第391話 先は長そうだ。的なお話

エルナショックで精神が旅立っていたアデラードさんが復活したり、途中で休憩を挟みながらひたすらに身体強化の練習をしたが、残念ながら俺は会得することができなかった。

もちろん、これで諦めたりしないしこれからも頑張っていくつもりだけど、セフィアとリリンがなんだかんだで発動から維持まで出来るようになっているのを見てると、不甲斐なくなってくるよ。

そんな2人もアデラードさんに言わせればまだまだらしいんだけど。

シア、アカネ、ユキノの3人は魔力切れの為に結構早い段階からお休みしてる。

それから比較的魔力の少ないルリエも休んでおり、そこから魔力量の少ない順にリタイアしていった。

俺はレベルと恩恵のお陰でかなり長いことやっていたけど。


「今日はここまでね。みんな魔力切れだろうし。」

「そりゃ3時間近くやってれば誰だってそうなるわよ。熟練者ならまだしもここに居る内の半分以上がやったことないんだし。」

「ま、そうだよね。というわけで、はいこれ。私特製のMPポーション。何があるか分からないし一応魔力は回復させといたほうがいいからね。」

「あ、ありがとうございます。」

「それ飲みながらでいいから聞いてね。ちょっと言ったと思うけど私はまた明日から仕事だからちゃんと見ることが出来ない。だから訓練はお休みなんだけど、それだと時間がもったいないから魔力操作の訓練を朝晩2回、毎日行うように。こういう事は毎日やってこそ効果が出るものだからね。」


なんか、急に簡単に出来るダイエットみたいになったぞ。

ちなみにうちの両親と妹も太ってないからそういうダイエットはやったことない。

確かに座禅しての魔力操作は基礎っぽいし続けてやることに意味はあると思うけど。


「それと、すでに出来る3人はこっちね。魔力操作の訓練用の魔道具。ちょっと実演してみるからよく見ててね。」


そう言ってアデラードさんは取り出した魔道具を地面に置きそれに両手を置く。

するとまず奥にある球体に三つの数字が浮かび上がる。

4、8、7か。

なんの数字なんだろう?

ほんの少しだけ時間が過ぎた後に手前にある球体が淡く光る。

それも少しの時間ですぐに光は収まり、アデラードさんも魔道具から手を離した。


「まず最初に数字が浮かんだでしょ? あれはそれぞれ開始時間、魔力を流す量、魔力を流す時間を表してるの。つまりさっきの場合だと、4秒後に8の魔力を7秒間流すってこと。流すべき時以外に魔力を流すとビリっと来るよ。で、魔力が多過ぎたり少な過ぎたりすると光らない。そして魔力が多過ぎればここんところが赤くなって逆に低ければ青くなる。色の濃さがどれだけ規定の量と離れてるかだから注意してね。」


なるほど。

事前に練った魔力が漏れないように抑え、タイミングに合わせて適量の魔力を適切な時間だけ流す、つまりは精密な魔力操作の為の道具なのか。


「じゃ、はいこれ。これも毎日朝晩2回やってね。」


そう言って手渡してきた魔道具だが、意外と重く、両手にずしっとくる。

それを片手で渡してくるあたり、やっぱり規格外だな。


「それじゃ、今日はこれで。ちゃんと休むんだよ。」


そう言ってアデラードさんは手をひらひらと振りながら帰っていった。


それを見送った後、俺は物は試しと手の中にある魔道具を使ってみる。

まずはここに両手を置く、と。

そうして浮かんできたのは3、2、9だ。

えと、3、2、1、今! …………あれ?

光らない。

そして魔力の強弱を表す色はすごく濃い赤だった。

やっぱりか。

やっぱり無駄に魔力を流してしまっていたよ。

まだまだ先は長そうだ。


その後、興味を惹かれたのかみんなもやってみたけどシアとルナがチラッと光らせる事はできたけど、流す時間の間ずっと光らせる事は誰にもできなかった。

ま、そう簡単にできたらだれも苦労しないよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る