャイチャしてて仕事を全くしなくなったから仕事をさせるために天の川で2人の仲を分かつ。

しかし2人はそのショックで仕事が出来なくなっていた為に、真面目に働けば1年に一回会わせてやるってなって、2人は真面目に働くようになったって感じだっけ？

でも、織姫と彦星とされる星にとって1年に一回は一瞬で、しょっちゅう会ってイチャイチャしてるようなものって漫画で読んだな。

まあ、これは別にいらない情報かな。

そんなことを考えている間にギルドにたどり着いた。

なぜギルドかというと、街中でのイベントなんてどう考えても騒ぎが起きる。

でもギルドが主体となってイベントを行えば、騒動を起こしそうな連中……つまりは冒険者が騒ぎを起こす＝ギルドからの罰則となるので、それを避ける為に出来る限り迂闊なことはしないだろうという考えだそうな。

実際、いくらか効果は出てるらしい。

ギルドでひしめき合っていたらイベントの説明が始まった。

「今年もやるよー！ 織姫彦星決定戦！ 今年初めてって人もいるからルールの説明をするね。この織姫彦星決定戦はそれぞれ今年の織姫と彦星を決めるものなんだ。」

福男的な感じかな？

というか、なんでアデラードさんが説明してんだ……普通は受付嬢とかだろうに。

「織姫と彦星を決めるということは必然的に男女で分かれて競うことになる。そして決定戦は予選と本戦の２つに分かれてる。本戦はお題を出していって誰が一番織姫と彦星に相応しいかを競うというもの。でもそれを全員でやってたら時間がいくらあっても足りないって事で予選と本戦で分かれてるの。で、肝心の予選の内容は……」

なんでここでドラムロール！？

普通は本戦の内容を言う前にやるもんじゃないの！？

「ジャジャン！ 今年の予選は街中での狩り物競争だー！」

借り物競争？

結構簡単そうだな。

「まず、参加者にはそれぞれキーアイテムを渡します。そのキーアイテムは全部で5種類ある。」

ん？

5種類？

それに参加者に渡すの？

「そのキーアイテムを奪い合い、5種類揃えた者が本戦に進むことができるのだー！」

あー。

なるほど。

キーアイテム……つまりは物を狩るから狩り物競争か………って、なんでやねん！

なんで普通に借り物競争やらないの！？

絶対勇者の悪ノリで生まれたものだろ、これ！

「しかし、参加者全員が冒険者じゃない以上、武力行使は出来ない。じゃあ、どうするか。その答えは……これだ！」

リナさんが持って来た台車にかかった布を取るアデラードさん。

ノリノリだなー。

「街の各所に設置してある遊戯台にあるもので戦ってもらうよ。内容は様々。ここにあるチェスのような頭を使うものから、福引きのような運を競うものまである。それらで勝負しキーアイテムを全て集めて太守館前の広場に集まってね。そしてキーアイテムを失った人は負け犬部屋に行ってもらうからね。」

負け犬部屋って………もう少し言方ってもんがあると思うんだが。

「まあ、その負け犬部屋ってここなんだけどね。で、負けた人はここで本戦後の祭りの準備してもらうからね。予選の制限時間は今から5時間。キーアイテムは受付で配布してるからね。じゃ、始めて。」

「「「………………………軽っ！」」」

突然始まったので参加者が反応するのに少し時間がかかってた。

俺も反応が遅れた。

そのせいで受付に並ぶのに遅れてしまい大幅なタイムロス。

「レントさんのキーアイテムはこちらですね。」

「なんすか、これ？」

「くつわです。」

「いや、名前を言われても全くわからないんですが……。」

「えーとですね。これは牛飼いが牛を静かにさせるために使う道具だそうです。」

確か彦星は牛飼いだったから、そっから来てるのか？

「それと、こちらを。男性側の範囲を記した地図です。」

「男性側って事はつまり……。」

「はい。もちろん女性側もあります。織姫と彦星ではキーアイテムが違いますので。」

「なるほど。」

「それでは、健闘を祈ります。」

「はい。行って来ます。」

受付（何故かリナさんだった。）を離れて早速街中に向かう。

ん？

そういえば、彦星になると何かあるのかな？

何にも言ってなかったけど、ま、いっか。

本戦後の祭りとか言ってたしその祭りで何かもらえたりするんだろう。

特別な料理とか。

さて、目指すは1番近くの遊戯台……ではなく少し遠くのだ。

近くのは人多そうだし。

チェスはちょっと自信ないし、別のだといいな。