第392話 いつもの犬の人的なお話

昨日はあの後宿に帰って休んだ。

そういうアレは流石に訓練で疲れてるだろうと思ったけど………襲われました。

それとこれとは話は別、というよりも、別腹? って言われたけど、俺はデザートじゃないぞ。

まあ、拒絶する理由なんてミジンコほどもないけど。


で、その翌日である今日は依頼をすることになった。

といっても俺は雑魚だけを相手にする予定だ。

まずは指輪によって低下させたステータスに慣れないことには始まらない。

いきなり強めのやつに向かっていって普段と違うからと戸惑ってしまえばその隙が命取りとなりかねない。

流石に2度目の死は辛いし嫁達をこの若さで未亡人にするわけにはいかない。


なので指輪のことを含め訓練のために雑魚と戦うという事をみんなにも伝える。

あ、依頼に出る前に鉄の剣を買わないと。


「なるほど。確かにこの剣は斬れ味凄いしね。言われてみれば僕も最近は斬るのに苦労した事ないかも。」

「ん。やばいかも。」

「そんなに凄いの、それ?」

「ちょっと試してみる?」

「出来るならやってみたいわね。」

「じゃあ、はい。」


試してみたいというシアにウルなんとかの剣を渡して焚き火用の薪をよこむきで構える。

それにシアは軽く振りかぶって振り下ろすとあっさりと切断してのけた。

流石はアリシアさんが作った剣なんだけども、これを見ると本当に技術が要らないのだと実感する。

なんせ本当に力を入れてないのだから。


「凄いわね。確かにこれじゃそう言われるのも納得だわ。」

「そ、それもレントが打った剣なのか!?」

「いや、俺が教わっている人から貰ったんだ。」

「そうなのか……さぞかし名のある名工なのだな。」

「えと、まあ、な。」


言えない。

相手は神様だなんて。

しかも、別に鍛治を司っているわけじゃなくて友神に教わった片手間だけだなんて。


「そ、そんなわけなんで依頼に行く前に普通の剣を買いに行くから。」

「あ、僕も練習したいから一緒に行こうかな?」

「私も。」

「いや、2人の剣は折れてないだろ。俺のは折れちゃったけど。」

「あ、そういえばそっか。」

「忘れてた。」


そうなんだよな。

俺のは前にローグバードに折られちゃったんだよな。

あれもアリシアさんに貰ったやつなんだけど、そう考えるとちょっと残念だな。

後、その時に黒鉄の剣を買ったけど全然……というか全く使ってないんだよな。

まあ、アデラードさんからの指示は黒鉄じゃなくて鉄の剣だから、また買わないとだ。


「それじゃ、早く行こうか。」


そんなわけでギルドに向かったが、近くだからと先にグラハムさんのところで鉄の剣を購入。

その際に知らない仲じゃないしと、少しだけオマケしてもらった。

ありがたい。


そしてギルドに行き依頼を受けに行くといつもの犬の人がこんな事を……


「あ、レントさん。おはようございます。あの、何をやったんですか? なんか、ギルドマスターからこんな手紙を貰ったんですけど?」

「あー、うん。なんだかんだあって弟子になりました。」

「うそ!? あのギルドマスターが!?」

「「「「なんだとぉ!?」」」」

「うわっ!?」


最初のうそ!? の方は犬の人だけど、その後から聞こえたのは後ろの方から、つまりは他の冒険者だ。

犬の人ならまだ分かるが、なんで他の冒険者まで!?

ひょっとして、アデラードさんってかなり凄い人だったりする?


「俺、何回もお願いしたのにダメだったんだけど……」

「俺なんか名前すら覚えて貰ってないぞ。」

「俺、土下座したけどダメだった。」


どうやら、弟子を取らない事で有名だったらしい。

でも、こういう時はアレだよな。

気にくわねぇ! なんで俺様がダメでこいつならいいんだよ! 的な冒険者が喧嘩売ってくるんだよ。

早く来ないかな〜。

おら、ワクワクすっぞ。


「えと、凄いですね。ギルドマスターが弟子を取ったなんて話は聞いた事ないんですけど……あ、ギルドマスターを呼びましょうか?」

「いや、今は忙しいとかで次の訓練はまた今度ってなってて、それで今日は依頼を受けに来たんですよ。」

「あ、そうなんですか。では、今手続きをしますね。」

「お願いします。」


そうして無事に依頼を受理して貰って早速街の外に。

手紙は騒動になりそうだから街から離れてから読もう。

ちなみにやはりというかなんというか………テンプレイベントは起きませんでした。


…………わかってたよ、畜生!

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