第338話 オークなんて……的なお話

街からすぐのところは拓けており何もない。

魔物が潜んでそうな林やら森やらも当然のようにない。

そしてその街だが、強固な壁で囲われている。

理由は外敵から街を守ることと、魔物が溢れた時に閉じ込められるようにという地味に嫌な理由だ。

そんな壁に沿うように少し進んでから離れたところにある林の中に入っていく。

街道から入らない理由は特にない。


そうして進んでいくと早速ゴブさんのお出ましだ。

残念ながらこいつは依頼対象じゃない。

でも放置しても追ってきそうだし逃げるのも癪だからここで倒…………あ、リリンが倒した。

死体は消えない。

ダンジョンじゃないから当たり前なんだけど、少し前まで目一杯消える光景を見たから違和感があるな。


首と胴体を回収して更に進んでいく。

途中で出てくるゴブさん、コボルトさん(通常)、ラビットさん、アリさんなんかをリリンがサクサクっと倒していく。

少し遠い奴は蒼井が狙い撃ちだ。

その為俺達はすごく暇です。

あ、違った。

俺以外は暇です。

俺は回収に大忙しだ。


そう思っていたらセフィアとルリエが回収を手伝ってくれてる。

流石は嫁だ。

あ、シアとルナは周囲の警戒をしてくれてる。

2人もありがとう。


それからも近づく魔物をリリンと蒼井が屠り、それを俺とセフィア、ルリエが回収すること1時間。


「しっかし、魔物多くね? 1時間の間に十数回は襲われてるんだけど。」

「分かりきってたこと。」

「それはそうなんだけどね。でも、こんだけ多いと、流石にちょっとね。」

「確かに。」


一応、ボアの方は完了しており、コボルトナイトも後3体だ。

しかしリザードマンの方は全くといっていいほど遭遇していない。

納品数は10。

1時間以上経っているのに未だ0だ。

武器の損耗や俺達の疲労を考えると今日中に出来るかどうか……。

まあ、こんな事を今考えても意味はないな。

成るように成るさ。


そこから更にガサガサと探索すること30分。

リリンと蒼井の気配察知にたくさんの気配が密集しているのを察知した。

場所はここから5分ほど行ったところだそうだ。

俺の悪意感知には反応がないから魔物だな。


「どうする? 魔物の群れがいるが今日は慣らしだし報告だけでもいいと思うけど……ユキノはどうしたい?」

「私かっ!?」

「ユキノは療養明けだからな。相手が何かも分からないし無茶をしたくないというなら避けたほうがいいと思ってな。」

「ふむ………………殲滅しよう。」

「いいのか?」

「ああ。」

「分かった。みんな、そういうわけだから殲滅するぞ。けど、まずは偵察な。」


状況を確認しないのは馬鹿のすることです。

適当に突っ込んで囲まれるとか死亡コースだし、情報は大切だからな。

まあ、ウチはその点リリンと蒼井という気配察知持ちがいるから敵の配置が分かる。

そこにどんな魔物かという情報を足すことで戦い方を決める。

そして物音を立てないように気をつけつつこっそりと近づいてみれば………たむろっているのはなんとオークさんだった。

よし、殺そう…………じゃない。

ユキノは大丈夫なのか!?

シアとルナは軽くトラウマになっていた。

ユキノもそうなっていてもおかしくない。

そう思ってユキノの方を見るが、ケロッとしていた。

あれ? 大丈夫なのか?

気になったので小声で聞いてみる。


(大丈夫か?)

(何がだ?)

(いや、ダンジョンでオークの大群に襲われただろ。だから怖くなっていたりしないかと思って。)

(そういう事か。私は冒険者だからな。魔物の群れに襲われることなど覚悟している。それで恐るなどするはずがなかろう。)


多分シアとルナは今いたたまれなくなってると思う。

というか、意外と図太いな。


(いや、大丈夫ならいいんだ。)


ユキノは大丈夫そうなので一旦離れて少し話をする。


「リザードマンじゃなくてオークだったからな。魔法で殲滅しようと思う。……………肉片すら残さず。」

「肉片は流石にやり過ぎではないか? あいつらの皮は防具の材料になるし普通に倒せば良いではないか。」

「オークなんて滅びればいいんだ。」

「いや、そこまで言わなくても……アレクシアもエルナも何か言ってくれ。」

「オークは根絶やしにすべきよ。」

「……オーク嫌い。」

「……………2人まで……」


まあ、2人はあんな目にあったからな。

それに俺としても嫁達を狙う豚なんて抹殺対象以外の何者でもない。

というわけで魔法による殲滅が決定しました。


再び近づいて魔法をかましていく。

リリンとユキノの闇魔法の槍や杭がオークを串刺しにしていき、セフィアとシアの風魔法で斬り刻み、俺とルナの火魔法とアカネの火炎魔法で焼き消した。

ちなみにルリエとレイダさん、蒼井は周辺警戒をしている。

大きな音がしてるし魔法の溜めなんかで隙が出来るから念の為に控えててもらった。


そして魔法跡には穴だらけな上に焼け焦げた地面しかなく、死体も骨も残っていなかった。


「ふぅ。殺菌完了!」


「収入も得られないし、これで本当にいいのだろうか……」


ユキノがなんか言ってるが、オークなんて滅びればいいんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る